文明の行方

 

「世界」4月号と5月号に連載されていた松井孝典東大大学院教授と松本健一麗澤大教授による対談「維新か、革命か」は非常に刺激的で深く考えさせられる内容でした。ある意味で、昨日書いた靖国問題にも通底するような論考でした。このお二人は、現代日本を代表する科学者と思想家だと私は思っています。

 

ちょっと、自分のメモのためにまとめてみたいと思います。二人の意見は必ずしも全て一致していたわけではありませんが、一々区別することなく、あくまでも自分の備忘録として書くだけです。ですから、皆さんは直接、文献に当たられるのがいいと思います。

人間圏の文明は、大きく3つ分けられる。

1、西洋近代文明

・外に進出する駆動力を持ったストック依存型⇒蒸気船、大砲、電信機、国際法を持つ

・「石の文明」、牧畜⇒移動し、外に拡大してテリトリーを広げないと生きていけない

・近代科学が発達

・リベラルな民主主義、植民地・帝国主義

…環境問題で、やがて破綻

2、アジア文明

・内部に駆動力を持たないフロー依存型⇒貯蓄率が高い

・「泥の文明」(土壌の生産性が高い)、農耕⇒農地相続は長男だけなので、それ以外の子供は教育によって自立させるために教育水準が非常に高い

・本草学(何が毒で何が食用か区別する)が発達

・「なぜ人間は存在するのか」を問うインド哲学

・アジア文明が西洋近代文明に遅れていたわけではない。紙も火薬も活版印刷も中国で発明

3、イスラム文明

・外に進出せず、内に蓄積しないネットワーク型

・「砂の文明」、遊牧、交易

・天文学、数学が発達

【現状】

・竹中平蔵が、日本的会社資本主義を壊して、株主だけのための短期的利益をあげるアメリカ型株主資本主義を導入。

・規制緩和や法人税減税など、儲けられる人間がより儲けていくという新自由主義、市場原理主義を導入

⇒郵便局がなくなり、農村の小規模経営の小農は崩壊。混沌と無秩序

・コーヒー豆は、南米産でもアフリカ産でも、「ヤコブ」と「ネイキ」という2つの会社に支配され、価格も決定されている。

・コメの消費量は、日本は1960年代から40年で半分。韓国は70年代から30年で3分の1に減少し、農業が危機的状況に。

【今後】

・人間圏のユニットは国家(共同幻想で、擬制とはいえ、国土・国民・国家主権という要素を持ち、人々の帰属性をはっきりさせ、大きな求心力を持つ)だが、インターネットが発達したおかげで、個人をユニットとしたシステムが発達するようになる⇒国家主義の崩壊?

・自然と人間が共生するアジアの哲学や宗教で、右肩上がりではない循環系の文明を再構築できるのではないか?