あるものを「なかったこと」に

 中国国家統計局は15日、若者(16~24歳)の失業率の発表を突如、取りやめ、大きな話題になりました。6月は21・3%と過去最悪の水準となっていたので、7月はさらに悪化したことが容易に想像されます。

 これに対して、中国のSNS上で「失業率を発表しない、ということは問題がなかったことになりますね」といった皮肉のコメントが投稿されたようです。あれっ?中国には言論の自由があったんですね。

 中国人、特に国家中枢を占める漢民族は、どうも都合の悪いことは、「なかったこと」にすることが得意のようです。これで思い出したのは、2011年7月に中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の列車衝突・脱線事故です。この事故で40人の死者が出たと言われていますが、当局は、問題の列車の事故調査をしないで、そのまま高架下の土中に埋めてしまったという国際社会が見ても唖然とすることが起きたことです。

 いまだに当局は、詳細な事故調査をしていない、ということは、事故は「なかったこと」にしてしまったようなものです。

Ginza

 まだあります。中国は、福島原発の処理水を海洋放出することに対して、強固な批判をし続けていますが、読売新聞によると、中国は、国内で運用する複数の原子力発電所が、福島の処理水の最大で約6・5倍の放射性物質トリチウムを放出しているというのです。

 これまた、読売新聞の報道がなければ、中国原発からの海洋放出は「なかったこと」になります。これまた漢民族の「お家芸」が発揮されたことになります。

 そこで、最近、私のブログのあるサイトに関して、色々と言い掛かりをつけてくる人がいたので、早速、この漢民族の手口を使うことにしました。

 関係者がいるので、詳細は茲では書けませんけど、要するに「なかったこと」にすることにしたのです。ややこしい人間とは関わらず、関知せず、関与しないことが常識人の基本です。なかったことにしても大勢に影響はないし、ネット上に載るべき重要なことでもありませんからね。削除は屈辱的でしたが、むしろ、余計なものがなくなってスッキリした気分ですよ。

大スターは代償が大き過ぎる=草刈正雄さんの父親捜し

 毎日、ブログを書き続けることは実に大変です。ので、もしかしたら、毎日、このブログを読み続けてくださる人の方がもっと大変なのではないかと拝察致します。感謝申し上げます。

 さて。14日にNHK総合で放送された「ファミリーヒストリー=俳優・草刈正雄(70)篇」を御覧になりましたか?実に壮絶な話で、涙なしでは見られませんでしたね。恐らく、再放送されることでしょうから、見逃した方は、検索してみてください。

 草刈さんは1952年生まれで、「朝鮮戦争で死んだ」「写真は全て焼き捨てた」と母親から聞かされていた米兵の実父が、実は生きていて、2013年に83歳で亡くなっていたという衝撃な事実が明かされます。草刈さんも全く初めて知る事実だったので、司会者から感想を聞かれても、「言葉が出ませんね…」と涙を流しておられました。

Ginza

 戦後6年間、敗戦国日本は米軍に占領され、米軍兵と日本人女性との間に生まれた「混血児」の多くが親たちに見捨てられた悲しい歴史がありました。そんな混血孤児たちを養護するための施設として、岩崎弥太郎の孫に当たる澤田美喜さんが創設した「エリザベス・サンダース・ホーム」は特に有名です。

 草刈さんの場合、米兵の父親ロバート・トーラーさんは、草刈さんが生まれる前に米国に帰国してしまい、その後、空軍の仕事で西ドイツに渡り、同国で知り合った女性と結婚します。一方の福岡県人の母親は、気丈な人だったため、小倉で仕事を掛け持ちして女手一つで子どもを育てようと決心しますが、時には生活が立ち行かなくなり、何度か心中しようとしたらしいのです。当時は、学校でも「合いの子」と差別されたらしく、草刈さんも戦争の犠牲者と言えなくありません。

 番組では、スタッフが苦労の末にやっとノースカロライナ州に住む草刈さんの伯母に当たるジャネットさん(97)を探し当てます。ジャネットさんは70年前に、草刈さんの母親から米国の自宅に手紙をもらった時は、弟であるロバート・トーラーさんは西独に行っておらず、自身も若くてお金がなく、親子の無事を祈るしかなかったといいます。その事実は誰にも話せず、70年間も自分の心の内に秘めていたといいます。

 結局、番組では草刈さんとジャネットさんは、米ノースカロライナ州の彼女の自宅で再会を果たし、めでたし、めでたしで終わります。だけんども、1日経って、冷静に振り返ってみれば、父親は、日本人女性が妊娠していることを知っていたのに見捨てて帰国し、その後も養育費すら払っていなかったわけですから、それらの事実を省略して随分、美談に仕立て上げられたもんだなあ、という感想に変わりました。

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 草刈さんは、その甘いマスクを生かして、モデルから俳優業にも進出して大スターになりましたが、芸能界で成功することは並大抵のことではありません。いわば、宝くじに当たるようなものなのです。私もかつて、芸能界を広く浅く取材したことがありますが、大スターに限って、その代償として、大借金を抱えるとか、家族に恵まれないとか、差別されて育ったといったような、本人が自覚しているにせよ、しないにせよ、大きな大きな「不幸」を抱えている人が多いという事実に気付かされたことがありました(非常にマイルドに書きました)。

 草刈さんも大スターながら、70年間も父親のことに関して、心の奥底でモヤモヤを抱えて生きてきたことを告白していました。その草刈さん、苦悩したのは父親のことだけでなく、2015年には長男が、23歳の若さで、渋谷区のマンションから転落死されていたことも、この記事を書くに当たって色々と調べていたら初めて知りました。

 やはり、大スターは代償が大き過ぎます。

 

明治維新~77年目の終戦から78年

 本日8月15日は、78回目の終戦記念日です。昭和20年8月15日は、明治維新から77年目のことでしたから、それを越えてしまったわけです。

 「降る雪や明治は遠くなりにけり」と中村草田男が詠んだのは昭和6年(1931年)でしたから、昭和20年(1945年)当時の人々から振り返っても、明治維新(1868年)は遥か昔に思えたことでしょう。(江戸時代生まれの日本人も健在だったことでしょうが)

 同じように令和の現代人が、昭和の敗戦時を振り返れば、同じように遥か遠い彼方の出来事だと思うのは当然です。戦後生まれは、既に、日本の人口の8割以上占めていますから、戦争体験者も減りましたし。

Ginza

 本日、日本武道館で開催された全国戦没者追悼式(台風7号の影響で、9府県の代表者が参加出来ず)では、天皇陛下から「さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。…ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。」とのお言葉がありました。

 その半面、岸田首相の式辞は、昨年とほとんど同じのコピペ原稿を感情も入れずに棒読みしていただけでしたから実に情けない。東京新聞の調べでは、660字の9割が「一言一句同じ」だったといいます。岸田さんにして1957年の戦後生まれですが、さらに自分より若いスピーチライターに丸投げして、戦禍の悲惨さの想像力の欠如がおぞましい。

 世界史上初めて、日本は原爆の被爆国であり、先の大戦では、民間人、軍人、軍属ら310万人という尊い生命が奪われました。戦争で最初の犠牲になるのは無辜の市民であることは、ロシアによるウクライナ侵攻でも見せつけられました(ブチャ虐殺の悲劇)。同時に日本はアジア諸国等に対する加害者でもありました。

 私も、二度と戦争を繰り返してはいけないという強い信念がありますが、今の「戦争を知らない」為政者たち、特に、自民、公明、日本維新の会の皆様は、一刻も早く平和憲法を改正して、軍備増強に躍起になっておられます。本人や家族は絶対に戦場に行かないと思っているからでしょう。

 また、戦前と全く同じように、強大な財閥、中でも、軍需産業企業がこれらの政党を後押ししているような言動が最近、見受けられます。

 先の大戦は、政界、財界、官界のエスタブリッシュメントが立案、計画、プロデュースして、新聞と臣民が追従、追認、挙句の果てには率先して遂行したものでした。

Ginza

  もし仮にまた戦争が起きるとしたら、全く同じ轍を踏むことでしょう。何を差し置いてでも情報戦から始まります。好戦的なメディアが周囲の危機感を煽り、SNSでは流言蜚語が飛び交い、逆に世論が政府を突き動かすことでしょう。「何で、早く始めないのか」と。

政府による思想統制を端緒に隣組も復活して、裏切り、寝返り、告げ口、陥れ、濡れ衣が横行することでしょう。日本人は集団ヒステリーを起こす傾向が強いので、非国民をあぶり出し、不逞外国人を排斥し、膺懲(ようちょう)といって、集団暴行をすることでしょう。

 嗚呼、こんな悪夢が正夢にならないことを祈るばかりです。が、やはり、教育が重要です。戦争の悲惨さは何世代にも渡って伝えていかなければなりません。だからこそ、こうして終戦記念日があり、全国戦没者追悼式が挙行されるわけですから。

健康のために出来ること=物理の学び直し

 別に(沢尻エリカさん風に)、皆様とお約束したわけではありませんけど、今、物理学の勉強をし直しています。

 ここ数年、人間関係で色々とありまして、すっかりミザントロープになってしまいました。人間どもの歴史も哲学も宗教も物語もうんざりです。勉強とは言っても、写真のニュートン別冊「学びなおし中学・高校物理」を読んでいる程度ですが、気分はすっかり中学生です。自分が多感だったあの中学生時代も思い出します。あの頃は大人と子どもの中間時代で、どっちつかずという精神的にも肉体的にも不安定を抱えていました。社会に対する不信感だらけで、大人顔負けのニヒリズムに陥っていました。中学生時代に戻りたい気持ちは毛頭ありませんが、戻れたとしても、もっと理科系の勉強をしておけばよかったと思っております。

 その思いが強いのでこうして物理を勉強し直しているのです。自分は何のためにこの世に生まれて来たのか?他人が歌ったり踊ったり演技したりしているのを見るためにこの世に生まれてきたわけではないし、他人の「妄想」に付き合うために生まれて来たわけでもありません。それに、他人の動画を見て時間を浪費するために生まれて来たわけでもありません。そんなこと言うなんて、我ながら随分ひねくれてますけど、結局、誰も自分の身代わりになってはくれません。自分自身で答えを見つけて納得した人生を送るしかありません。

 物理を勉強し直そうと思ったのは、これまで思想形態の変更ーもっと易しく言えば、自分自身の考え方のクセを変えてみようと思ったからでした。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻は、プーチンが自らをピョートル大帝に見立てて、大国ロシアの復活を試みたとか、米国を中心にした西側NATO諸国との覇権争いだの、文科系思考で何とでも言えますが、自然科学的思考を導入すると違った側面が見えてきます。黒海沿岸の肥沃地帯(ウクライナ)を巡るホモ・サピエンスの浸食とか、物理学の運動の第3のの法則「作用・反作用の法則」とニュートンの万有引力の法則で説明できるとか…。勿論、プーチン大統領の蛮行は万有引力の法則の定数には当て嵌められないことでしょうが、プーチンも人間なら自然界の生物の一員ですから、何らかの自然界の法則に左右されていることは間違いないはずです。

 それに、長引くウクライナ戦争を見ていると、「作用・反作用の法則」が働いていることは間違いないですね(実際、ロシアとウクライナの戦力が同等ではないので、この法則は科学的に証明できませんが)。ロシアがイラン製(と思われる)のドローンを使えば、ウクライナもドイツ製の戦車や米国製のクラスター弾を使用していると言われていますから、歴史学者が否定しようが、もう第3次世界大戦が進行中と言えるのではないでしょうか。

 ところで、この「学びなおし中学・高校物理」を読んでいると、懐かしい微分積分が出てきます。私自身、受験生時代に苦しめられたものですが、受験が終われば、全く使うことがなかったので、すっかり忘れてしまいました。ダーウィンに言わせれば「用不用説」なのでしょうか。

 社会に出ても微分積分は使うことなく、全く役に立ちませんでしたが、果たして学んで損したのでしょうか? いや、私はそう思いませんね。難問が解けない苦しみは夢にまで出てきますが、解けた時の快感は今でも思い出してアドレナリンが出るくらいですからね(笑)。

 つまらない人間関係に拘っているのなら、微分積分の問題を解いている方が健康に良いのかもしれません。

ありがたや、神様、仏様、百均様

heaven

 友人の河本敏昭君(仮名)は、若い頃はかなりの亭主関白でしたが、子どもが独立し、夫婦二人だけになり、定年退職を機にその立場がすっかり逆転してしまいました。男は働かなくなれば洋ナシ、いや、用無しです。

 定年退職の翌日に令夫人から最初に言われたことは、「何をしてもいいから、昼間は週に最低3日は家にいないで」という三下り半でした。「他にもありますが、今日のところはそれぐらいにします」と言って、ピシャリとドアを閉めて自分の部屋に閉じこもりました。

 結婚して30余年。長年の令夫人の不満が爆発したのでした。

 河本君としては、若い頃はあんな穏やかだった女性がこれほど変わるとは思いも寄りませんでした。勿論、彼には身に覚えがある言動がありました。女性に手を掛けるようなことは勿論しませんでしたが、かなり命令口調で乱暴な口を効いていたことは確かです。仕事が忙しく、家事も子育てもほとんど任せっぱなしでした。でも、稼ぎがなくなると、過去の因果が弱みとなり、今ではすっかり逆転して、今度は、彼の方が罵詈雑言の機関銃で撃ちまくられる番になりました。

 先日、彼が洗い物をしている際、ついうっかりして高価なガラスのコップを割ってしまった時は散々でした。わざとやったわけではないので、黙っていると、ボケ、カス、タコ、ナス…の連射撃です。

 「ああた、これ幾らすると思ってるの!?」に始まり、「全く、反省してないわね。謝りもしない。だから、いつまでも懲りないのよ」「そう言えば、ああた、20年前もコップ割ったわね。あれ、バカラだったのよお!」…と出るわ、出るわ、すっかり忘れていた昔のことを蒸し返してきます。

 女性の記憶力には舌を巻きます。

 河本君の出身地である山陽地方だけの言い伝えだと思いますが、結婚式の際に女性は「角隠し」をしますが、その角とは7本あるそうです。昔は、5人、10人の子どもを産むのが当たり前で、7人ぐらい子どもを産めば、角が全部取れるという伝説です。あくまでも伝説ですから、現代のようなダイヴァーシティとジェンダーフリーの時代では、こんなことを書くと大炎上することは間違いありません。が、そういう伝説があったことは歴史的事実です。

 河本君は今日も猛暑の中、「週3日」の掟を守って、図書館通いが続いています。彼はパチンコも競馬も競輪もしませんから、他に行く所がありません。せいぜい、時間潰しに山手線を3周するぐらいです。

 そうそう、彼は、割ったガラスのコップの埋め合わせを百均屋さんに行って買って来たそうです。税込みで110円。前の高価なコップと大して遜色ありません。勿論、彼は幾らで購入したのかは令夫人には黙っていました。

 奥さんも「あら、いいじゃないの。いいコップね」と褒めるので、なかなか本当のことを言い出せなくなったそうです。河本君は「前のコップ幾らだったの?」と恐る恐る聞くと、令夫人は「4500円よ」と答えたので、「ああ、同じぐらいの値段だったよ」と言うしかなかったのです。

 河本君からメール添付でコップの写真を送ってもらいましたが、確かに100円には見えないコップでした。鑑定団を騙せるほどの出来に見えました。河本君にとっては、「神様、仏様、百均様」といったところでしょうか。

 はい、ところで、私はあくまでも中立の立場ですから、人間の一生って、プラスマイナスゼロだなあ、と思いましたよ。今の現状は、河本君の自業自得、因果応報、自己責任なのでしょう。それでも、同性として、友人として、河本君には同情してしまいました。はい、それだけです。これ以上のコメントは差し控えさせて頂きます。

日本人のルートにまで迫る=更科功監修「人類史の『謎』を読み解く」

 もし、貴方がこの渓流斎ブログの長年の愛読者様でいらしたら、ここ数日、何で、違う話題なのに、急にネアンデルタール人やホモ・サピエンスが出てくるのか不可思議にお感じなったのではないでしょうか?

 はい、更科功監修「人類史の『謎』を読み解く」(宝島社、2023年8月5日初版)を併行して読んでいたからです(笑)。この本は、人類学の最新の学説を表や写真やイラストを取り入れて分かりやすく解説した好著です。高校か大学の副読本にしてもおかしくありません。こんな情報が1320円で手に入るなんて安いもんですよ。

 私が急激に人類史にのめり込んだのは、昨年10月に読んだジェレミー・デシルヴァ著、赤根洋子訳「直立二足歩行の人類史」(文藝春秋)がきっかけでした。えっ?こんな話聞いたことない。アウステラロピテクスは知っていても、サヘラントロプス・チャデンシスって何だ!…てな具合でした。それからは人類学、進化論、宇宙論にまではまってしまったことは、このブログの読者ならご案内の通りです。この本を監修している分子古生物学者・更科功氏の著書「禁断の進化史」(NHK出版新書)についても、このブログで取り上げました。

 人類の進化史研究が飛躍的に進歩したのは、技術的に核ゲノムの解析まで可能になったからです。それが西暦2000年のことだといいますから、これまでの古い学説が次々と書き換えられるようになったのはつい最近のことだったのです。古生人類の化石の新発見に次ぐ新発見は、1970年代で学業を終えた旧世代の学徒は全く知らなかったのは当たり前の話だったのです! 20世紀後半までは、母親から子に遺伝するミトコンドリアのDNAの解析まで辛うじて解析できたのですが、それが限界でした。核ゲノム(DNAの中の遺伝情報の全て)の解析で両親から子へ遺伝子まで分かり、それが進化史研究の飛躍的発展につながったわけです。

 例えば、現生人類であるホモ・サピエンスは30万年前にアフリカで出現しましたが、その前の43万年前にホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)が誕生していました。ネアンデルタール人は4万年前に絶滅しましたが、それまで同時代人として地球上で生きていて、何とホモ・サピエンスとも交雑していたというのです(最新の学説ではデニソワ人との3者が共存した時代があり、お互いに交雑したともいわれます)。核ゲノムの解析で、現生人類の中にネアンデルタール人の遺伝子が約70%残っていることが分かったといいます(ただし、一人ひとりの個人では約2%)。ネアンデルタール人とホモ・サピエンスとの交雑が分かったのは2010年頃といいますから、これまた、本当につい最近のことですね。

 ついでながら、この本の監修者である更科氏は、ホモ・サピエンスの脳の容量は約1350ccに対して、ネアンデルタール人は1600ccだったことなどから、ネアンデルタール人がホモ・サピエンスよりも知能的にも体力的にも劣っていたというこれまでの学説に疑問を投げかけ、絶滅するのが、ネアンデルタール人ではなく、ホモ・サピエンスの方だったとしても「何の不思議もない」とまで発言しています。(更科氏は、ホモ・サピエンスが絶滅しなかったのは子沢山だったためで、ネアンデルタール人が絶滅したのは少子だったからではないかと推測しています)

 この本に書かれている「新説」は、私自身、これまで人類史関連の本を結構読んできたので、生意気ながらあまり驚くことはありませんでしたが、図解入りで整理して解説してくれるので、頭に入りやすい。多くの人にお勧めしたいぐらいです。それに、「学説」は色々ありますから、何を信じたら良いのか分からなくなることがありますが、この本は、「これが最新学説だ」ということで提示してくれます。

 例えば、同じ霊長類の生物の中で、現生人類に繋がるヒトとチンパンジーが分岐して進化したのは、この本は約700万年前であることを提起してくれます。この700万年前説を否定する学者もいますが、それだけなくても、人間が猿から進化したことを真っ向から否定するキリスト教聖書原理主義者も現代にはいるわけです。だから、原理主義者さんから見れば、この本や進化論は発禁本ということになると思われます。

 もう一つ、この本が読み易いのは、進化の過程を「初期猿人」「猿人」「原人」「旧人」「新人」に区分けして解説してくれることです。国際学会では、もうこんな区分けはしないそうですね。でも、我々のような旧世代にとっては大変馴染み深い区分なので理解が増すことが出来ました。(700万年前の初期猿人のサヘラントロプス・チャデンシスの復元写真が掲載されていますが、これは猿そのものですね)

◇日本人のルーツとは?

 本書の終わりの方では、日本人のルーツにまで迫っています。ホモ・サピエンスが日本列島に到達したのは4万年前としています。つまり、地球46億年の歴史で、わずか4万年前まで日本列島には一人も現生人類はいなかったのです!主にサハリン経由で北海道へ、そして、台湾、沖縄経て九州へと2ルートあったといいます。彼らが1万5000年間続いた縄文人となったのでしょう。だから、縄文人の遺伝子がアイヌと琉球人に色濃く残っています。その後も、大陸から朝鮮半島を通しても渡って来たりしますが、それが稲作などを伝えた弥生人です。弥生時代は紀元前300年頃からとなっていますが、渡来人はその前からかなり多くやって来たようです。この本の最新学説では、現代日本人は、弥生人が縄文人を征服したわけではなく、混血によって同化し、その後、古墳時代になって、中国の内乱(4〜5世紀の五胡十国時代)を避けて日本列島に渡ってくる人(政治亡命者?)がかなり多かったことから、この古墳人とも混血していったといいます。

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 興味深かったことは、日本人に多いミトコンドリアDNAの分布を解析すると、中国東北部と朝鮮半島と東南アジアに多く見られたと言います。

 吃驚です。

 恐らく「大炎上」するかもしれませんが、中国東北部とは旧満洲のことです。先の世界大戦で、日本人が朝鮮と満洲と東南アジアに進出(というより侵攻)したのは、ホモ・サピエンスとして、故地を目指した(奪回?)のではないかと錯覚してしまいました。

 いえいえ、政治的意味はありません。単に自然科学の人類学からの推測です。

国立科学博物館に寄付しました

 東京・上野の国立科学博物館(科博)が、保管標本や資料の維持費等がひっ迫したということで、寄付を募るクラウドファンディングを始めました。小生も遅ればせながら、参加しました。(システム利用料として寄付金以外に220円掛かります)

 目標金額は1億円としていましたが、寄付を呼び掛けたその日の午後5時過ぎに1億円を突破したというので、よかったでした。私は昨日の8日に寄付したところ、支援者としては2万765人目で、支援総額が3億4200万2500円になった、と即、回答がありました。そして、本日はもう5億円近くになっていました。募集は11月5日まで続けるそうです。

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 それにしても、こんな事態になったのは、「国立」とは名ばかりの、博物館の「独立行政法人」化です。維持費が足りないのは「自己責任」と言わんばかり、政府自民公明政権は手を差し伸べることさえしません。クラウドファンディングは科博の苦肉の策だったのでしょう。500万点以上の標本等を保管するためには絶えず一定の温度を保たなければならず、電気代もばかになりません。今年度の光熱費は2021年度の約2倍になる見込みだということで、科博は「このままじゃやっていけない」と危機感を募らせたことでしょう。標本等は、年間数万点増えると言われています。科博のホームページにある通り、これら全て「地球の宝」です。

 でも、こんな学問・芸術・科学分野の保護の維持として、民間の寄付で賄うのは如何なものか、です。政府自公政権は、やたらと周囲の危機感を煽り立てて、防衛費の倍増に躍起になっておりますが、アカデミーに対しては随分冷たいじゃありませんか。

 そう言えば、菅義偉首相(当時)が任命拒否した日本学術会議の人事問題もいまだ宙に浮いていると言いますか、解決しておりません。というか、政権に異議申し立てをする学者は、現政権が続く限り、任命は絶望的でしょう。

東銀座

 貴重な標本や遺跡品は、一度失ったら二度と復元できず、お終いです。戦争が起きる度にそれは繰り返されてきました。2001年、タリバンによるアフガニスタンのバーミヤン大仏の破壊は、個人的に、心がよじれるほど痛恨の極みでしたが、今でも、ロシアによるウクライナ侵攻で、ウクライナ博物館が所蔵する貴重なスキタイ文化の遺跡物の損壊が危ぶまれています。

 いつまでたっても、ホモ・サピエンスは愚かだとしか言いようがありません。

英国人とは何者なのか?

 昨日は、清水健二著「英語は『語源×世界史』を知ると面白い」(青春出版社)を取り上げ、内容については、「かなり知っているつもりだった」と放言してしまいました。

 これからは、正直に、この本に書かれていた語源で、知らなかったことを告白していきます。(順不同)

 ◇ lady (女性、貴婦人)は「パン生地をこねる人」だったとは!

 「領主」や「地主」「管理者」などを意味するlord は、「パンを管理する者」が語源で、ここからloaf (パン一斤)が派生し、「パン生地をこねる人」のlady も派生した。ちなみに、女性の地主は、landlady 。

東銀座

 ◇フランス人はフランク人か

  481年、ライン川東岸にいたゲルマン系のフランク人が北ガリア(北仏)に侵入してフランク王国を建国します(第一次ゲルマン人の大移動)。フランク Franks は、彼らが好んで使用していた武器「投げ槍」に由来します。フランク人は自由民であったことから、frank は「率直な」という意味になり、これから、「自由に販売・営業する権利」などを意味するfranchise (フランチャイズ)に派生します。名前のFrancis は「自由で高貴な」、Franklinは「槍を持つ人」「自由民」を意味します。ドイツの都市フランクフルトFrankfurt は「フランク人が渡る浅瀬furt 」だったとは知りませんでしたね。

 フランク人に征服される前のフランスは、ケルト系のガリア人が住んでいました。古代ローマ帝国のカエサルが遠征した「ガリア戦記」で有名です。フランス人は、自分たちのことをゴウロワ(ガリア)と自称していますから、大まかに言えば、ケルト人とゲルマン人の混血が今のフランス人になったということになるでしょう。

 ◇英国人はノルマン人なのか

 5世紀中頃、アングロ・サクソン人がブリテン島に侵入して、先住民のケルト系ブリトン人を征服します。(ブリトン人は、4~6世紀にフランスのブルターニュ地方に移住し、ブルトン人と呼ばれます。)アングロ・サクソン人とは、ユトランド半島とドイツ北岸のエルベ川流域に居住していたゲルマン系のアングル人とサクソン人とジュート人の3部族の総称のことです(第一次ゲルマン人の大移動)。

 アングル人は、ユトランド半島の海岸線の地形が釣り針(古英語でangel)に似ていたことからそう呼ばれたといいますが、このアングル人が住む土地からイングランドEngland 、アングル人が話す言葉からイングリッシュEnglish が生まれました。また、アングル angle は「角」とか「角度」を意味したことから、triangle(三つの角⇒三角形) quadrangle(四つの角⇒四角形、) rectangle( rect真っ直ぐな角⇒長方形)が派生しました。さらに、ankle 「曲がったもの」から「足首」、anchor「曲がったもの」から「錨」が生まれました。

 サクソン人the Saxonは「ナイフを持った兵士」、ジュート人 the Jutes は「ユトランド Jutlandの住人」に由来します。

 そっかあ、英国人とはゲルマン系のアングル人の子孫かあ、と思ったら、9世紀頃からノルマン人(スカンジナビア半島やユトランド半島など北欧に留まっていたゲルマン人。いわゆるヴァイキング)の一派であるデーン人(デンマーク人)がブリテン島を征服します。デーン人は11世紀にも再び、侵攻して、クヌート1世は、デンマークとノルウェーだけでなく、イングランド王まで兼ねます(第二次ゲルマン人の大移動)。

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 そっかあ、英国人はデンマーク人なのか、と思ったら、1066年、ノルマンディー公ギョーム2世が王位継承を主張してイングランド王国を征服して、ウイリアム1世として即位します。世に言う「ノルマン・コンクエスト Norman Conquest」です。(ノルマンディーは、西フランク王のシャルル3世が、ヴァイキングの侵入を防ぐためにノルマン人にフランス北西部の土地を与えて公爵に任命したもの)このノルマン王朝が現在の英国王室に繋がっています。先に亡くなったエリザベス女王も生前、「あれ(ノルマン・コンクエスト)は私どもがやったことです」とインタビューに平然と答えたといいます。

 となると、英国人はノルマン人(ヴァイキング)ということになりますね。しかし、先住民が絶滅したわけではないので、英国人とは、ケルト人(アイルランド)とゲルマン系のアングロ・サクソン人とデーン人の末裔でもあるわけです。ブリテンに王朝を建てたノルマンディー公ギョーム2世はフランス育ちなので、英語が出来ず、ノルマン・コンクエストからその後300年間も英国の公用語はフランス語で、公文書はラテン語を使っていたといいます。えっ?英語はどうしちゃったの? 辛うじて庶民が使っていたようです。

 道理で、日本人は、英国人とフランス人とドイツ人とデンマーク人とノルウェー人との区別がつかないのかよく分かりましたよ。

 でも、英国人だの、フランス人だのと言っていては、ちいせえ、ちいせえ。元々、欧州にはネアンデルタール人(43万~4万年前)が住んでいたのですから。ネアンデルタール人は4万年前に絶滅しましたが、はっきりした原因は分かっていません。現生人類ホモ・サピエンスよりも、脳の容積量が多く、腕力も強かったのに、です。はっきりしているのは、少子化による子孫絶滅ということですから、ホモ・サピエンスも少子高齢化社会ですから、ネアンデルタール人と同じ運命を辿るかもしれません。

ミトラ神を巡る攻防=弥勒菩薩が貶められあんまりだあ

 清水健二著「英語は『語源×世界史』を知ると面白い」(青春出版社)を相変わらず読んでいます。

 前回(7月31日)、この本を渓流斎ブログで取り上げた際、ちょっとケチを付けてしまいましたが、訂正します。なかなかよく出来たためになる本です。英語の語源と世界史を同時に学ぶことが出来るので、一石二鳥、一石三鳥です。

 「言葉は世につれ、世は言葉につれ」なんて私しか言ってませんけど、言葉は歴史的出来事の影響に事欠きません。この本を読むと、英語が特に影響を受けたものは、順不同で挙げてみますと、古代ギリシャ神話、ローマ神話、古典哲学、医学、天文学、キリスト教、イスラム教、人種と民族、十字軍、ルネサンス辺りで、この本でも章に分けて解説しております。

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 私自身、かなり知っているつもりでしたが、この本で初めて知ることも多く、勉強になります。その中の一つが「ミトラ教」です。キリスト教が入る前の古代ローマは多神教で、ミトラ教もその一つでした。これは、古代インドや古代イランの太陽神ミスラ信仰やアケメネス朝ペルシャのゾロアスター教の流れを汲む密教宗教がローマの神々と融合されたもので、歴代ローマ皇帝も信奉者だったといいます。自らを太陽神ミトラになぞらえて皇帝崇拝の思想を強める狙いがあったといいます。

 このミトラmitra は、サンスクリット語で「軽量者」の意味で、歳月を測ることから「太陽神」となります。また、人間関係を量ることから「友情の神」「契約の神」などとされるといいます。このミトラの語源から阿弥陀(アミターバ amitabha とアミターユス amitayus)が出来て、阿弥陀仏とは、「測り知れない命や光の仏陀=覚りを開いた人=」を意味することになります。

 ミトラ mitra は、インド・ヨーロッパ語に入ると「量る、測る」という意味のme となり、この派生語から、metronome(メトロノーム)、 diameter(直径)、 thermometer(温度計)、 symmetry(左右対称)、 asymmetry(左右非対称)、 pedometer(歩数計)などが生まれました。

銀座

 ここまでがこの本に書かれていることですが、ミトラと言えば、以前読んだ植木雅俊氏がサンスクリット語から現代語に翻訳した「法華経」(角川文庫)を思い出します。ミトラ神は仏教にも取り入れられ、マイトレーヤ菩薩になったというのです。マイトレーヤ菩薩とは、釈迦入滅後、56億7000万年後に仏陀として現れる弥勒菩薩のことです。でも、「法華経」では、文殊菩薩が語るところによれば、この弥勒菩薩は名声ばかり追い求める怠け者だったとしているのです。何ともまあ手厳しい。弥勒菩薩は京都・太秦の広隆寺の半跏思惟像が大変有名で、あの有難い弥勒菩薩が、そこまで貶められてしまうとは! この部分について、翻訳者の植木氏は「イランのミトラ神を仏教に取り入れて考え出されたマイトラーヤ菩薩を待望する当時の風潮に対する皮肉と言えよう」と解説しています。

 こうして見ていくと、インド・ヨーロッパ語族というくらいですから、古代の世界は現代人が想像する以上に、欧州とペルシャとインドとの交流が盛んだったということが分かります。ただし、宗教に関しては、お互いにかなり影響を受けながらも、欧州人とイラン人とインド人とで反目し合っていたということなのでしょう。

(つづく)

事件記者はつらいよ=ビッグモーターを探して三千里

 今や話題沸騰、世間騒然ー。今の日本人なら誰も知らない人はいないと言われるあのビッグモーターが拙宅の近くにもあるということを知り、猛暑の中を探索に行って参りました。

 日中の気温は38度。事件記者はつらいよです。

 拙宅から近いとはいっても、私は2015年に大病を患って自家用車は売り払ってしまい、今は車はありません。猛暑の中、自転車と三輪車と乳母車まで乗り継ぎ、あとは御徒で約40分かけて、やっと探し当てました。

 そしたら、びっくり仰天です。

 昔は「車を売るならビッグモーター」と派手に宣伝しておりましたが、今では、子どもたちまでもが「伐採するならビッグモーター」と歌いながら通学している時代です。それなのに、何と、拙宅から一番近いと思われる店舗の前の街路樹は伐採されていないのです。

 一体、どういうことなんでしょうか?

 私は、無惨な伐採現場を確かめたいがために、わざわざ汗みどろになって店舗を探したのに拍子抜けしました。

 考えられることはー

①店長さんが、自身の降格を恐れず、副社長率いる本部の命令を無視した。

②街路樹があまりにも立派な樹木なので、ちょっとやそっとの除草剤ではとても枯れないので諦めた。

 このどちらかではないかと睨みました。

 私は牧野富太郎ではないので、この街路樹が何という木なのか名前を知りませんが、確かに立派な樹木です。ちょっとやそっとの除草剤では枯れない体力を持っているように見受けられます。

 事件記者は足で稼ぐといいますから、こうして実際に現場に行って確かめてみて良かったと思いました。つまり、ビッグモーターの全国の店舗の全てが樹木を伐採していたわけではなかったという事実です。

 でも、この事件の核心は伐採ではなく、損保会社と結託した疑惑がある「保険金詐欺」です。既に、国土交通省、金融庁、それに都道府県庁など複数の所管官庁が動いているようですが、早く全容が解明してほしいものです。