2007年問題~既存メディアの危機

 ローマにて

「2007年問題」というと、通常は団塊の世代が退職して、特に腕に技術を持った優秀な職人クラスが退職するために、経済活動に支障をきたす、ということが喧伝されていますが、もう一つ、深刻な「メディア問題」があります。

 

2007年、インターネットの広告費が雑誌の広告費を抜くというのです。これは、大変なエポックメイキングな事件です。既に2004年に、ネットの広告費はラジオのそれを凌駕しました。それが、ついに活字の世界への侵食が始まったのです。

 

2006年の書籍の売り上げ高は、前年比1・4%とやや上向きになったものの、雑誌の売り上げは4・4%減と史上最大の落ち込みを記録し、出版全体でも2・0%減となったのです。そういえば、電車の中を見ても、新聞を読む人、特に若者の数が減りました。それでも、かつては、若者は漫画を読んでいました。「少年ジャンプ」が600万部だ700万部だと言われた頃です。(今は、300万部を切っているのではないでしょうか)

 

今は、何をしているかと言えば、大抵は携帯でメールかゲームをやっています。携帯でニュースも読めますから、活字メディアが落ち込むはずです。無料のフリーペーパーが増えていることも遠因になっているのかもしれません。

 

河内孝氏の「新聞社 破綻したビジネスモデル」(新潮新書)を読んでいますが、暗澹たる思いが先走って、なかなか、読めません。新聞産業の危機について、具体的な数字が並べられています。例えば、2005年と1999年の数字を比較して、発行部数は、05年は5256万部で、110万部の減少。新聞を購読しない人は12%と倍増し、特に首都圏では単身者の非購読層は48%に上るというのです。

 

国民のインターネットの平均利用時間は1日平均37分で、新聞(朝夕刊合計)の31分を超えました。(2005年)ニュースの取得法も、テレビが79%、ネットが58%、新聞は56%。

 

まあ、ネットのニュースも、もともとは新聞社や通信社のニュースなのですが、それらを差し引いても、メディアの形態が移行していることは確かです。新聞社は膨大な販売店を抱えて、宅配制度の上で成り立っているわけですから、新聞の売り上げ減で、今後、販売店の経営問題に発展していくことでしょう。

 

ネットの広告費は新聞やテレビを超える時代が来るのでしょうか?この方面で、一家言を持つ方は、コメントして戴きたいものです。

上流人の仕組み

 ローマ

公開日時: 2007年5月10日 @ 10:4

最近、気になったニュース…

●憲法改正の手続きを定める国民投票法案が成立へ

●カナダの経済情報社トムソンと英国ロイター通信が経営統合

●豪州のメディア王マードック氏によるウォール・ストリート・ジャーナル紙買収計画

●トヨタ自動車の営業利益が日本企業で初めて2兆円突破

●マヨネーズ17年ぶりの値上げ

 

一見、無関係な記事が並んでいるようですが、何か、底流に、共通している何かが流れているような気がします。全く抽象的ですが、地下水脈のように。

 

「下流社会」の三浦展氏が、下流人の典型は、経済的な困窮以上に、消費意欲の低下やコミュニケーション意欲の低下が深刻だということを指摘した、ということを数日前の「意欲の低下」で紹介しましたが、上記のニュースは、その正反対に「上流人」の特徴を如実に現しています。

 

つまり、2兆円を儲けるような企業が陸続と出現すると→金余りの上流人が発生し、彼らのお金は投資ファンドに流れ→投資ファンドは確実な収益が見込めるメディア産業に集中し→投資ファンドに支配されたメディアは、ますます上流人に都合の良い情報しか流さなくなるーといった具合です。

 

上流人はますます、消費意欲が肥大し、人を出し抜く儲け情報を得ようとますますコミュニケーション意欲も肥大していく仕組みです。

 

最後のマヨネーズ値上げについては、今日の朝日新聞が図解でうまく解説していましたね。バイオ燃料ブームで、トウモロコシの作付けが増加し、これに代わって大豆の作付けが大幅に減少する。大豆を使った食用油の価格が上昇するため、これによって、食用油を原料とするマヨネーズも値上がるといった具合。食料用のトウモロコシも、バイオ燃料のエタノールに回されてしまうと、トウモロコシの飼料が値上がりし、同様に、ビールや牛肉の価格も上昇するというのです。

 

最初の憲法改正云々は、要するに、上流人が、戦争をしたいということでしょう。どうせ、戦場に行くのは下流人ですし、戦争が一番儲かる正当な経済行為ですからね。

日高屋で痛飲

スペイン広場

昨晩は、作家の天田和行さんと「金融情報」の小島編集長、「トップコンフィデンシャル」の都築編集長の四人で、銀座の「日高屋」で痛飲してしまいました。

偶然、この店の実質的なオーナーである日高毎朝新聞の森繁光社長も北海道からみえていて、久しぶりに再会しました。ワインのボトル4本くらいあけてしまったのではないでしょうか?

他愛のない話しかしていませんが、今や新聞社は無料のインターネットのニュースに押されて、斜陽産業になり、将来、先行き、怪しくなってきたという話は、かなり深刻でした。河内孝著「新聞社ー破綻したビジネスモデル」(新潮新書)と吉原勇著「特命転勤ー毎日新聞を救え」(文藝春秋)は、実名入りで、新聞業界の裏が暴露されていて特に面白いそうです。未読なので、今度読んでみようと思います。

何しろ、今では、パソコンで、小学生でも簡単に新聞が作れてしまうんですね。中央大学総合政策学部の松野良一教授とブログ・ソフトウエア会社「シックス・アパート」が共同開発した「新聞ブログ」は、文字や写真を入力すれば、自動的に題字のある新聞が組みあがるそうなのです。動画やコメントにも対応して、A3判での印刷も可能だそうです。

考えてみれば、今の新聞はコンピューターで作られているわけですから、個人で作れないこともないわけです。ニューヨークタイムズの社長も「5年後に新聞はどうなっているのか…」と意味深な発言をしていました。

本当に将来の新聞はどうなってしまうのでしょうか。

意欲の低下

ローマにて

評論家の宮崎哲弥氏の作品は一冊も読んだことはないのですが、彼は一日、7冊の本を読んでいるそうです。「わあ、これはすごいや」と思いました。私は一日3冊が限界でした。数ヶ月、いや2ヶ月ももたなかったと思います。若い頃なので、体力(視力)があったおかげでできましたが、今はとてもできません。

それでも、最近、数冊を並行して読んでいます。先月末に鳥居民「近衛文麿 『黙』して死す」(草思社)を読んだばかりです。

今、面白く読んでいるのは、ドナルド・キーン「渡辺崋山」(新潮社)、原信田実「謎解き 広重『江戸百』」(集英社新書)、田中優子「江戸を歩く」(集英社新書)、浜田和幸「ハゲタカが嗤った日」(集英社)、吉野裕子「ダルマの民俗学」(岩波新書)、そして、昨日、偶然、神保町の三省堂書店で平積みされていたのを見つけた加治将一「幕末 維新の暗号」(祥伝社)の6冊。これを一日で読むことはとてもできませんね。1ヶ月以上かかるでしょう。ともかく、感想についてはまた書きます。

「下流社会」などの著作がある三浦展氏は、最近の「下流」階級は、経済的な「下流」ではなくて、精神的な「下流」であると指摘しています。つまり、主体的に何かを達成しようという意欲が弱いというのです。下流意識のある人ほど、家に引きこもって、ゲームに耽溺し、友人も少ない。学習意欲どころか、コミュニケーション意欲、消費意欲、つまり、人生への意欲が乏しいというのです。

私にも古い友人がおりましたが、最近、「もう僕のことは構わないでくれ」と通告されました。彼は、人生に対して大変前向きで、何か事を成し遂げてやろうという意欲満々の男でしたが、大病をきっかけに、まさに、下流意識の塊になってしまいました。まさしく、コミュニケーション意欲も、生活意欲も、消費意欲もなくなってしまったのです。俗世間との交際を断ち切って、仙人のような生活を目指しているのかもしれません。

私のように、見たい映画があるわけではなく、読みたい本があるわけではなく、それまでは、渋々、人の話に調子を合わせていたのかもしれません。疲れてしまったのでしょう。

それにしても、残念な話です。

文語ブーム

文語文がブームだそうですね。

とはいえ、実際に文語文に接するとなると、教養がないとなかなかついていけません。

たまたま、人気、文語サイト「文語の苑」にある岡崎久彦氏による「蹇蹇録」の解説で、「嚼蝋の感なき能ず」という言葉を説明していますが、まず、漢字が読めません。

「嚼蝋(しゃくらふ)の感なき能(あたは)ず」と読み、「砂を噛むよりもその含蓄は深いものがある」ということだそうです。昔の教養人はこういう言葉がすっと出てきたのでしょうが、戦後教育を受けた人間にはまず太刀打ちできませんね。

何と言っても、パソコンでは、すっと漢字が出てきません。

とはいえ、志を持って、これから少しずつ勉強してみようかと思っています。

パソコンなどしている暇ないですね。

ちなみに「蹇蹇録」は…あ、これは説明するまでもありませんね。「易経」から採った言葉(「蹇蹇匪躬」=心身を労し、全力を尽して君主に仕える意)です。

お暇な方へ

大型連休の真っ最中ですね。
まさか、ネットにアクセスする人は少ないだろうと思っていましたが、予想通りでした。
家にこもってパソコンをしている暇があるなら、外の新鮮な空気を吸ってください。

さて、目下、izanamiさんという人のブログが非常に評判を呼んでいますね。

私も週刊誌で知って読んでみましたが、なかなか過激です。筆者は、韓国籍の若い女性で、4月から教職の職業についているようです。

どれくらい過激かと言いますと、例えば、

「北の工作員を引き渡せと要求するなら、侵略戦争の首謀者である日王を引き渡しなさい」
といった具合です。

日本で教育を受けた人間であるならば、「日王」という言葉そのものは聞いたことがありませんが、意味は想像できます。

また、レッドソックスに移籍した松坂投手については、「化けの皮が剥がれた。下り坂の投手を高給で買ったレッドソックスに見る目がなかった」
と言いたい放題です。

最初は若い女性に名を借りて、年配男性のインテリが日本批判をしているのかと思いましたが、どうやら本人のようです。

これだけ過激だと、注目度も相当大きいらしく1日で20万件以上アクセスがある日があるようです。1週間だと140万件。日本を代表する週刊誌より読者が多いのですから、その影響力は無視できません。

いやはや、すごい時代になったものです。

もっと怒れ!

損保保険会社大手6社による自動車保険などの保険金不払いが、2002年4月から05年6月にかけて、合計約38万件、約294億円に達したことが分かりました。

もっと、怒ってもいいのではないでしょうか。

大手6社とは、「東京海上日動」「損保ジャパン」「三井住友海上」「あいおい」「日本興亜」「ニッセイ同和」です。まだ、調査中の社もあり、さらにこれらの数字が増大するということで、呆れてしまいます。

朝日新聞に連載されている「あなたの安心」によると、テレビのCMで盛んに宣伝されている「誰でも入れる保険」に入って、入院しても給付金が支払われないという苦情が全国の消費者相談協会の窓口に寄せられているそうです。

例えば、心臓や目の病気になって入院した場合、原因が保険契約前の高血圧や糖尿病にあると判断されると、給付金が支払われないケースが多いというのです。

つまり、「誰でも入れる」からと言って「誰でもお金をもらえる」わけではないのです。

まさしく、誇大広告の極地。

しかし、冷静に考えてみれば、会社が誰にでもお金を払っていれば、遅かれ早かれ、お金がパンクして支払えず、倒産してしまうのは火をみるより明らかです。何も高いテレビCMを払ってまでして、善意に事業をしているわけではないのですね。しかも、はるばる海外から。あくまでも、商売商売、ぼろ儲けが目的なわけです。

騙されてはいけません。

 

さようなら ジョン君


ジョンが死んだ。とは言っても、ジョン・レノンの話ではありません。
アイリッシュ・セッターのことです。12年の生涯でした。自分のことを犬だとは思っていなかったようです。
散歩していて、他の犬に出くわすと、目を背けていました。それどころか、積極的に逃げていました。犬嫌い。何というか、厭世家でした。
それでいて、大の人間好きでした。たまに私が遊びに行くと、飛びかかってきて、千切れんばかりに尻尾を振ってくれました。
もう、最近では、4、5年会っていませんでしたが、めっきり歳を取って、白いものが目立ち、病を得て亡くなりました。人間の生老病死を地で行くような生涯でした。
それにしても、ドッグイヤーとはよく言ったものです。犬の一年は、人間の七年に相当すると聞いたことがあります。でも、あっけないですね。
私が飼っていた犬ではありませんが、今は何となく「ペットロス」状態です。
ジョン君の冥福をお祈りします。

努めて明るく前向きに

米国パーデュー大学などが最長12年間にわたって調査した結果によると、性格が穏やかな人の方が神経質な人よりも長生きするそうです。

同大学のムロザク准教授は「血圧を下げようと心掛ければ、心臓発作のリスクが減るように、性格を円くしようと考えれば、死を避けられる」などど面白いことを言っています。

心掛け一つで長寿が約束されるのなら、これほど安上がりのアンチエイジングもないですね。何があっても、「決して怒らず、いつも静かに笑っている」。努めて明るく前向きに過すしかないようです。

そういえば、「世の中に存在する悩みは大したことはない」という人がいました。

確かに人間ですから、悩みのない人はいないでしょう。嫁姑の問題、子供の非行、夫婦関係の危機、進学就職結婚問題、遺産相続、倒産転職、病苦、多重債務、容姿、疎外感、虐め、絶望、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦…

本人にとっては、地獄の苦しみでしょうが、ただ、健康で、明日の食べ物のことで心配することなく、雨露をしのぐ寝所を確保さえできれば、これほど幸せなことはない、ということをその人は言いたかったようです。

要するに、これらの四苦八苦の悩みは、そもそも人間に生まれてきたからには解決できないものなのです。

となると、悩まないのが一番なのです。

それでは、悩まないためには、どうしたらいいのでしょうか?

私は、一人のプロ野球の老監督のことを思い出しました。この人は、功なり名を遂げて既に鬼籍に入られた方ですが、四六時中、野球のことばかり考えていました。ゲーム、練習中はもちろん、夜の街に繰り出してグラスを傾けている間でも、話すことは野球のことばかり。まさに寝ても醒めても野球のことばかり考えていました。

1年365日、野球のことばかり、考えていたのでは、悩むことを考える暇はないでしょうね。もちろん、老監督も人間ですから、人並み、いやそれ以上に悩みはあった(存在)でしょうが、考えの中に悩むが入り込む隙がなかったのではないかと推測しているのです。

やはり、解決などできないのですから、底なし沼の泥に足を取られる前に、悩まないのが一番なのです。

私はそう考えています。

宣伝告知です

知人、先達、友人、先輩、後輩…の方々の告知です。

●このブログで何度も紹介したアンチエイジングの本を書かれた浜田和幸氏が、ラジオにご出演されます。

4月29日(日)午前7時から、文化放送で、竹村健一の「世相」でゲストとして、出演し、色々とアンチエイジングについて発言されるそうです。ご興味のある方は、ご一聴を。

●作家の加藤廣さんが、「信長の棺」「秀吉の枷」に続く「本能寺三部作」の完結篇、「明智左馬助の恋」(日本経済新聞社刊、1900円)を刊行されました。初版は5万部だそうです。こんな所に書かなくても、売れるでしょうが、既刊2部で既に50万部以上売れているそうです。

●狂言師の善竹十郎さんが6月に「日伊喜劇の祭典」の「いたち」にご出演されます。静岡、名古屋、東京、京都、大阪と巡回します。助成金が出ているようで、入場料は3500円と割安です。

以上

以前、このブログでも紹介した帯広畜産大学の哲学教授・杉田聡氏の「クルマを捨てて歩く」をやっと手に入れました。絶版になっていたので、市場以外からです。

杉田氏は、自宅から大学まで、片道25分という距離を歩いているそうですが、その程度なら、私も毎日歩いていました。私は通勤で片道40分は歩いていますから。

しかし、すごいのは、杉田氏は、歩きながら勉強してしまうことです。ジャン・ジャック・ルソーも歩きながら本を読んでいたそうですが、杉田氏は、3ヶ月間でイタリア語をマスターし、現地でボッタクリ・バーの客引きに捕まった時、イタリア語で応酬したそうです。また、「論語」も約2週間で読破したそうです。