中学生だった頃の自分へ

 ヒエール瀧です。

 ブログって便利ですね。世界情勢、政治批判から個人的な雑記まで、ルポでもフィクションでも何でも書くことができるんですからね。そこで、今日はあくまでもタイトル通り、些細な個人的なことを書きますので、ご興味のない方は飛ばしてください(笑)。

 渓流斎ブログで、何回か書いたことがありますが、小生、中学生の頃、グレてしまい、学業成績も学年トップから最下位とまではいきませんが、下位に急降下してしまいました。

 グレたとは言っても、かわいいもんで、親の財布からお金をくすねたり、タバコを吸ったり(やっぱり駄目ですね。しっかり、警察に補導されましたからお許しを)、本屋で立ち読みしたり、ビリヤードに入り浸ったりした程度ですが、とにかく、学業はすべてホッポリ出して遊び呆けてしまいました。

 何がきっかけかと言いますと、中学1年生の最初の家庭訪問で、担任の先生から「あなたの息子さんは学年のトップですから、このまま頑張ってください」という話を横で聞いて、すっかり、慢心してしまったのです。その日のうちに、自分の「人生計画ノート」を作ります。良い高校、良い大学に入って、ということは東京大学に入って、大蔵省に入り、作家に転身し、(この辺りは、三島由紀夫の影響でしょう=笑)、総理大臣になって、最高の立身出世をします。

 でも、その時、「一体、そんなエスカレートに乗るような人生の何処が面白いんだろう」と空しくなってしまったのです。人生計画ノートには「20○○年 総理大臣になる」の後は、「20××年 ヒヒヒーンになる」と書いてありました。「ヒヒヒーン」って何でしょうかねえ?自分でもさっぱり分かりません。馬になってどうするつもりだったのでしょうか。

 どうやら、中学生の幼い知性では言葉が見つかりませんでしたが、当時はニヒリズムに取り付かれてしまっていたようです。「どうせ、いつか死んでしまうのに、何をやっても無駄だ」という暗黒の海に突き飛ばされた感覚に陥ってしまったのです。そんなニヒリズムから逃れたいがために、もがき苦しんでいたような気がします。全く無意識でしたが。

Espagne

 このニヒリズムは大人になっても消え去ることも解決することもありませんね。人生、楽しもうが苦しもうが、何の意味もないし、何の価値もない。頭の片隅でどこか冷めています。どうせ人類も地球も太陽系もいつか必ず滅亡するのだから、人類の歴史も宗教も文化遺産も何もあったもんじゃない。人間は人を裏切るし、「自分さえ良ければよい」という自分勝手な考えの持ち主ばかりで、すぐ人を貶したり、足を引っ張ったりする。何で周囲の皆はそんな実態に気付かないフリをして、安穏として暮らしているのだろうか、と不思議でしょうがありませんでした。

 パスカルもこのようなことを言ってます。

 「人間は、本質的に、はなはだ不幸なので、何ら退屈の原因がなくても、その本来の気質によって退屈に陥ってしまう。また、人間は虚無的なので、退屈になってしまう多くの原因がありながら、玉突きや球打ちのような至ってつまらないことで気をまぎらわそうとするのだ」(「パンセ」から少し改変)

 玉突きとは、ビリヤードじゃありませんか!17世紀の仏クレルモンフェランやパリには既に玉突きがあったんでしょうね。この文章を読んだ時に、中学生だった自分に読み聞かせたくなってしまいました(笑)。

Alhambra,Espagne

 ピエール瀧さんが、コカインか何かの薬物に手を付けたのも、ニヒリズムに取り付かれたのかもしれません。とはいえ、人間は虚無に取り付かれても、大人になれば、何とか歯を食いしばって、真っ当に生きなければなりません。違法なことをするのはもってのほかです。

 私も、大した人間にはなれませんでしたが、今の自分があるのは「グレた中学生があったお蔭」として、当時の自分を許してやろうかと思っています。