トルコリラ暴落とジニ係数=馬鹿臭い日常より

銀座ソニープラザ公園

8月11日(土)の一般紙朝刊でやっと「トルコリラ急落 高まる金融不安」なる記事が出始めました。

実は私自身も昨日初めて聞いた話で、ある「国際金融アナリスト」が私の耳元で「ボクシジケン」と囁くので、何のことか分からず「えっ?何のこと?」と聞き返すと「そんなことも知らないのか!」と呆れたような表情で彼は立ち去るので、早速調べてみたわけです。

どうやら、2016年夏のクーデター未遂事件で、米国人のブランソン牧師が約2年間収監された後、今は自宅軟禁状態で、彼の釈放を求める米国とトルコとの間で関係が急速に悪化し、それがトルコ経済への警戒感につながり、リラ安に拍車がかかっているようです。

10日は、一時、1ドル=6リラ台と過去最安値の水準で、年初と比べると約40%も大幅に下落しました。

これに加えて10日、トランプ米大統領は、トルコからの輸入関税として、鉄鋼50%、アルミニウム20%と従来の2倍にも引き上げるんですからね。まさに貿易戦争そのものです。トルコに融資しているイタリアとスペインの銀行に飛び火するのではないかという投資家の観測で、金融不安が国際的に広がっているというわけです。日本も10日の日経平均が300円31銭も下落しましたからね。

このブログの読者の皆さんは富裕層が多いので、心配ですね。

そこで、一時的に《渓流斎日乗》から《場郭斎日乗》と趣向を変えてみました(笑)。《場郭斎日乗》とは「馬鹿臭い日常」という意味です(爆笑)。さて、いつまで続くのやら…。

東銀座・ねのひ揚げ定食800円(うまいめんこい村通信)

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ということで、最近は、学生時代は敬遠していた社会科学、特に経済学なるものを自ら進んで勉強しています。最近の経済は、前述のトルコリラ・ボクシジケンのように、日進月歩で展開があまりにも早く、書物になった段階で古色蒼然となってしまうので、「参考書」は専ら新聞です。切り抜いて、重要事項にラインマーカーを引いてスクラップするという、いかにもアナログ的手法です。

敬愛する投資ファンドマネジャーらは「やはり世界経済の動向を把握するにはウォール・ストリート・ジャーナルしかない。日本の新聞は読むに値しないよ」と馬鹿にしておられてましたが、私自身は、先日も書きましたが、今は読売新聞経済面が一番分かりやすくて丁度良いのです。

最近は、日本経済新聞が連載していた名物コラムの「経済教室 70周年」がためになりました。経済というのは、一応と言えば失礼かもしれませんが、一応学問ですから、「考え方」であり、哲学のような「思想」でもあります。経済予想は、天気予報のように当たらないことがありますが、私のように学生時代から経済学を敬遠してきた者にとっては、「へー、こんな考え方があったのか」という新鮮な驚きがあります。

ここで取り上げたいのは、吉川洋・立正大学教授が同紙8月8日付で「不平等・格差是正が大前提」「所得再配分での補完必須」のタイトルで書かれた「ジニ係数」についてです。

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ジニ係数とは、所得の平等度を表す指標で、最も不平等な社会は「1」、逆に完全平等の社会は「0」となります。

戦前の日本は、今と比べ物にならないくらい大変な格差社会だったと言われます。特に昭和初期の金融恐慌を経て、東北では娘を売りに出さなければならないほど貧困に追い詰められながら、財閥や華族階級は優雅な生活を送っていました。これらの矛盾が青年将校らによる「5・15事件」や「2・26事件」などの遠因になるわけです。

ジニ係数は1895年(明治28年)の0.43から、「2.26事件」の翌年で日中戦争に突入する1937年(昭和12年)には0.57にまで上昇します。吉川教授は「今日所得格差が大きいといわれる中南米諸国のコスタリカは0.48、チリが0.45。戦前の日本の不平等は現在の中南米諸国以上だった」と書きます。

ただ、戦後は、財閥解体や農地解放などで平等化が進み、1950年代から60年代にかけて、ジニ係数は0.35まで低下し、70年代は「一億総中流」という言葉まで生まれます。

しかし、80年代に入ると経済成長率が低下し、ジニ係数も上昇し、21世紀には「格差」が大きな社会問題として論じられるようになります。

吉川教授はそこまでしか書いておられませんでしたが、私が調べたところ、2014年の日本のジニ係数は0.5704にまで上昇していたのです(厚労省調査)。な、な、何と、戦前のあの1937年の最高を記録した0.57と同じではないですか。

でも、娘を売らなければならないほど貧富の差があるかといえば、今はそこまで聞かれませんよね。実は、「0.5704」という数字は実質の値で、再分配所得、つまり、累進課税(富裕層に高めにかかる税率)を差し引いた同年のジニ係数は0.3759になるというのです。これなら、平等化した1960年代の0.35と数値的に近いですね。

そこで、気になる累進課税を調べたところ、国税庁の「所得税の速算表」が出てきました。

課税される所得金額      税率    控除額

195万円以下         5%     0円

195万円を超え330万円以下  10%   97,500円

330万円を超え695万円以下  20%   427,500円

695万円を超え900万円以下  23%   636,000円

900万円を超え1,800万円以下 33%  1,536,000円

1,800万円を超え4,000万円以下 40%  2,796,000円

4,000万円超         45%  4,796,000円

こう見ますと、年収4000万円以上あると半分近く税金で持っていかれるようですが、実態はもう少し複雑な計算法があって、そこまでいかないようです。

色々調べていたので、どこの資料だったか忘れてしまいましたが(笑)、「年収1000万円以上は、給与所得者全体の4%」とありました。「えっ?わずか4%?そんなはずないだろう」と直感しましたが、恐らく、大金持ちの富裕層は、自営業か会社経営者であり、「給与所得者」ではないということなんでしょうね。

《場郭斎日乗》ですから、もうこの辺でやめときます(笑)。