「アポ電強盗」は案外普通の市民の顔をしている

 東京都江東区のマンションで、独り暮らしをしていた80歳の女性が「アポ電強盗」(こんな名称、どうにかならないものかなあ)とか言われる予告電話詐欺で殺害された事件(2月28日)は、身につまされます。本当に気の毒で、早く犯人グループが捕まってほしいものです。

 「オレオレ詐欺」の手口も随分凶悪になったものです。生命まで取られてしまうのですからね。これでは簡単に他人は信用できません。詐欺師と言えども、結構、普通の善人面しているから困ります。

 私は以前、2回も詐欺師と面通ししたことがあります。場所はいずれも、東京・有楽町(銀座)です。一人は70歳前後の老人です。夕方6時前、有楽町マリオンの中のあの「通路」を歩いていたら、「おう、久しぶりだなあ」と懐かしそうな顔をして近づいてきた老人がいました。身長は170センチぐらい。高村光雲の有名な彫刻「老猿」のような顔つきでした。

 仕事で、これまで何百人、何千人という人に会ってきましたが、全く見覚えがありません。「おい、俺だよ…」と言いながら、相手はもっと近づいて来るので、少し警戒しました。そして、「この間の…」と言いかけてきたので、すぐ、いくら鈍感な私も詐欺師だと分かったので、ちょうど見えた、左前方の高い所に設置されていた「監視カメラ」を指差しました。

 後ろを振り返った老猿は、少しギョッとした表情になりましたが、全く悪びれた様子もなく、また人混みの中に消えていき、また別のカモを探しているようでした。3年ぐらい前ですが、今でもその男の顔は覚えています。

 もう一人は、絵に描いたような詐欺師面でした。銀座「三笠会館」の前の並木通りを渡ろうとしたところ、目の前で黒塗りのレクサスに横付けされました。何か、道順でも聞かれるのかと思ったら、50歳ぐらいの男が、ウインドウを開けて、「はい、これ」と言ってから、「今、そこのホテルでさあ、余ったからどう?」と小包を押し付けてきたのです。

 咄嗟のことで、人の良い浅はかな私は、何か試供品でもくれるのかと思っていたら、「時計だよ。ロレックス、似合うと思うよ」と半ば強制的な口調です。柔らかなパンチパーマをかけ、目付きが鋭く、イタリア製のスーツでピシッと決め込み、その筋の人風(ふう)です。助手席には小包が10個ぐらいあり、そのうちの二つも押し付けてくるので、「いえ、結構です」と丁重にお断りして退散しました。

 そんなにお金を持っていそうに見えたのかしら?私は風采の上がらない初老の貧民ですけどねえ(笑)。「何で、俺が?」というのがその時の率直な感想でした。

 その詐欺師もどこか切羽詰っているような感じでした。組長風に見えましたが、それも、せめて2次団体か3次団体で、上納金に苦労している感じでした。

 私の場合は、風貌を見て、すぐ判断できましたが、顔も見えない電話やSNSやメールだけで、簡単に相手を信じ込んでしまうんですからね。でも、「自分は絶対に騙されない」と思っている人間に限って、いとも簡単に、あっけなく騙されてしまうということを肝に念じておくべきです。

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 さて、明日土曜日は、夕方から都内で高校の同窓会です。今年は「幹事長」を拝命されてしまったので、色々と大変でした。

 同窓会の副幹事をやってくれている岡本君は、株の相場師で、毎日2回も3回もメールマガジンを送りつけてくるのですが(笑)、今朝は「60歳以上の収入は年金も含めても『10~20万円』が最多」という記事をリンクしてくれました。

内閣府の調査(2017年6月に全国の60歳以上の男女2920人を対象に行なわれ、1976人から有効回答 )によると、60歳以上の「年金と合わせた平均月収」は、「10~20万円」で32%で、最多だったというのです。その次に多いのが「20~30万円」で26%。全体の6割近くは、月収が10万円~20万円の範囲だったというのです。

私も、老人になるまで全く分かりませんでしたが、これが実態です。あのスーパーボランティアの尾畠春夫さんの年金は月5万5000円です。60歳以上でも定年延長で働いている場合、給料が年金と合わせて28万円以上あると、年金が減らされるという地獄のようなお上による「仕打ち」も課せられます。

 まあ、ざっくり言いますと、60歳以上で月収50万円もあれば、年金は出ないということです。つまり、お金持ちの老人は世の中にそうざらにはいないということです。

 それだけに、アポ電強盗どもは、血眼になって、1日何十件も何百件も、電話をかけまくって、カモを探すのでしょう。

 詐欺師たちが、普通の顔をして市民に紛れ込んで街中を歩いていると思うと、ぞっとします。