アレン著「オンリー・イエスタデイ 1920年代・アメリカ」で学ぶ現代史

スペイン・ラマンチャ地方

近現代史といっても、これまで、自分でも、どうも偏って勉強してきた感じがします。

私は、特に、昭和2年の金融恐慌に始まり、翌年の張作霖暴殺事件、満洲事変、五・一五事件、二・二六事件、やがて開戦に至る一連の日本軍部の台頭とスパイ・ゾルゲに代表される諜報活動ばかりに目を向けてきたわけです。

しかし、それでは足りません。もっと、世界史的視野がないと、何で日本は、あんな無謀な戦争に突き進まざるを得なかったのか理由が見えてきません。

となると、ターニングポイントは第1次世界大戦だったような気がしてきます。天文学的数字の賠償金を押し付けられたドイツは、超インフレに悩まされ、やがてナチス・ヒトラーを選択して、破滅的な第2次大戦に突き進みます。ヴェルサイユ体制下で、国際連盟を提唱しながら参加しなかった不可思議な米国。金本位制から離脱した大英帝国は没落し、覇権とともに、基軸通貨も米ドルに奪われてしまいます。近代経済学はこの時代のケインズに始まったという識者もいます。

ということで、前置き長くなりましたが、手始めに、フレデリック・ルイス・アレン(1890~1954)著「オンリー・イエスタデイ 1920年代・アメリカ」(ちくま文庫)を、色々と忙しくて1カ月近くかかりましたが、ようやく読破しました。今、その続編の「シンス・イエスタデイ 1930年代」を読んでいるところです。

もともと、世界大恐慌の引き金を引いた1929年の株価大暴落「暗黒の木曜日」には興味がありましたが、1920年代そのものについてはよく勉強していませんでした。

でも、米国人にとっては、最も懐かしい思い出がある「古き良き時代」だったことが、この本を読んで初めて分かりました。それは「クーリッジ(当時の大統領)景気」とも呼ばれました。第1次大戦で疲弊した落ち目の欧州を尻目に、米国は経済的繁栄を謳歌したのでした。何しろ、針子から靴磨きまで、こぞって株に投資する時代でした。フォードを始め、自家用自動車が大衆にも行き渡るようになり、映画のほか、ニューメディアとしてラジオが生まれ、誇大広告も盛んになりました。発明王エジソンの創業したGEは、電気冷蔵庫や洗濯機を売り出します。フロリダへの過剰な不動産投資、そしてバブルがはじけて、恐慌へ。。。

スペイン・ラマンチャ地方

まるで、私の同年代に体験した現実の原点を見るかのようです。昔の話なのに古びていない。人間の心因性は変わらないことが分かります。「ローリング20s」とか「狂騒の20年代」とも呼ばれ、その風俗はフィッツジェラルドが「華麗なるギャツビー」(1925年)で活写しています。ホームラン王ベーブ・ルースの全盛期、世界ヘビー級王者のジャック・デンプシーら大掛かりなプロボクシング興行、禁酒法の時代で、シカゴではアル・カポネらギャング団が暗躍。大西洋を単独横断して一躍ヒーローに祭り上げられたリンドバーグ…この本では、ほぼ時系列のクロニクルの形式で、非常に細かい統計数字も拾って描かれているので、後世の歴史家や経済学者がどうしても参照しなければならないほど、信頼できるノンフィクションの力作になっています。

著者のアレンは、米ハーバード大学大学院で、名誉法学博士号を得て、「ハーパーズ・マガジン」などの編集長を歴任したジャーナリストです。「オンリー・イエスタデイ」が出版されたのは、1931年のことで、この時、アレンはまだ41歳という若さ。とにかく、当時のジャーナリズムの水準の高さには驚かされます。(日本では1975年になってやっと、藤久ミネ氏によって翻訳出版されました)

景気の良い20年代は、女性のスカートの丈の長さがどんどん短くなっていったのに、失業者があふれる不景気になった30年代になると、また長くなった、といった逸話も出てきます。著者の観察眼には脱帽しました。

私の知っている1960年代はミニスカートが流行しましたが、高度経済長期で、景気が良かったということなんでしょうね。

7900兆円が世界を回っている

スペイン・コルドバ

個人的なことながら、私の情報収集の80%は新聞からです。残りの20%が、テレビ、ネット、雑誌といったところでしょうか。

特に経済情報は圧倒的に新聞からです。経済の歴史や理論は単行本で仕入れることができますが、動きが速い経済情報はすぐ古びてしまいます。最新情報となると新聞が最適です。

新聞のおかげで、かなりの知識を得ることができました。その最大の収穫は、アナリストや評論家や学者の予想や知識が100%正しいわけでもなく、当たるわけではないということでした。

「天気予報のようなもの」と言えば、あらゆる関係筋から抗議が殺到することでしょうが、どうかお目こぼしを(笑)。とにかく、経済は、理論や法則通りになるわけではなく、例えば、株式ならその時の国際情勢から機関投資家の不安心理に至るまで、複雑な要素がドロドロとからみ、ピタリと的中させること自体がおかしいのです。

あのゴーン容疑者が、リーマン・ショックで17億円も損失して日産に肩代わりさせたという疑惑があります。カリスマ経営者でさえ失敗するのです。逆に、ど素人の中で、リーマンで大儲けした人がいたかもしれません。そういう人は絶対名乗りませんが(笑)、これこそが不可知な経済の面白いところです。

スペイン・コルドバ

さて、最近勉強になったことを羅列します。

かつて、日本の広告代理店電通は、「世界の電通」と言われた通り、売上高世界最高で、世界一の会社でした。しかし、今では世界5位(売上高7500億円)に落ちていました。知りませんでしたねえ。で、どこが、ナンバーになっていたかという英国のWPPという会社です。売上高は2兆3000億円(2015年)と電通の何と3倍強。でも、御存知でしたか?もともと、WPPは、Wire Plastic Productsの頭文字を取った会社で、ワイヤー製の買い物籠をつくっていた会社でした。それをユダヤ人のマーティン・ソレル氏が買収して、業態を広告代理店へと全く変えて、豪腕手腕で世界一に躍り出たというのです。

ソレルCEOは、今年4月に会社の資産を私的流用した疑惑(金融取引に失敗したらしい)で、CEOを引責辞任して、同社の株価が27%も下落したということですね。

会社資産の私的流用といえば、日産のゴーン容疑者にも嫌疑が掛けられ、株価も急落していますから、何か、「偶然の一致」を感じてしまったわけです。

スペイン・コルドバ

もう一つ。個人的ながら、私が少年の頃に、「3億円事件」がありました。(1968年12月10日ですから、あれからもうすぐ半世紀!)この時、親父さんが「3億円もあれば、何もしないでも一生喰っていけるよ」と言ったことを今でも忘れません。おかげで、私の頭の中の最高額は3億円です。それ以上の金額は、あるとしても想像つきませんでした(笑)。

でも、今では、つまり、50年も年月が経てば、3億円といっても一生喰っていけるかどうか分からず、映画1本もつくることさえできず、ゴーンさんのように100億円も200億円もの役員報酬を貰っても、人間は強欲で不安になるものなんですね。

スペイン・コルドバ

そこで、日々、新聞を読みながら、金融情報に注目してみました。

今、ちょっと株価急落で落ち込んでおりますが、世界一の時価総額を誇る会社は米アップルで10月初旬の段階で約127兆円です。もうここまで高額となると、全く分かりませんね(笑)。ちなみに、日産の時価総額は4兆2500億円だとか。

でも、上には上があるもので、全世界の運用会社の運用残高は、7900兆円(2017年末)もあるというのです。これは、08年のリーマン・ショックの頃の3900兆円の約2倍です。

この内訳として、運用資産の第一位は、米ブラックロックの691兆円です。日本の最高は、三井住友信託グループの24位で、85兆円です。

残念ながら、皆様には全く関係ない話でしたねえ。失礼致しました(笑)。

ちなみに覚えておくと便利な数字は、日本の昨年のGDPは550兆円だということです。日本は中国に抜かれて世界第3位になりましたが、今ではその中国のGDPは日本の2倍強の1300兆円にもなっているのです。

もちろん、GDPの第1位は米国で、2000兆円です。こんな国に、どこの国が逆立ちしても勝てるわけありませんよね?(笑)。

ただ、その米国GDPの4倍近いおカネが、世界中を回っているという事実を知っていても損がないかもしれません。得もしませんが(笑)。

スペイン・コルドバ

月産ガーン会長逮捕で、江戸の長屋でも噂話に花が咲く

スペイン・コルドバ

タイムマシンに乗って、江戸は八丁堀の長屋に、最新鋭の盗聴器を仕掛けて、住人の世間話を盗み聞きしてきました。

スペイン・コルドバ

熊さん おい、聞いたか。月産自動車の64歳のカロルス・ガーン会長が、5年間で50億円もの役員報酬を誤魔化したとかで、小伝馬町の牢屋に入れられちまったらしいじゃねえか。

八つあん 聞いたよ、聞いた。でも、本人は「そんなこと、してねえ」と否認してるらしいじゃねえか。

 ああ、一緒にとっ捕まったケロッグ・カリーとかいう62歳の代表取締役も「不正はしてねえ」と突っ張ってるらしいな。もっとも、このおっさん、本職は、メリケンの牧場主らしく、月産自動車には年に数回しか出社してなかったらしい。単なるガーンの代理人のコメツキバッタってとこさ。

 でも、暴かれた悪行は、ひんむけば、出てくるわ、出てくるわ。誤魔化した金は、50億円じゃなくて、80億円とも100億円とも言われてる。それに、江戸だけじゃなく、ニューヨーク、アムステルダム、ベイルート、リオデジャネイロ、パリにも豪邸を構え、ぜーんぶ、月産自動車に肩代わりさせたらしいじゃねえか。

 ああ、特に、パリは、月産自動車の親会社のルノーの本丸だからな。月産社員も「何で、ルノーがあるのに、月産がパリまで肩代わりしなきゃなんないんだ」と嘆いていたよ。まあ、ルノーにとって、月産は、鵜飼の鵜みたいなもんだから、どんどん稼いで、貢いでもらわなきゃならねえから、絶対、手放したりしねえよ。何しろ、ルノーはフランス政府が15%出資する国策会社だからな。

スペイン・コルドバ

 いや、俺が一番驚いたのは、ガーン容疑者が、自分の姉を社内で実体のない口利き業かなんかに雇う格好にして、年間1200万円もくれてやっていたことだよ。役員報酬や世界各地の豪邸と比べりゃあ、大した金額じゃねえかもしれんけど、これが一番許せねえなあ。俺の給金は、毎月10万円、年収120万しかねえからな。一番身近に感じるよ。(これ、本当の話です←渓流斎)

 ハハハハ、だから、庶民は貧乏臭くって嫌なんだよ。そんなチンケな金、家族愛なんだよ。

 そんなら、ガーンは100億円も200億円も貰ってるんだから、自分の姉さんなら、自分で払ってやりゃあ、いいじゃねえか。

 だから、それが素人の赤坂の夜はふけて、と昔から言われてるんだよ。もともと、ガーンは強欲だから、税金なんて、ビタ一文、最初から払う気なんて、さらさらねえんだから。

 ひでえなあ。

 ひでえよ。一番いけねえのは、瓦版連中がガーンのことを、庶民のクビを切っておきながら、「救世主」だのと持ち上げたからよ。あいつ、だから、どんどん、図に乗って、植民地の王さまみたいな気になったのさ。まあ、結局、裸の王さまになっちまったけどな。もっとも、ガーン前会長をちくった犀川社長だって、5億円近く役員報酬貰ってるからなあ。。。サニーの平居会長だって、27億円の役員報酬を貰ってることを堂々と公表してるんだから、ガーン容疑者も最初から20億円貰ってると申告すりゃあ、よかったんだよ。「過少申告は、『貰いすぎ』の批判をかわすため」と、どこの瓦版もシタリ顔で書いてるけど、ただ単に、税金を払いたくなかっただけだよ。どうせ乗っ取った会社だから、貰えるもんは、丸々懐に入れてやろうという魂胆だったのさ。

スペイン・コルドバ

 ところで、さっき言ってた、その家族愛ってのも、よく分かんねえなあ。

 瓦版は、ガーン前会長のことを「有能・剛腕」「名経営者だ」と持ち上げていたけど、人間は国籍、人種を問わず、すべて、肉親、身内がまず最優先で大事なんだよ。グローバリズム万歳、世界的なビジネス展開、企業の透明性? 馬鹿を言っちゃあいけねよ。息子の学費まですべて月産に回すような究極の「社用族」だね。要するに、グローバリズムによる「無国籍人」や国境のない連中にとって、文化や伝統なんてどうでもいい。すべてカネ!カネが頼りの世界なんだよ。信じるものは「家族」と「肉親」だな。それが、破綻すると「大塚家具一族」のような愛憎、対立、憎悪になるわけだ。

これでも分かんなきゃ、スポットライトを浴びる芸能人がいい例さ。庶民の多くが憧れ、光輝けば輝くほど、その影は濃いのさ。

 おめえの言ってること、よく分かんねえけど…。

 嗚呼、だから、庶民は嫌だねえ。例えば、あの美空ひばりだって、ヤクザな弟で相当苦労したのは有名な話だろ?江利チエミだって、稼いでも稼いでも、金遣いの荒い実の姉に金をむしり取られて、結局、俺たちのヒーロー高倉健さんと離婚せざるを得なくなっちまったんだよ。

八 へえ、知らなかったね。でも、随分、古い話だなあ。大坂夏の陣の頃か?

 馬鹿野郎!今現役の歌手や芸能人の名前を出してもみろ!そりゃあ、炎上するどころじゃ済まされねえよ。俺は、実の爺さんにたかられている有名歌手や、男に騙されて貢いでいる美人女優なんか、たくさん知ってるけど、そんなこと、言えるかよ。どこに、盗聴器が隠されているか分からねえし、また、《渓流斎日乗》とかいうブログに書かれるとも限らねえしな。

 それもそうだ。お前も随分、賢くなったじゃねえか。

熊 あったぼうよ。棒があれば犬も転ぶ、と昔から言われてるだろ。

 ん?

ゴーン容疑者を持ち上げたのはマスコミではないか?

昨日の日産の「ゴーン会長」から、東京拘置所に勾留された「ゴーン容疑者」になった人の話の続きですが、早速、新聞各紙は、ゴーン容疑者の「罪状」の連載を今朝の朝刊から始めました。

とはいえ、ゴーン容疑者のことを「V字回復の立役者」だの、「救世主」だのと持ち上げてヒーロー扱いしたのは、新聞や経済誌などのマスコミだったんじゃないでしょうか。

◇クビになった工場労働者の怨霊か

今回の「入り口」の事件容疑は、本当は役員報酬を20億円も貰っていたのに、「高額」との批判を避けるために、10億円と過少申告していたということになります。一番ざんねんな人たちは、「コストカッター」の名の下で、クビを切られた何千、何万人にも及ぶ日産の工場労働者たちでしょう。当然、彼らは泣き寝入りしたことでしょうが、結果的にゴーン容疑者は、彼らの生き血を吸って巨額の富を得ていたことになります。

元工場労働者の皆さんは快哉を叫んだことでしょう。

この事件について、もう少し情報が欲しくなったため、今日発売の「週刊文春」を買ってみました。「強欲ゴーンVS日産『離婚訴訟費用まで』」という見出しにつられてしまったからです。でも、見出し以上の情報はありませんでしたね。嗚呼、買って損したなあ(苦笑)。

◇「おカネに関して、カルロスは正しいことをしたことがない」

悔しいので、同誌に書かれていたことで、「へー」と思ったことを少し並べてみますと、3年前にDV(家庭内暴力)によって離婚した糟糠の妻だったリタさんは、2週間前に「黙らないと賠償命令を500万ドル(約50億円)に上げるぞ」とゴーン容疑者らから恫喝されたそうです。リタさんは、文春砲にゴーン容疑者の家庭内暴力の酷さや、金に対する汚さを暴露していましたからね。

ゴーン容疑者は、2年前には仏ベルサイユ宮殿で、一回り若い米国人キャロルさんと超豪華な「再婚式」を挙げ、2人が住むニューヨークの豪邸は、日産の経費から落としている疑いもあるようです。

ゴーン容疑者の豪邸は、このほか、パリやベイルートやリオデジャネイロなどにもあることは昨日書いた通り。日本の自宅は、プールやジャグジーを完備した家賃推定460万円の港区の高級マンションだったらしいのですが、写真に写っていたマンションは、どう見ても「六本木ヒルズ」に見えました(笑)。

◇馬鹿らしく、空しい

嗚呼、何だかこんなことばかり書いていて、自分でも馬鹿らしく、そして、何よりも空しくなってきました。

それにしても、今朝方入ってきたニュースですが、仏ルノーが取締役を開いて、同社会長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン容疑者の解任を見送ったらしいのですが、解せないですね。ルノーの「子会社」に当たる日産を私物化したわけですから、そのうち背任容疑も問われることでしょう。

フランス人の考えることはよく分かりませんね。また、空しくなってきました。

日産ゴーン会長逮捕で得する人、損する人

昨晩の日産自動車のカルロス・ゴーンCarlos Ghosn会長(64)の逮捕事件には驚きましたね。驚天動地といってもいいかもしれません。

これで、ますます、グローバル主義が衰退、いや後退して、保護主義が強まっていくのではないかと思います。何で今頃になって発覚したのか? 一体、誰の差し金か?ー自分なりに整理してみました。

◇50億円の過少申告

ゴーン会長の容疑は、2011年3月期から15年3月期の5年分の役員報酬について、実際には総額約99億9800万円だったのに、有価証券報告書に約50億円も少なく見せ掛けて虚偽申告したというものです。それを指示したグレゴリー・ケリー代表取締役(62)も共犯として逮捕されました。

だから、何だと聞かれれば、虚偽記載すると10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられ、代表者が違反した場合、法人に対して7億円以下の罰金が科せられるという両罰規定があるそうです。(20日付朝刊では東京新聞だけが書いてくれました)

ただ、追徴課税など税金はどうなるのかと思いましたが、新聞はどこも書いてくれませんでした。

この容疑は、単なる「氷山の一角」に過ぎず、ゴーン会長は、レバノン(ベイルート)やブラジル・リオやパリなどの自宅もオランダの子会社を通じて購入して、約20億円の費用を社側に負担させ、会社や株主のためでなく、要するに私腹を肥やすことしかしなかったというわけです。

◇強欲なコストカッター

1999年、「コストカッター」として仏ルノーから乗り込んで、日産のトップに就任して19年。その間、年俸と役員報酬を含めて巨額の収入を得ていたのに、虚偽工作までするとは、強欲以外の何でもありませんね。

仏ルノーは日産の株式を43%、日産もルノーの株式15%を保有し合い、ルノーにはフランス政府が15%も出資していますから、国際問題に発展するのではないかという識者もいますが、その根拠には内紛説があります。

昨年のルノー・日産は、三菱自動車を傘下にいれた三社連合で世界第2位の売り上げ(1060万台)を記録しました。でも、内訳は、日産581万台、ルノー376万台、三菱103万台で、日産がトップだったのです。

◇日産とルノーとの確執か

それでも、ルノーはいわば日産の「親会社」ですから、当然ながら、日産には自分たちの息のかかった欧米人の取締役を送り込んで意のままに経営権を行使しようとします。

その一方で、以下はあくまでも容疑ですが、ゴーン会長は、7月に日産が不正検査問題を起こした時でも、謝罪弁解会見には日本人首脳に押し付けて、自分は他人事のように休暇を取って親族(レバノンの名門上流階級ゴウスン一族か)と西日本の島に静養に行ったりしました。

前の都知事の舛添さんみたいに、私的な家族旅行費までも、会社に負担させたりしました。その額、数千万円。

何と言っても、日本人では考えられない巨額の役員報酬…等々、社内では色々とフラストレーションが溜まっていて、どうにかしてゴーン会長の失脚を狙って、あら捜ししていたフシがあるようです。

◇内部告発と司法取引

これらは、客観的証拠に過ぎませんが、何しろ、もう何カ月も前から社内で内部調査し、内部告発者は、東京地検とは司法取引までしたといいますからね。

西川・日産社長の記者会見で、「これはクーデターではないのか?」と質問した記者もいたらしいですが、急所を突いてますね。たとえ、社長が全面否定しても。

ゴーン氏逮捕の報道を受け、仏ルノー株が一時15%、日産株も一時7%も下落したのも投資家心理が働いたのでしょう。

今後どうなるのか気になりますが、ルノーとフランス政府は、黙っていないでしょう。

もしくは、ゴーンとケリー両氏の2人だけの個人的責任としてけりをつけるのでしょうか?

でも、自動車はあくまでも商品なんですから、傷ついたブランドの信用を取り戻すのに時間がかかるのではないでしょうか。

こんなんで景気が低迷してほしくないですけどね…。

軽減税率などおやめになったら如何ですか?

スペイン・コルドバ メスキータ

フェイクニュースをお知らせします。

フェイクニュースをお伝えします。

来年10月から消費税率を10%に引き上げますが、軽減税率もまた、同時に導入して8%に据え置きます。

仕組みは、非常に簡単です。

スペイン・コルドバ

コンビニで飲食料品を買った場合、軽減税率が適用されて8%でオッケーよぉ、ですが、コンビニ店内のイートインコーナーで食べた場合、「外食」扱いとなり、10%の消費税となります。コンビニ店外のベンチで食べた場合も同様に「外食」扱いとなり、10%となりますが、そのベンチに「飲食禁止」が明示されて、実際に客が飲食していない実態がある場合は8%でオッケーよぉ、となります。

でも、この「実態」なるものがあいまいなので、警察官が見た場合、と財務省の官僚役人が見た場合に分けて、罰則規定も含めて、警察官は15%、財務官僚は12%とすることに決めようかなあ、なんて、今、考えております。

もう一つ、「お持ち帰り」扱いで8%で飲食料品を買って、店外に出て、ベンチに座った場合、2%の追加料金を徴収しますが、ベンチに全部ではなく、半分だけお尻がかかっていた場合のみ、見逃す事案が全国で頻発するのではないかと推測されております。

勿論、店外で立ったまま、食べていたら、「はしたない」「日本人としていかがなものか」ということで、20%の追徴課税を科そうではないかという案が、さっき浮上しました。

◇お持ち帰りは5分54秒以内

「回転すし」はもっと簡単です。「お持ち帰り」と注文した場合、8%です。残った寿司を捨てるのが忍びないので、残った分を持ち帰った場合でも「外食」と判定され、10%が原則です。しかし、「お持ち帰り」と言っておきながら、待合所で隠れて食べていた事案は、警察官が発見した場合、罰金分を加えて15%を徴収します。一方、店内で「外食」しながら、途中で急に気が変わって、「お持ち帰り」に変更した場合、入店から5分54秒以内でしたら、お持ち帰り分のみ8%が適用される案を多数決で決議することになりました。

なお、この5分54秒というのは、大した意味がなく、口から出任せです。フェイクニュースですから、それぐらいの度量は許されることでしょう(笑)。

 スペイン・コルドバ メスキータ

さて、新聞です。これは、年に数回、ホテルオークラの高級日本料理「山里」などで、時の首相と会食されて懇親を深めていらっしゃる新聞社の偉い方々のおかげで、軽減税率が適用され、8%に据え置かれました。でも、コンビニなんかで、新聞を買ったりすると10%になるので、同じ新聞なのに、何で、新聞店で買うと8%、コンビニだと10%なの、と面倒くさくなるので、一層のこと、真ん中を取って、全部9%にしようじゃないか、と検討中なんだそうです。しかし、これではあまりにも中途半端なので、ガサネタではないかという情報の方が有力です。

最後に、8%と10%の税率が複雑に入り組むスーパーマーケットなどでは、今のシステムではとても処理できませんから、1店舗に付き100万円の出血赤字覚悟の大サービスで、システム更新をやらせて頂こうかと存じます。

非常に分かりやすいですね。これなら誰でも分かります。

スペイン・コルドバ

渓流斎さんは「とっても、分かりにくい。軽減税率など導入するくらいなら、やめちまえ。社会福祉のために消費税を値上げするというのなら、全て、均等に10%にするべきではないか。何が先進国の欧米に倣っただ。馬鹿らしい」と息巻いておりますが、あの人、全く影響力がない人ですからねえ。無視されることでしょう。

以上 フェイクニュースをお伝えしました。

極右政党が勢力拡大=いまだ統一されていない?東西ドイツ

スペイン・コルドバ メスキータ

今からちょうど29年前の1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊し、翌90年10月3日に東西ドイツが統一されました。

めでたし、めでたし。多くの日本人はそう思っておりました。

何しろ、ドイツ人は勤勉で、メルセデス、ポルシェ等自動車の基幹産業があり、経済基盤は磐石で、欧州経済を牽引する「EUの雄」であります。共通通貨ユーロを創設して、「マルク安」の恩恵を受け、ドイツの独り勝ちの様相さえ呈しておりました。

ところが、先月10月の地方選挙で、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が大敗を喫し、メルケルさんは、今年12月の党首選に出馬せず、2021年の任期満了をもって首相の職を退くことを表明しました。

◇極右政党の伸長

同地方選では、中道派が有権者の支持を失う一方、「反移民」を訴える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」や左派「緑の党」が支持を伸ばしました。

特に、旧東ドイツでは極右のAfDが伸長しました。何故なのか?11月7日付ニューヨークタイムズが「いまだ統一されていない東西ドイツ」(意訳:原題は、 A nation still at odds)というタイトルで、その理由になるような話題を取り上げてくれました。日本の新聞ではなかなか読めません。

◇フランク・デーメル氏、57歳、職なし、地位なし、妻もなし

焦点が当てられたのは、日本人の誰も知らないチェコ国境に近いエベルスバッハという小さな町です。日本人なら知っているドレスデンの南東に位置しています。主人公はフランク・デーメル氏、57歳。29年前に、共産党政権に対して自由と民主主義を求めて街角でデモ行進していた彼は、今では極右政党の応援のために同じ街角に立っています。

「あれから、およそ30年の歳月が流れ、確かに自由と民主主義は手にいれたが、彼は何もかも失っていた。仕事も地位も祖国も、そして妻もー。妻は西側に出稼ぎに行って、二度と帰って来なかったのだ」ーという壮絶な話からこの記事は始まります。

デーメル氏は、東ドイツ出身のメルケル首相(生まれはハンブルク)のことを「裏切り者」と糾弾します。同首相は2015年に「移民政策」に転換して、100万人以上の移民を受け入れます。デーメル氏は「望んでもいやしないのに、我々旧東独人は、旧西独人、移民に後塵を排して三等国民になってしまった」と嘆くのです。エベルスバッハの基幹産業だった繊維工業は斜陽となり、1989年以降、人口は半減します。多くの学校が閉鎖され、鉄道サービスも縮小されます。エベルスバッハはその後、隣のノイゲルスドルフと市町村合併せざるを得なくなりました。

◇自立心旺盛な旧東独女性

ベルリンの壁崩壊以後、旧東独の人口は全体で10%減少します。その3分の2は女性でした。共産党政権の政策により、女性が自立できるよう、より高い教育を受けさせたり、職業訓練をしたため、旧東独では女性の方が男性より自立心が旺盛だったのです。

◇結婚できない!

その結果、旧東独でどうなったかといいますと、特に若い女性が西側に移住し、結婚適齢期の若い男女比の格差が広がりました。15年の統計では、旧東独の20~40歳全体で、男性10人に対して女性は9人ですが、小さな村になればなるほど人口格差は広がります。ポーランド国境に近いヴァイスケイセルは、5人の男性に対して女性は3人。グラウビッツという村は、4人の男性に対して女性は1人しかいないというのです。嗚呼、これでは結婚もできませんね。

◇治安悪化が極右支持に?

しかも、最近では職がない外国の不良移民から市民が恐喝されたり、殺害されたりする事件も起きたりして治安も悪化しているというのです。それが、デーメル氏のような市民を極右政党支持に駆り立てている要因になっていることは間違いないでしょう。ベルリンの壁崩壊以降、ドイツは、バラ色の世界が広がるかと思っていたのに、これでは逆行です。

何処の国も大変なんですね。日本の近未来にならなければいいと危惧しているのは私だけでしょうか。

映画「華氏119」は★★

一昨日11月3日(祝日)に鎌倉に行ったら、川崎駅の工事で東海道線の東京~横浜間が不通でしたが、今度は4日(日)に自宅近くの映画館に自転車で行ったら、私に何ら断りもなく(笑)、国際的なロードレース開催とやらで、道が塞がれ、迂回せざるを得なくなり、普段なら20分ぐらいのところが40分も掛かり、危うく上演時間に遅れるところでした。

マイケル・ムーア監督作品「華氏119」をどうしても見たかったのです。事前にただで見た新聞社の論説委員や編集委員さんらが書く文章を読んでも評判が良く、何しろ、11月6日の米中間選挙の投票前に影響を与えようという野心がいっぱいの映画らしかったのです。でも、観終わって、いや、途中から、何か、気持ちが荒むような、いやあな印象を受けてしまいました。

気になった一つは、ムーア監督が描く、そして最後まで強調するヒラリー候補の民主党=リベラル、自由主義、善で、トランプ大統領の共和党=保守、銃規制反対、大企業優先による多額の寄付、悪、という単純な図式です。

そんなに、共和党のトランプ氏がとんでもない独裁者の悪党で(ヒトラーになぞらえて、そういう描き方をしてましたが)、ムーア監督が応援する民主党が善でバラ色の社会を築いてくれる政党だというのでしょうか。

確かに、トランプ氏にはスキャンダルが多く、自分の実の娘同伴でテレビに出演して性的な話題をしたりして、不快を超えた嘔吐感しか残らないような唾棄すべき人物かもしれませんが、民主党のヒラリー候補だって、講演会で65万ドルもの超大金を提示されたりする特権階級で、貧困層の痛みも悩みも分からないのです。

民主党大統領候補として「社会主義者」のサンダース氏が、投票数ではヒラリー候補を上回ったというのに、最終的にはどういうわけか、民主党はヒラリー氏を候補に選ぶような不可解な政党でした。

第一、民主党というのは、リベラルでも善でも、平和主義者でも何でもなく、日本人としては、市民を無差別大虐殺したカーティス・ルメイ将軍による東京など日本の各都市大空襲にゴーサインをしたのは民主党のルーズベルト大統領であり、何と言っても、広島と長崎への原爆投下を最終承認したのも民主党のトルーマン大統領だったことをよく覚えているのです。

このドキュメンタリー映画で、かなりの時間を割いて「報道」しているのは、ムーア監督の出身地元であるミシガン州フリントで起きた水質汚染問題でした。

ここで、2010年にミシガン州知事に当選した、トランプ氏とは古くからの友人であるスナイダー氏を槍玉に挙げています。ムーア監督の描き方によると、スナイダー知事は、自己の金儲けのために、民営の水道水を開設したところ、その水に鉛が含まれており、多くの子どもや住民に被害が及んだというのです。被害者の多くは、黒人が多くすむ貧困層の住宅街です。日本の水俣病かイタイイタイ病みたいなものです。それなのに、スナイダー知事は大企業のGMに対しては、汚染されていない綺麗な水を配給したりするのです。

大問題となり、当時の民主党のオバマ大統領が「慰問」にフリントまでやって来ますが、水道水の安全宣言をするために、コップの水を飲むふりをして、ただ口を付けただけのパフォーマンスをしただけだったので、逆に地元民の反感と失望をかってしまいます。

途中で観ていて嫌になってしまったのは、このようなレベルの米国の政治システムが、世界中に、特に日本にも多大な影響を与えながら、投票権のない部外者は、黙って見ているしかないという歯がゆさだったかもしれません。

日経の記事は翻訳の範疇を越えているのか?

スペイン・コルドバ

福岡県にお住まいの道仁先生から異様に長いメールが送られてきました。

日経の翻訳記事は、原文と違い、翻訳の範疇を逸脱しているのではないか、と日本報道検証機構が提起しているというのです。

以下はその触り。

日本経済新聞が電子版ニュースサイトに「[FT]トランプ、プーチン、安倍…強権指導者の危うさ」と見出しをつけて英紙フィナンシャルタイムズ(FT)のコラムを掲載したところ、原題の「Trump, Putin, Xi and the cult of the strongman leader」と食い違いがあるとの指摘が日本報道検証機構に寄せられた。そこで、この問題を調査したところ、日経はFTの翻訳記事を掲載する際、原題どおりに翻訳せず、日本人読者向けに独自に見出しを作成しているケースが多いことがわかった。本文では強権指導者の一人として安倍晋三首相の名前が出ている。コラムの執筆者はロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席とは異なる位置付けで安倍首相を取り上げたと指摘しつつも、見出しの変更は「問題ない」と回答した。

スペイン・コルドバ

 これ以上引用しますと、元も子もなくなりますので、もしご興味がある方は、「日経電子版の見出しは『編集』されている」をご参照ください。

 2年前の随分古い記事でしたけどね(笑)。

1929年の大暴落と大恐慌からの教訓…

スペイン南部ミハス

長屋の八つあん ご隠居さま、お暇なところ、お邪魔します。

ご隠居さま おお、ハチ公か。お暇とはいい挨拶だな。ま、上がれ。今日は何の用だ。

ハチ公 ま、聞いてください。最近、アメリカの大恐慌とやらに興味を持ってるんですがねえ。でも、阿部老中が勧める讀賣新聞を読んでもさっぱり分からねえ。ご隠居さま、簡単に教えてくれやしまいかと思いましてね。

ご隠居 おお、お前も最近、経済に興味を持っているらしいことは噂では聞いておった。1929年のニューヨーク株式の暴落に始まる大恐慌のことかい?それにしても、大した魂消たね。お前さんがそこまで嵌っていたとは。

ハチ はあ、そうなんすよ。あんまし、意地悪言わねえで、サクッと教えてください。

隠居 サクッとか?儂はスマホじゃないがね。これでも、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで、ミック・ジャガーと肩を並べてMBAを取得しようとしたぐらいだから、儂の得意分野じゃ。あの尾畠春夫さんを見習って、スーパーボランティアで教えてあげよう。

ハチ お、大統領! そう、こなくちゃね。

スペイン南部ミハス

隠居 世界的な大恐慌の始まりは「暗黒の木曜日」、1929年10月24日のニューヨーク証券取引所での大暴落のことだと言われておったが、そうではないというフリードマンらの学説もある。ま、ややこしくなるので、このまま進める。とにかく、翌週の「暗黒の月曜日」「暗黒の火曜日」などを経て、1920年代の株投資ブームで上昇傾向にあったダウ工業平均株価は29年9月3日に最高値381.17ドルを記録し、それが暴落に続く暴落で、1932年7月8日には41.22ドルと実に89%も大幅に下落したわけじゃ。(損失価値総額約840億ドル。米国の第一次大戦時の戦費の約3倍に相当)10年前のリーマン・ショックのときは61%の下落じゃったから、どれだけ凄いか分かるじゃろ。1929年のピークの水準を回復したのは、戦後の1951年。それまで22年も掛かったことになるのぉ。回復のきっかけは、1941年の日本の真珠湾攻撃っちゅうから皮肉なもんじゃよ。はい、これで終わり。

ハチ えっ?もう、終わりっすか?

隠居 もうええやろう。とにかく、経済学ちゅうもんは、口が裂けても「いい加減」とまでは言えないが、数学のようにはっきりと解答があったり、スポーツのように勝ち負けがはっきりするもんじゃないんだよ。いまだに、大恐慌の原因について、論争があるし、実は決着が付いていない。ああ言えばこう言う。ああ言えば上祐(古い!)未来永劫分からんじゃろ。経済学とはそんなもんじゃよ。

ハチ 何だ、随分、テキトーな学問なんですね。

 ま、儂の口からは言えんけどな。両論併記と言ってもらいたい。それより、意外なエピソードの方が面白いんじゃ。例えば、株が大暴落したときの米大統領は共和党のフーバーだ。この人は、無為無策で、不況対策を取らなかったと誤解されて人気がない。片や、民主党のルーズベルト大統領、有名なニューディール政策を行い、とにかく、25%、つまり4人に1人が失業というどん底から救ったという救世主のような扱い方をされてる。しかし、実際はその逆で、例えば、ニューディール政策の中でも最も有名なテネシー川流域開発公社(TVA)によるダム建設、電力開発も、大した雇用創出にはならず、経済効果もなく、失敗だったという説を唱える学者もおる。

ハチ へー、そうなんすか。教科書に書いてあったこととは違いますな。

隠居 ハロルド・フーバーは8歳で両親を亡くした孤児で、叔父に引き取られて、熱心なクエーカー教徒になるんじゃ。スタンフォード大学を卒業して、鉱山技師となり、世界中の鉱山を渡り歩いて、開発して巨万の富を築くのじゃ。フーバーの偉いところがこの先だ。第1次世界大戦で欧州から帰国できなくなった10万人以上の米国人に金銭的に支援したり、食料や寝る場所を確保したりしたんじゃ。また、周囲の反対を押し切ってロシア革命後の飢餓で苦しむソ連の人々を援助したりもした。そんな「偉大な人道主義者」という名声から、時のハーディング、及びクーリッジ大統領から商務長官に選ばれるわけだな。そして、株の大暴落の直後、何もしていなかったわけではなく、失業対策として復興金融公社をつくったり、「フーバーモラトリアム」を制定するなど景気対策はやってたわけじゃ。フーバーは劇場に行かず、スポーツ観戦にも行かず、散歩にもドライブにも出ず、人の噂もせず、日曜も休日もなく只管働いた。クリスマスでさえ、メリークリスマスと一言言っただけで、すぐ仕事に取り掛かった。儂のような超真面目人間。ただ、輸入関税を平均33%から過去最高水準の40%に引き上げた悪名高いスムート・ホーリー法を成立させたことは汚点だった言われておる。

ハチ あら、今のトランプさんみたいな保護主義っすね(笑)。

隠居 歴史は繰り返す、とはよく言ったもんじゃ。アメリカは「移民国家」だというのに、移民制限だって、今のトランプさんに始まったわけじゃない。1921年のジョンソン法とそれを改訂した 24年の移民法では、完璧に、排斥の狙いは日本を含めた東洋人だった。黄禍論が盛んに論議されとったからな。

ハチ なあるほど。

スペイン南部ミハス

隠居 だから、歴史を学べば、未来も手に取るように分かり、心配することはないっちゅうことかな。一つ付け加えれば、アメリカの大恐慌のお蔭で、ケインズに代表されるようにマクロ経済研究が始まった。だから新しい学問なわけ。ルーズベルト大統領は、ケインズの「雇用、利子および貨幣の一般理論」(1936年)は理解できなかったらしいけんど、スタインベックの「怒りの葡萄」(1939年)ぐらいは読んだんじゃないかな。お前さんだって、LM曲線だのIS曲線だのを説明しても分からんだろ。せめて、シュンペンターの「景気循環の理論」ぐらいは理解できるかもしれんけど。まず、この時代を知りたければ、フレデリック・ルイス・アレンの「オンリーイエスタデイ」が一番。20年代の繁栄時代はフィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」、それに「武器よさらば」などヘミングウエイなんかも面白いんじゃないかな。

ハチ さすが、博学のご隠居さまだ。

隠居 いや、実は儂は、まだ全部は読んでないんだ…(笑)。

▼参考文献=林敏彦「大恐慌のアメリカ」(岩波新書)など。