笑うしかない明治から現在に至る贈収賄疑惑の数々=室伏哲郎著「実録 日本汚職史」

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 室伏哲郎著「実録 日本汚職史」(ちくま文庫、1988年2月23日初版)を読了すると、かなりの無力感に苛まれてしまい、落ち込みます。明治の近代化から始まった政治家と政商財閥との贈収賄汚職疑惑を総覧したノンフィクションです。今さら読むなんて遅すぎますが、古典的名著です。個人的に知らなかったことが多かったです。著者の室伏氏(1930~2009年)は「構造汚職」の造語を発案した作家としても知られています。

 この本を読むと、歴史上「偉人」と教え込まれた明治の元勲たちも、500以上の会社を設立して日本の資本主義を切り開いた貢献者・渋沢栄一も、早稲田大学を創設した大隈重信も、皆、みんな、汚職の疑惑まみれで、自分は何の歴史を学んできたのか、と疑心暗鬼になってしまいます。

 著者は第1章でこう書きます。

 クーデターによって政権を握った明治政府は、国民のどの階層にもしっかりした支持も基盤も持たなかった。だから、為政者たちは…天皇を神に祭り上げて…、国民を遮二無二「富国強兵」に追い立てたのである。「殖産興業」も彼らの合言葉であった。

 天皇制政府の産業奨励、資本主義の育成というのは、中央政府の吸い上げた富を少数の利権屋に与え、利権屋・財閥と政府高官が私腹を肥やすことであった。いわゆる政商型資本主義である。

 この後、著者は、明治5年の「山城屋事件」から昭和61年の撚糸工連汚職に至るまで、「これでもか」「これでもか」といった感じで疑惑汚職を並べて解説してくれます。

 私が知らなかった疑獄事件に、明治6年に明るみに出た「三谷屋事件」があります。三谷屋は、長州閥の陸軍に食い込んで暴利を貪った政商で、山縣有朋の妾の小遣いまで出していたといわれます。それが、三谷屋の手代・伊沢弥七が内緒でやった水油の思惑買いが大暴落して、莫大な借金を抱えてしまいます。三谷屋の失脚を狙った三井系商社による投げ売りが原因と言われています。

 落ち目の三谷家は、政府高官の入れ智慧に従って、日本橋、室町、京橋など市内目抜きの地所53カ所全てを見積もって5万円で三井組に提供することになります。ただし「10年後には全ての地所を無条件で返却する」という返り証文を付けてでした。

 ところが、10年経って三谷家が三井組から地所を返却してもらおうとしたところ、返り証文が見つからない。当時、三谷家の当主がまだ若いという理由で、返り証文を預かっていた姉婿の三谷斧三郎が放蕩の末に金に困り、それに付け込んだ三井組が密かにその返り証文を二束三文で買い取ったらしいのです。

 ということで、三谷家の「身から出た錆」とはいえ、世が世なら、今頃、銀座1丁目や日本橋の超・超一等地は、三井不動産ではなく、三谷財閥が開発していたことになります。となると、GHQ占領下時代に室町の三井ビルを根城に権勢を振るって「室町将軍」と呼ばれた政界の黒幕三浦義一氏も、三井財閥ではなく、三谷財閥を相手にしていたのかもしれません(笑)。

 このほか、面白かったのは(と、やけ気味に書きましょう)、出版社が県知事に賄賂を贈って教科書を採用してもらうように働きかけた明治35年の「教科書事件」、大正時代の売春汚職「松島遊郭疑獄」、放蕩の挙句に借金まみれになった元官僚が、桂太郎首相の娘婿の肩書を利用して内閣賞勲局総裁になり、賄賂を取って勲章を乱発した「売勲事件」(昭和3年)などを取り上げています。

 しかし、疑惑ですから、ほとんどの政治家や高級官僚は捕まらないで有耶無耶になってしまうんですよね。

 著者の室伏氏も書いています。

 三面記事を派手に賑わせる強盗、殺人、かっぱらい、あるいはつまみ食いなどという下層階級の犯罪は厳しく取り締まりを受けるが、中高所得層のホワイトカラー犯罪は厳格な摘発訴追を免れているーいわゆる資本主義社会における階級司法の弊害である。

 そうなんですよ。時の最高権力者が自分たちに都合の良い人間を最高検検事総長に選んだりすれば、汚職疑惑の摘発なんて世の中からなくなり、曖昧になるわけです。

 文庫の解説を書いた筑紫哲也氏も「本書を通読して驚かされるのは、恐ろしく似たような権力犯罪が明治以来現在まで繰り返されていることである。このことは、税金をいいように食い尽くされてきた納税者が、そのことに鈍感または寛容であり続けてきたことが連動している」とまで指摘しています。

 人間は歴史から何も学ばないし、同じ間違い、同じ罪を犯し続けます。まあ、笑うしかありませんね。悲劇というより、喜劇ですよ。

(引用文の一部で漢字に改めている箇所があります)

トイレットペーパーよ、お前もか。

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新型コロナウイルス騒動で世間はパニックってますねえ。

昨晩は、友人の川本君から「俺の住む所ではマスクどころか、トイレットペーパーまでも売り切れ。ミネラルウオーターもお米も品薄だよ」とのメールが飛び込んで来ました。

 川本君は東京の高級住宅街の一戸建てに住んでいます。

 「そこだけでしょ?小生の住む所は、そんな下品な人はいませんよ」と皮肉で応えておきました。本当は、私の住むところは、都心から1時間半もかかる田舎の町で、チンピラがいて、マナーの悪い人間が実に多いのが現状です。

 そしたら、「 阿呆なおっちゃんやな!トイレットペーパーの売り切れは、テレビでもドンドンやってるわ。週末はパニック買いになるかもよ。おぬしの住んでる所は、感染者が異様に少なすぎる。しっかり検査しているのか?感染者がいるのになかったことにしてるんじゃないか?とにかく、何も知らないなんて、ジャーナリスト失格やな」とまで罵倒するのでした。

 まあ、彼は大袈裟でせっかちで、性格に問題があるところが多いので、話半分に聞いておりました。

Xスーパーの棚はこの通り

 しかし、「ジャーナリスト失格」とまで罵倒、誹謗、讒謗されれば、黙っていられません。

 今朝、自宅から近いスーパーとドラッグストアに行ってみました。

 そしたら、写真の通り。マスクもトイレットペーパーも売り切れ。「入荷の見込みなし」とは何じゃいな?

 世間には悪党がいて、買い占めて、高額でネットで売りさばいている被疑者もいますからね。奴らは重罪にすべきです。

 こんなことが起きたのは「マスクとトイレットペーパーの原料は同じ」だの「トイレットペーパーは中国産だから、輸入が止まる」といったデマをSNSなどで拡散する輩が横行していることです。そして、そのデマを信じ込んでしまう浅はかな輩もその数百万倍いることです。

 何よりも、「自分や自分の家族だけが助かればいい」という自己中心的な人間が増殖したという証左でしょう。

 実際は、トイレットペーパーの原料は国産や北米産のパルプで、マスクの原料は不織布で全く違うこと。昨年1年間のトイレットペーパーの中国からの輸入は、全体のわずか2.5%に過ぎず、大勢にを影響がないことを知れば、パニックならずに済むはずです。

 1970年代のオイルショックで、トイレットペーパーが店頭から消える事件がありましたが、考えてみれば、半世紀近い昔のことで、実際に知っている人は還暦以上の年代で、今生きている中年の人までほとんどは実際に知らないんですよね。当時もデマからパニックになりましたが、「人間は歴史から何も学習しない」ということがよく分かります。

ドラッグストアもこの通り。他人のことなど知ったことか!

 そう言えば、昨日は突然、安倍首相が3月2日(月)から全国の小中高校を休校せよ、という要請をしましたが、今朝の新聞を読むと、安倍首相がほぼ独断で決定したようですね。自民党の岸田政調会長まで「社会全体で突然のことで、唐突感は否めない」と苦言を呈していました。勿論、与党の公明党にも全く相談がなかったようです。

 面白いことに、と言ってはいけないでしょうが、気骨がある自治体もあり、安倍首相によるこの突然の要請に反旗を翻し、異議を唱えているのです。偉いので具体名を挙げますが、群馬、栃木、兵庫、岡山、島根、沖縄の各県です。政府の要請にもかかわらず、各教育委員会は、「休校しない」判断をしました。

 新型コロナウイルスといっても、80%は軽症だといいます。回復する患者も多いのです。むしろ、毎年、3000人以上の死者が出るインフルエンザの方が怖いはずです。「今日も〇〇県で新型コロナウイルスの感染者が出ました」とニュースになっても、「今日も△△県でインフルエンザの死者が出ました」とはニュースにしません。

 メディアの報道姿勢も疑うべきです。

「全校休校」でパートの保護者は収入減、どうしてくれるの?

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 新型コロナウイルス対策として、安倍晋三首相は27日(木)の午後6時半になって急に、私立を含め全国全ての小中学校、高校、特別支援学校に、3月2日(月)から春休みに入るまで臨時休校とするよう要請しました。

 教育現場は大混乱。6時半なんて授業が終わっている学校が多く、先生方は夜のニュースを見て初めて知った人がほとんど。「卒業式はどうする?」「期末試験はどうする?」などとてんてこ舞いのようです。教育現場を知らない人が要請しているわけですからね。

 私もかつてお世話になったことがある北海道の帯広厚生病院では、職員の2割が出勤できず、予約以外の外来診療を停止したことがニュースになっていました。低学年の子どもを持つ職員は、家で面倒見なくてはいけません。教育現場だけでなく、色んな所に波及するわけです。

 安倍首相の要請は、小中高校だけで、保育園まで含まれていないのですが、肝心の保育士さんが低学年の子どもさんを抱えて出勤できず、園長さんは「スタッフが足りない」と悲鳴をあげています。

 「全校休校」は、一強多弱の独裁政権だからこそできる要請です。

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 ラジオを聴いていたら、批判が多い中、逆に、歓迎する人もいました。匿名の校長先生で、こういった非常事態が起きた場合、大抵、政府は教育委員会に丸投げします。教育委員会は、これを各学校に判断を丸投げします。となると、最終的な責任は校長となり、いつも保護者から突き上げられるのは校長になります。今回は、首相が責任を取ると言っているから助かるというのです。

 しかし、どう見ても、安倍さんは責任を取るタイプですかねえ?モリカケ問題、桜を見る会事件等見ても、官僚や取り巻き連中の忖度と、「私人である」妻に支えられ、真摯に反省しているだけです。しかも、政治家が悪いことをしても優遇して起訴を認めない人を最高検検事総長に指名しようと画策して、政権安泰を目論んでいます。

 本来、感染拡大防止を最大目的としてこのような措置に至ったんでしょうけど、またラジオを聴いていたら、「ウチの中学生の娘は、友達とディズニーランドに行くって言ってましたよ」というリスナーもいました。学校なら集団感染するけど、遊園地なら集団感染しない、なんてことは絶対にないはずです。(あらま! これを書いているたった今、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーが2月29日から3月15日まで臨時休園するというニュースが入ってきました )

 今回のウイルス騒動で経済的損失を蒙った中小企業などに対して、政府は緊急救済措置を取る方針のようですが、投入されるのは国民の税金ですからね。休まざるを得ないパートの保護者は収入減になることでしょう。政府は、パートさんまで面倒は見ないことでしょう。ですから、納税者は、お笑い番組ばかり見ていないで、政府の方針にもっと関心を持つべきです。

 「全校休校」要請は、クルーズ船処理で失敗した政府の汚名返上策どころか、恥の上塗りになるのではないかと危惧しています。感染拡大は学校だけで起きるわけではありませんからね。学校に行けない、遊園地にも行けない中高生の不満が溜まらないことを祈るばかりです。

新型コロナウイルスの感染拡大は、既に心理戦では?

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安倍晋三首相は昨日の26日になって急に、新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、全国的なスポーツ・文化イベントを今後2週間は中止や延期、規模縮小するよう要請しました。

 おかげで、全国の国立博物館は閉鎖されるし、おまけに、国立劇場、国立能楽堂、国立文楽劇場、それに庶民が楽しみにしていた国立演芸場まで公演を中止すると、昨晩遅く、国立劇場チケットセンターからメールが送られてきました。ハギウダ文科相からの通達なんだそうで、中止する対象は令和2年2月28日(金)から3月15日(日)までの公演。チケットは払い戻しするとか。

 日本はまるで戒厳令下のようです。学級閉鎖ではなくて、国家閉鎖ですね。

 既に、全国の卒業式と入学式が縮小されたり、中止されたり、サッカーのJリーグも延期。プロ野球のオープン戦は無観客試合に決定。恐らく、このままでは3月8日からの大相撲三月(大阪)場所も中止されるんじゃないでしょうか。無観客試合もあり得るでしょうが、これじゃ、午前9時から始まる誰も見ていない序の口の取り組みになってしまいますね。

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 個人的な話では、半年前から決めていた高校の同窓会が3月14日(土)に都内であるのですが、加藤幹事長が「どうそうかい?」と昨晩遅くメールを送って来ました。(親父ギャグでした。失礼!)

 何しろ、飛行機を使って遠方からわざわざ参加してくれる有志が2人もいるので、幹事長としても気が気でないのです。

 幹事会に入っている私は「騒ぎ過ぎだと思います。政府による同調圧力に屈することはない。予定通り開催しましょう」と応えておきましたが、神様ではないので、先のことは誰も予測できないことは確かです。

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 感染病の世界的な大流行のことをパンデミックといいますが、世界史で初めて記されたのが古代ギリシャの歴史家ツキディデスの「歴史」なんだそうです。同書は、ツキディデス自身も将軍として従軍した紀元前5世紀のペロポネソス戦争が記述されていますが、同戦争中に、エジプト、リビアなどで流行していた疫病(天然痘らしい)がアテネでも発生し、市民の約6分の1が病死したことなどが描かれています。

 国立感染症研究所によると、パンデミックが科学的に証明されているのは1900年頃からだそうです。その代表例は、第一次世界大戦中に大流行した「スペイン風邪(インフルエンザ)」(1918~19年)です。全世界で感染者5億人で、4000万人~1億人が死亡したと言われ、 日本では約2300万人の患者と約38万人(45万人説も)の死亡者が出たといいます。

 亡くなった人の中には、劇作家で演出家の島村抱月がおり、彼が立ち上げた芸術座の看板女優だった松井須磨子が、後追い自殺を遂げるという悲劇を生んでいます。また、東京駅などを設計した著名な建築家辰野金吾も感染し、64歳で亡くなっています。

 海外では、ドイツの政治学者マックス・ウエーバー、フランスの詩人アポリネール、オーストリアの画家クリムトとエゴン・シーレまで亡くなっています。

 まあ、ネガティブな話を書いてしまいましたが、デマには振り回されずに、正しく怖がる(?)しかありません。もはや心理戦に入っており、株式相場がケインズの言う美人コンテストみたいなものだったら、大衆が信じているか、そう何となく思っている先行き不透明の不安感から大幅な下落が続いています。

 観光産業も痛手が続き、世界的な不況も囁かれています。はっきり言って、打開策は、もはや、ウイルスの収束と終息しかないですね。

正しく怖れよ? 新型肺炎

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 後の世に語り継がれるであろう「新型コロナウイルス騒動」は、ここまで世界的に拡散するとは、思いも寄りませんでしたね。最初にニュースになった頃、テレビに出てきて、「ヒトからヒトには感染しません」と見栄を切っていたお医者さんは、今は何処に行ったのでしょうか?

 とにかく、メディアは大騒ぎです。人を宣撫して、たぶらかして、モノを買わせるのがテレビの重要なお仕事なんでしょうが、騒ぎ過ぎです。当局の言う「正しく怖れましょう」って、どういうこと? これでは、パニックにならない方がおかしいくらいです。こんな時期こそ、個人の見識と良識と教養と鑑識眼と世間知が試されます。

 冷静になりましょう。

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 とはいえ、現実は見つめなければなりません。最近の報道は過剰なので、私自身の信用度は7割ぐらいに抑えています。残りの3割は、マスコミ業界で言うところの「ウラを取る」ことで、情報の精度を高めることにしています。

 昨日は、大手代理店の社員が新型コロナウイルスで陽性と診断されたことから、東京の本社ビルに勤務する同社グループの社員全約5000人に対して、当面、在宅勤務とすることを決めた、とのニュースがあったので、今朝確かめてみました。

 皆様も御存知のA氏です。やはり、本当に「自宅待機」でお仕事されていました。通勤地獄に遭うことがないので、うらやましいと思ったら、「雑談する相手がいなく、緊張感がない」とか。あらま、贅沢な悩みだこと(笑)。

 何しろ世界的な大会社ですから、自宅で「テレビ会議」が何度か行われるようです。「それって、監視されているんでしょ!?」と聞いたところ、「まあ、悪く言えばそうかもしれませんが、良く言えば安否確認です」との答え。忠誠心が違います。

 私のような小さな会社は、テレビ会議なんて無理な話ですが、世の中、どんどんテレワークの時代に移行しているんですね。例のクルーズ船 「ダイヤモンド・プリンセス」 号での集団感染で、自治体職員や検疫官までも感染したため、霞が関の官庁や地方自治体でも一部テレワークに切り替えているようです。そんなものは、「未来社会」の話で、随分先のことだと思っていたら、もう時代が追い付いてしまっていました。

 一方、日本政府のウイルス対策は後手後手に回っているようです。今朝の新聞では、「ダイヤモンド・プリンセス」 号に乗船していて陰性で解放された人の投書が載っていましたが、軟禁中は「政府からの説明はほとんどなかった」と暴露していました。

 国会では、厚労相が「対策は万全であります」と自信満々に答弁してましたが、何か怪しくなりました。政府の危機管理は果たして大丈夫なんでしょうか?

 人は危機の時こそ、真価が問われるのではないでしょうか。

明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは

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 新型コロナウイルスの影響で、さらに自粛ムードが広がり、世間では3連休だというのに身動きできない状況です。

 新型コロナウイルスに緊急対応した医師や看護師に対して、「バイ菌」扱いしたり、いじめをしたりする事案が各地で頻発しているらしく、日ごろ、「日本民族は礼儀正しく優秀だ」「日本人は素晴らしい」と歓呼している人も、知らないふりをして声を潜めています。

 さりはさりとて、今から44年前の1976年2月に起きたロッキード事件関係の本を読んでいたら、ロッキード社から秘密工作費21億円を受け取ったとして脱税などで起訴された児玉誉士夫氏の東京都世田谷区の住所が番地まで出ていました。

 たまたまその近くの豪邸にお住まいの深沢令夫人と面識があるので、「散歩のついでに、旧児玉邸が現在どうなっているか調べてください」と探訪要請したところ、快く引き受けてくださいました。

 令夫人のことですから、「写真を撮影するのは憚れました」ということで、残念ながら、現場写真はありませんが、どうやら、現在は高級マンションになっているとのことでした。確か、ロッキード事件発覚後の翌月に、児玉邸にセスナ機が自爆特攻した事件があり、2階の1部が損傷しただけだったので、大豪邸だったのでしょう。やはり、跡の敷地に高級マンションが建つほど広大な敷地だったんですね。

 そんな話を大分にお住まいの物知りの三浦先生に話したところ、「児玉さんの御子息は、何をされたかご存知ですか? 赤坂方面の放送局の重役まで務められましたよ。それより、あの石原莞爾の孫はその放送局の会長までやってますよ。作家の息子とはレベルが違います。世の中の人は何も知らないでしょうけどね」と仰るではありませんか。

 あらま。私も「世の中の人」ですから、何も知りませんでした。調べてみたら、フィクサー児玉誉士夫氏の御子息である児玉守弘氏は、TBSの常務取締役や関連会社の役員を務めた後、日音の相談役になったとか。満州事変を画策した石原莞爾の孫の石原俊爾(としちか)氏はTBSの社長~会長を歴任されてますね。

作家の息子とは、昨年、フジテレビの社長に就任した遠藤周作の御子息遠藤龍之介氏のことでしょうかねえ?

 最後に今日はこれだけは書いておきたい。「桜を見る会」事件のことです。

 報道に接する限り、桜を見る会の招待者は、特別な功績や功労がなくても、安倍首相の後援会の関係者ならフリーパスで、内閣府もチェックせずにそのまま通っていたことが明らかになりました。これでは、国民の税金を首相が「私物化」したことになります。花見会も高級ホテルでの前夜祭も、やりたければ個人のポケットマネーでやれば、納税者から誰も文句は出ないはずです。

 自分の選挙民を優遇すれば、「偉い先生」として、国会議員に当選するのは当たり前です。しかも、脱法的な手段で国民の代表として居座るなら言語道断で、民主主義の危機です。

  明日ありと思う心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは

 これは、浄土真宗の開祖親鸞が9歳のときに出家する際に読んだ歌とされます。

 飛躍して読めば、今の「桜を見る会」の騒動に一石投げかけるようにも読めます。

 恐らく、時の最高権力者はこの歌のことはご存知のことでしょうが、「驕れる者久しからず」ことを肝に銘じてもらいたいものです。

銀座さとうの「丸メンチカツバーガー」は花丸=「渓流斎日乗15周年記念会」は中止が決定

 何ですかねえ。 新型肺炎の感染拡大を理由 に「今年の東京オリンピックは中止」なんて、ガサネタやデマを流す不逞の輩がいるかと思っていたら、19日にロンドン市長選の主要2候補が、東京大会中止を見込んでロンドンでの代替開催の誘致に名乗りを上げたというんですからね。 「ロンドンでは五輪を2012年にやっていて、施設も残ってるから大丈夫」というわけですが、火事場泥棒的利権の臭いがプンプンしてきます。

 それにしても、ここにきて、マラソンやゴルフなどのスポーツや音楽公演や講習会などのイベントの中止や延期のニュースがボンボン出てきています。一気に自粛ムードが広がり、この期に及んで開催を強行しようものなら、「非国民」扱いされかねません。

 このブログ《渓流斎日乗》を開始したのは2005年3月15日ですが、来月、ちょうど15周年の記念日を迎えます。西方浄土方面から「都内の一流ホテルを貸し切って、何か記念会をやったらどうですか?人が集まらなかったら赤字が出るでしょうが、100万円か200万円程度で済みますから大丈夫ですよ」なぞと他人事のように(笑)薦める方もおられました。

 でも、この御時勢ではねえ。感染拡大に協力したくはないし、「渓流斎ブログ15周年記念会」は、中止せざるを得ませんね。延期ではなく、中止に決めました。

 さて、また当たり障りのないグルメの話。

 東京・吉祥寺の本店では長い長い行列が出来るという国産黒毛和牛専門店「さとう」。お肉だけでなく、コロッケやメンチカツやステーキやカレーなども店で食べられたり販売されたりしています。その2号店が銀座1丁目にあるというので、銀座は私の庭ですから、昼休みに行って来ました。

 お目当ては、銀座店しか売っていないという「丸メンチカツバーガー」。400円と、まあまあの値段ですが、会社の同僚が美味そうに、しかも自慢気に、一つ一つ講釈しながら一人で食べていたので、私も買ってきました。

 まあ何と言いましょうか。確かに旨い。優しい味、といいますか、丁寧に作られた心がこもった味といいましょうか。舶来のチェーン店のハンバーガーのビッグ何とか(390円)より少し高いですが、これなら三つぐらい食べられそうです(笑)。他に、ヒレカツバーガー(500円)、ビーフカツバーガー(600円)などもあります。→「銀座さとう

 つまらない政治家や官僚の醜聞で腹を立てるより、美味いモンを食べて腹を満たした方が、健康にも精神衛生にも良いということであります。

日本はやはり官尊民卑なのか=佐川さんは今何をしているんでしょうか?

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 相変わらず、テレビでは 新型コロナウイルス感染拡大のニュースばかりやっています。そして、海外ではどうやら日本は中国に次ぐ「感染大国」とみなされているようです。 イタリアの高級ファッションブランド「プラダ」が18日付で、 日本で開催する予定だったファッションショーを延期すると発表したので、3月か4月の話かと思ったら、何と開催日は5月21日なんですってね。そこまで、終息していないという会社の判断なのでしょう。

 これが過剰反応なのか、至極真っ当な判断なのか、今は分かりませんが、海外ではかなり警戒されているという証左です。

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 さて、 19日にはいわゆる森友学園問題で、大阪地裁で判決がありました。詐欺罪などに問われた前理事長籠池泰典被告(67)に懲役5年 、妻諄子被告(63)に懲役3年、執行猶予5年というものでした。 刑の軽重について素人が口を挟むのはもってのほかかもしれませんが、そもそもこの事件の原点は、国家公務員が安倍首相に忖度したのが始まりなのです。それなのに 虚偽公文書作成容疑などで告発された佐川宣寿・財務省理財局長(当時)はじめ、幹部・職員38人は全員不起訴となっているんですからね。忖度した佐川さん(62)は功労が讃えられて第48代国税庁長官に栄進されましたが、一度も記者会見せず、逃げるように隠れるようにして2年前に退官されたことは今でも国民は忘れていません。籠池被告が「これは国策捜査だ」と叫ぶのは理解できます。

  また、 昨年4月に東京・池袋で乗用車が暴走し母子などが死傷した事故がありましたが、運転していた旧通産省工業技術院の飯塚幸三・元院長(88)は、高級官僚だったせいなのか、留置されることなく、書類送検で終わってます。これでは、何の落ち度もない亡くなった若い母親と幼子は浮かばれません。

 このように特権階級へのあからさまな情状酌量を見ていると、海外メディアから「日本の高級官僚は、犯罪を犯しても絶対に捕まらない」と批判されても、抗弁できませんね。

黒川弘務氏の最高検検事総長就任を阻止しよう

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黒川弘務氏の最高検検事総長就任問題は、新聞の投書になるほど国民的関心が深まってきました。投書は、黒川氏に対して、「今夏に最高検検事総長就任の打診があったら辞退したらどうですか」と勧告するものでしたが、同感です。素晴らしいことです。先日、山本祐司著「東京地検特捜部」(角川文庫)を読了して、その意を強くしました。

 この本には、明治の日糖事件から、時の最高権力者だった田中角栄元首相が逮捕された昭和のロッキード事件まで政財界による疑獄事件を取り上げています。その中で、私自身が不勉強なため、知らなかった疑獄事件がありました。昭和43年(1968年)に発覚した日通事件です。運輸会社最大手の日本通運が、独占輸送をしている米麦などの政府食糧について、社会党の大倉精一(元日通労組委員長)と自民党の池田正之輔両衆院議員に対し、議会発言をしないよう働きかける見返りとして、日通が大倉に200万円、池田には300万円の現金を渡したとされる事件です。

料亭「花蝶」(今は新橋に近い東銀座にあり。当時もここにあったか不明。だって、高くて入れないんだもん!)

 この一連の日通事件の中に「花蝶事件」があります。これは、日通事件の渦中の68年4月19日に、新橋の料亭「花蝶」で井本台吉・最高検検事総長と自民党幹事長の福田赳夫(後の首相)と容疑者の池田正之輔代議士とが会食していたというのです。同年9月になって「赤旗」と「財界展望」が料亭の領収書を添えてすっぱ抜きました。井本検事総長は、池田代議士の逮捕には強硬に反対した人で、後に「この会食は日通事件とは関係がない。検事総長に就任したときに池田正之輔が祝いの宴を開いてくれたので、そのお返しとして一席設けただけだ」と弁明しています。 井本検事総長と福田幹事長は、ともに群馬県出身で、一高~東大の同級生です。

 「李下に冠を正さず」という諺がありますが、これでは、どうも検察のトップが政界疑獄を握り潰そうとしたかのような印象を強烈に残しています。逆に言えば、検察トップである最高検検事総長が「NO」と言えば、政治家の逮捕に手加減できる構図が浮かび上がります。

料亭「花蝶」(1968年当時の花蝶の流れを汲む料亭なのかどうか不明だが、新橋演舞場が目と鼻の先にあるので、恐らく、ここで検事総長と疑獄被疑者が会談したことでしょう)

 それを現代に当てはめれば、黒川弘務氏が安倍政権の強力な後押しで、最高検検事総長に就任すれば、安倍政権のスキャンダルを潰し、自民党員の選挙違反を曖昧にし、捜査に手加減をすることができることが容易に想像できるわけです。

 検察の世界では「被害者のいない犯罪」と呼ばれる三つの犯罪があるといいます。「汚職」「脱税」「選挙違反」です。

 先ほどの山本祐司著「東京地検特捜部」には、昭電疑獄から日通事件まで、特捜の鬼検事と言われた河井信太郎氏の残した言葉が掲載されています。

 「汚職、脱税、選挙違反などが蔓延すれば、法無視の荒廃した風潮を招く。やがて社会は自壊作用を起こし、国家は衰亡する」

 これは、1968年6月に著者のインタビューで語ったものですが、半世紀経った今、同じような状況になったということです。

 ロッキード事件を担当した検察OBも「世論の後押しで勇気づけられた」と後に語ったそうです。50年後の我々も、世論を高めて、黒川弘務氏の最高検検事総長就任を阻止しなければいけません。

お経は英訳の方が分かりやすい

 最近、仏教づいておりまして、先日は、仏教用語を英語で何と言うか、通訳のための研修会に参加してきました。

 講師は、浄土真宗本願寺派超勝寺の大來尚順さんという30歳代の若い御住職。米カリフォルニア州にある仏教大学院で修士号も修めた学者さんでもあり、翻訳家でもあり、既に「超カンタン英語で仏教がよくわかる」(扶桑社新書)など数冊、本も出版されてます。

 仏教に関する知識は、当然のことながら、かなり豊富ですが、私自身は、ここ最近は特に仏教書に目を通しているので、それほど驚くほどではありませんでした。むしろ、私の方が雑学的知識というか、宗派の派閥とか、アングラ情報に関しては多く持っている気がしました。…偉そうですね(笑)。

 仏教とは何かー? 会場から「哲学」だの「生きる指針」だのといった意見が出て、大來師は「危ないもの、と言われてなくてよかったです」と笑いを誘っておりましたが、大來師によれば、仏教とは、人が仏(覚者)になる教えだということでした。 日本ではもともと「仏道」と言われ、「仏教」となったのは、1893年(明治26年)のシカゴ万国宗教会議(鈴木大拙や釈宗演らも参加)の後からだといいます。 となると、仏教は、キリスト教と同じ宗教かと言えば、ちょっと違う感じがしました。

 仏様(釈迦)というのは人であり、宇宙を創った創造神でもなく、人を裁く審判神でもなく、超能力を持った至上神でもないからです。

 大來師の説明では、キリスト教が神と人との契約(contract)という二元性(Dualism)なら、仏教は一元性(Non-Dualism)である、といいます。そう説明すれば欧米人は分かるといいます。

 仏教では、人が真理に目覚めるためには「悟り」を開かなければなりません。その悟りとは「四聖諦」(「四諦」)を認識することです。四諦とは、すなわち「苦諦」(世の中は苦に満ちている)「集諦」(その苦には原因がある)「滅諦」(苦しみを和らげ、止めることができる)「道諦」(その苦を止める方法がある)の四つのことで、ざっくばらんに言えば、「自分の思い通りにならないことが人生だ」ということをしっかり頭に叩き込むことなんですね。つまり、それが悟りです。人が怒りに駆られるということは、大抵、自分の思い通りにできなかったり、他者が言うことを聞かなかったり、他者から損害や迷惑をかけられたりすることですからね。

平和観音(宇都宮市)

 その四諦を認識した上で、それらの不満足を解決していく方法が「八正道」だといいます。

 八正道とは、英語でEightfold Noble Path と訳され、その八つとは「正見」(Right View)「正思惟」(Right Thought)「正語」(Right Speech)「正業」(Right Conduct)「正命」(Right Livelihood)「正精進」(Right Effort)「正念」(Right Mindfulness)「正定」(Right Meditation/ Concentration)のことです。どうも、漢字の日本語よりも、英語の方が理解しやすいことが分かりますね。

 同氏は、得意の仏教用語の英訳についても解説してくれ、例えば、「悟り」には、Enlightenment, Awakening, Realization といった3通りの翻訳ができ、それぞれ「ひらめき」「能動的」「受動的」と意味の違いがあることを教えてくれました。

 「諸行無常」は、Every thing is changing で十分に通じるということでした。

 このほか、「煩悩」は、昔はWorldly sins などと訳されたりしましたが、ニュアンスがきつくあまり通じないので、最近では、 仏教本来の意味に近いSelf-centered Calculation mind(どこまでも自己中心にして計算する心)や、単にDesire(欲望)、 Defilement(汚れ)などと訳されるようです。sin(罪)は、信心深い欧米人の感覚からすると、飛び上がるほど強烈な意味になるらしいですね。そこら辺は日本人には分かりません。

仏教の経典はもともとインド古語のパーリー語で書かれ、唐の玄奘三蔵法師らによって苦難の末、中国に持ち帰って漢訳され、日本に輸入されました。漢訳は、意味のない音訳が多く、例えば、「南無」はNamo の音訳で、本来は「帰依する」take refuge inという意味です。南無という言葉そのものに、帰依の意味はありません。

 となると、お経は漢訳よりも、英語の翻訳の方が分かりやすかもしれません。いや、実際、英訳で読んだ方が意味はよく分かりますよ。英訳のお経は、市販されたり、国際ホテルに置いてあったりします。皆さんもチャレンジしてみては?