「太田耐造文書研究のご案内」

先月7月18日に加藤哲郎一橋大学名誉教授から、「太田耐造文書研究のご案内」なる長いメールを頂きました。

「日本社会主義・共産主義運動、労働運動・国家主義運動、日中戦争・朝鮮・満州国支配、新聞言論出版・思想統制・メディア史、対ソ対中諜報、ゾルゲ事件等に関心のある友人の皆さんへ」ということで、現代史に興味がある人に一斉にメールを発信されたようでした。

内容は、昨年2月から国立国会図書館憲政資料室で公開されている「太田耐造関係文書」研究のススメでした。「若い研究者の皆さんに、ぜひ拡散して下さい」ということでしたので、非力ながら、加藤先生を応援したい一心でこの《渓流斎日乗》にも掲載することに致しました。

太田耐造(おおた・たいぞう、1903~56年)という人は私自身は不勉強で名前も知らなかったのですが、司法省刑事局第六課長等を歴任するなど主に検事畑で活躍された人でした。戦後は公職追放され、52歳で亡くなっております。「文書」は、神兵隊事件やゾルゲ事件に関わる訊問調書など彼が業務上で取得した資料が多くを占めているようです。現代史の資料として極めて価値が高いと言えます。国立国会図書館のホームページには以下の通り公開されております。

https://rnavi.ndl.go.jp/kensei/entry/ootataizou.php

加藤先生によると、太田耐造は、敗戦時大審院検事、司法官僚の「思想検事」の代表格で、「太田文書」は全1104点、書架にして4.5メートル分の膨大な原資料があるといいます。問題別に整理され、1927-46年占領開始期分まで、時系列で入っており、目録は、以下のリンクをクリックすれば、自由に簡単にダウンロードできます。

https://rnavi.ndl.go.jp/kensei/tmp/index_ootataizou.pdf

また、加藤先生によると、司法省「思想検事」としての太田耐造の資料収集は多岐にわたり、社会主義・共産主義・労働運動、右翼国家主義運動取締、朝鮮・中国・満州抵抗運動、メディア史、新聞出版言論統制検閲資料、世論等各種調査資料、治安法制検討資料、「日本法」構想、治安維持法・予防拘禁・国防保安法立法資料、対ソ対中諜報など、日本現代史の膨大な基本資料・公文書・部内資料・草稿類が、手書き・謄写版刷りなど、現物で入っているとのことです。

加藤先生は「これらの資料は、ゾルゲ事件研究にとどまらない膨大な現代史資料ですから、本格的研究は、若い研究者にも、広く活用さるべきです。添付の目録ファイルもデジタルですから、世界中にどんどん拡散し、学術的に検証されていくべきと考えます。よろしく、ご活用ください」と呼び掛けております。

加藤先生は、私も何度もお世話になったことがありますが、私心のない方で、御自分で世界各国で苦労して収集した資料でも惜しみなく後進に与えてくださる方です。

もし、ご興味のある方は、研究されてみては如何でしょうか。加藤先生のホームページは以下の通りです。

加藤哲郎のネチズン・カレッジ