研究会の前半では、鈴木貴宇・東邦大学准教授が「モダニズム研究から日本人論へ:南博と欧米における日本研究の動向」という演題で講演されました。実は、私は南博の著作は1冊も読んだことがないので、よく理解できなかったことを告白しておきます(苦笑)。南博のモダニズム研究や日本人論や社会心理学に関して、国内では、「(社会心理学の)中味がつまらなければつまらないほど」(見田宗介「近代日本の心情の歴史」)とか、「確かに日本人論のレファレンス・ブックを網羅的に列挙したのは申し分ないのだが、取り上げられた日本人論への著者のコメントがあまり見られない」(濱口恵俊による南博著「日本人論」の書評)などといった南博氏に対する批判が紹介されていましたが、同時に海外では南博の著作に影響を受けた米国人研究者が、2000年代初めに次々と日本のモダニズムに関する書籍(Miriam Silverberg “erotic grotesque nonsense” , Barbara Sato ” The new Japanese Woman” , Jordan Sand “House and home in modern Japan”)を出版していることも列挙しておりました。
私は学生時代にフランス語を専攻した「仏語屋」なので、本書で335ページで気になる箇所がありました。ヴーケリッチが東京で勤務した通信社アヴァスがありますが、ここでは「ハヴァス」と誤記されているのです。アヴァス通信社は現在のAFP通信社に引き継がれた近代通信社では世界最古(1834年創業)と言われ、ここから英国のロイター通信(1851年創業)などが独立しています。アヴァス通信の創業者はCharles-Louis Havas で、フランス語のH(アッシュ)は発音しないので、Havasは「ハヴァス」ではなく、「アヴァス」と発音します。