多摩美術大学教授で洋画家でもあるT氏が、美術評論家のN氏を前にして、こう言いました。
普段は無口のT氏ですが、酒席で酔いが回ったのか、つい、本音が出てしまいました。
「現代アートとか、現代美術とか、名前を付けるのはあなたたちの仕事かもしれないが、我々は自分に正直であればそれでいいんです。何かを表現したくて、それが作品になるわけで、その評価まで気にしていては何もできません。あるがままの自分に正直になるしかないのです。だから、結果はどうでもいいのです。自分自身は、芸術家だろうが、美術家だろうが、画家だろうが、アーティストだろうが、自分で名乗りたい名前を名乗ればそれでいいのです。他人から名前を付けてもらうことはないのです。どうせ、評論家は責任を取らないでしょう?そう、評論家は責任を取らないのです」
いつも威張っているN氏は、この時ばかりは、ぐうの音も出ませんでした。