「トランボ」は★★★★★ ダイアン・レインは良かった

哈爾濱の朝食はトウモロコシと牛乳 Copyright par Admiral Matsuocha

7月17日付の渓流斎ブログ「『父・伊藤律』と映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』」でも少し触れましたが、その話題の映画「トランボ」を観てきました。

いやあ、なかなか良かったです。最後の方で、こちらは少しウルルと来てしまっているのに、出口付近で、「ぴあ」と称する人たちに囲まれて、「『トランボ』の感想を聞いています!」と迫ってくるではありませんか。

私は、帽子を深く被って一人で感動に浸っていましたので、すぐにその場から逃れたかったのですが、「せめて、点数だけでも」と、まるで、テレビリポーター(死語)のように縋ってくるので、「ひ、ひ、ひゃくてんです」と答えておきました(笑)。

 中国最北観光地五大連池 アヒルも元気な朝 Copyright par Admiral Matsuocha

まあ、それだけ、いい映画だったということです。

私が「手引き」として信頼している日本経済新聞金曜日夕刊最終面の映画評欄では、「トランボ」は星が四つでしたので、「そこまで名作じゃないのかな?」とあまり期待しないで観たのですが、逆に、期待しなかったおかげで、なかなか感動的な映画でした。

同じ時間帯に近現代史関係のセミナーが、中野であったので、どちらに行こうか、悩むほど迷ったのですが、結局映画にしたのが正解でした。

映画館はまた、私の大嫌いな狭過ぎる東京・日比谷のシャンテシネマズでしかやっておらず、仕方がないので、また、ネットでチケットで予約しようとしたところ「残席わずか」と表示されていたので、大慌てで、購入して行きました。映画館に着くとやはり、長蛇の列で、満員御礼でした。
ロバは良き友 Copyright par Admiral Matsuocha

素晴らしい映画だったので、内容や感想や批評めいたことは、他で書くことにしました。ボツになったら、という条件で、いつか渓流斎ブログに掲載しませう(笑)。

ですから、他では書けないことを一つだけ、ここに書くことにします。

1940年代後半からの赤狩り旋風で、ハリウッドから追放された実在の映画関係者を描いた作品です。

主人公は、「ローマの休日」を匿名で脚本を執筆して、アカデミー賞原案賞を受賞するダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)です。

このトランボを陰日向で支える奥さんクレオ役の女優さん、「何処かで見たことあるなあ。いい女優さんだなあ」と思いましたが、名前が思い出せません。

そこで、後で、帰りの電車の中で、スマホで映画のHPを見て調べたところ、何とダイアン・レインだったのですね。私はかつて、横浜で、今村君と観たコッポラ監督の「コットン・クラブ」で、18~19歳の彼女が主演していたことを鮮明に覚えています。若い頃の彼女は、日本でも大人気で、何本かCMに引っ張りだこでした。

でも、そのことは置いといて、最近読んだ「日活不良監督伝 だんびら一代 藤浦敦」(洋泉社)の最初の方に、このダイアン・レインが出てくるのです。彼女は、コメントにも頂いた”伴野朗監督作品”映画「落陽」の主演女優だったのです。

「不良監督」といいますか、この映画の総合プロデューサーだった藤浦敦さんは、「落陽」に主演したダイアン・レインのエージェントに100万ドル支払ったのに、ダイアン個人に直接聞いたら、ギャラは35万ドル(当時のレートで5000万円)しかなかったことを暴露していたのです。これで、エージェントが65%も手数料と称して抜く映画界の実態が分かりますねえ。

この話を読んでいたので、トランボの奥さんクレオ役がダイアン・レインだと分かって、何という「偶然の一致」だと思いました。もっとも、本当は、そんなものは存在せず、全て「必然」なのだと確信していますが。

「トランボ」に出演したダイアン・レインはこの時、50歳。とても、いい年の取り方をしていると思いました。「落陽」に主演した後の彼女の人生は知る由もありませんし、あまりそこまで興味もありませんが、映画界の荒波にもまれて、内面で知性と教養を磨いたという感じでした。

若き永六輔

Italie

先日亡くなった大橋巨泉の奥さんは、彼の盟友だった永六輔が亡くなったことを、「ショックが大きすぎる」ということで、知らせなかったそうですね。

お互い、テレビの草創期に放送作家として鎬を削った仲でした。

その永六輔さんは晩年は、人格者として崇められておりましたが、若い頃はかなり傲岸不遜だったようです。そりゃそうでしょう。「上を向いて歩こう」「明日がある」「こんにちは赤ちゃん」等々、大ヒットした作詞家として飛ぶ鳥を落とす勢いです。印税でがっぽり桁違いのお金が入ってきて生活に全く困らないので若い頃は、我が儘言いたい放題だったのかもしれません。

その永六輔さんが若き頃、日活撮影所に行って、夜中の三時まで、ああだ、こうだ、と指図をしまくったそうです。当然、あいつは何様だ。生意気な奴だとスタッフの反感を買い、永さんが一服するために、外に出た瞬間、何者かに暗幕を頭から被せられて、殴る蹴るの暴行でボコボコにされたそうです。

結局、犯人は、分からず仕舞い。永さんも警察に被害届けを出したかどうか分かりません。そんな武勇伝があったこと事態、闇から闇に葬られてしまうものですが、元日活の映画監督藤浦敦さんは「だんびら一代」の中でしっかり、証言しているのですからですね。

この本にはエピソードが満載です。藤浦敦さんの祖父周吉が一代で東京中央青果を興して、東京市中の台所の野菜果物の源流、根っ子である卸売業界を牛耳って巨万の富を築いたことは、以前、この渓流斎ブログにも書きました。

金がある所は、匂いで分かるんでしょうね。遥々異国から、せびり、いや間違い、支援を求める外国人もいました。中国革命の父孫文もその一人です。

周吉の息子富太郎も表に出ないようにしたので、無名でしたが、政財界官界学界それでええん界にまで莫大な支援をします。いちいち個人名は挙げませんが、右翼暴力団関係は勿論、左翼は共産党までポンとお金を出していたことを、富太郎の息子である藤浦敦さんは暴露しています。

日本共産党の某幹部が自宅に来て、「赤旗まつり」のチケットを富太郎にまとめ買いしてもらって嬉々としている姿を藤浦敦さんは、この本の中で活写してました。

一番驚いたのは、日活の株式の40%も藤浦家が握っていたということです。ですから、伴野朗原作監督作品の「落陽」の興行面で25億円の赤字を出しても「俺の金を自分で使って何が悪い?」と開き直っていられるのです。

日活倒産の原因を「落陽」興行の失敗として押し付けられた藤浦敦さんは「『落陽』の損失など全体の10%程度。ゴルフ場やホテルなど本業以外の経営多角化が倒産の原因だ」と、理路整然と説明するのです。

私が少年の頃、映画の世界で、誰が一番偉いのか、と不思議に思っていました。莫大なギャラが貰える主演俳優かな、と思っていたら、もう30も過ぎた頃に「渓流斎くんは甘いね。『黒澤明監督作品』というぐらいだから、監督が一番偉いんだよ。作品は監督のものだからね」と言われて、それ以来、監督が一番凄いと思い、偉そうに、溝口だの、衣笠だのと言っていました。

そしたら、この本を読んだら、小説家あがりの伴野朗監督なんて、パシリ以下のそのまた下扱い。彼は、下積みの助監督の経験もないから、基本のキも知らない。藤浦敦ゼネラルプロデューサーは、伴野監督に大金を握らせて、途中から、もう撮影現場に来なくていいよ、と指示したそうです。

「伴野は頭のいい奴だから、一切口を割らなかったよ。小説家は小説を書いていればいいんだよ」と、口止めした藤浦敦さんは涼しい顔です。

クレジットの「伴野朗監督」だけで、宣伝になることは分かった上での話です。

ということで、映画の世界で、一番偉いのは、監督ではなく、ヒト(人事権)、モノ(作品)、カネ(製作費)を全て握っているゼネラルプロデューサーだということになりますね(笑)。

◇クレージーキャッツの源流

フランキー堺が、日活映画の専属俳優になってしまい、彼がリーダーとして結成したコミック・バンド「シティー・スリッカーズ」(「粋な都会人」という意味。1950年代にこんな洒落た名前を付けるとは!)は、開店休業状態になります。

その取り残されたメンバーが新たに結成したバンドが、「クレージーキャッツ」だったんですね。谷啓、植木等、桜井センリの面々です。

知らなかったなあ…。

「帰ってきたヒトラー」は★★★☆ 第5刷

哈爾濱市場 野菜もありまーす Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur
北海道の雪祭り先生と、名古屋の海老不羅江先生と、博多のどんたく先生から、「『帰ってきたヒトラー』はご覧になりましたか?まだでしたら、是非ご覧になった方がいいですよ。今年のベスト5に入る作品ですよ」とのお勧めが沢山あったものですから、やっと、今日急いで見てきました。

映画館はいつも混んであまり好きではない東京・日比谷シネマ・シャンテ。ここは、国内でも唯一と言って良いくらいの当たり外れのない素晴らしい佳作か、翌年のアカデミー賞の最優秀作品賞に輝くような良い作品をばかり公開してくれるのですが、何せ、会場は狭すぎて、いつも超満員。

そこで、3日前になって急きょ、特別価格でネットを通して初めてチケットを購入してみたのです。

それが、大正解でした。

映画館に着いたら、またまた長蛇の列。こちらは列に並ばず、大助かりでした。ネットでの事前購入は、皆さんにもお勧めします。祝日とはいえ、東京は暇人が、随分多いんですね(笑)。隣県の千葉や神奈川や埼玉はこんなに混むことはありませんから。
五穀豊穣です Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

で、肝心の映画ですが、最初から何の予備知識を持たないで観たもんですから、喜劇なのか、悲劇なのか、笑っていいのか、怒っていいのか、さっぱり分からなくて、すっかり面食らってしまいました。

ま、それが、この映画作家の狙いなんでしょう。監督・脚本は1977年生まれのデビッド・ヴィネンドというドイツ人でした。まだ39歳ですか。かなりの才能の持ち主です。

物語も、ハリウッド映画のように、薄っぺらで、単純ではなく、複雑に入り組んでいて、まるでマトルーシュカみたいです。

蒸かしたてのトウモロコシはいかが? Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

アドルフ・ヒトラー役のオリヴァー・マスッチという俳優が、何か本物そっくりに見えてしまいます。

出演する極右政党の人たちが本物かどうか分かりませんが、まるで、ドキュメンタリーを撮影しているかのように見えます。

ヒトラー扮するコメディアン(という設定)が、車に乗って、道行く人に挨拶をしますが、その「通りを歩く人たち」が字義通り、一般人なのか、エキストラなのか、さっぱり区別がつきません。

なぜなら、ある人には目に黒い太い線が挿入されたり、ある人には顔や身体全体にボカシが入れられたりして、その人物が誰なのか、特定できないようにしているからです。

堂々と顔を出して登場する人もおりますが、その人は、偶然通りかかったのか、エキストラなのかさえ、分かりません。同じ場面で、目に黒太線が入った人がいるということは、フィルムに写った何百人、何千人という人間にいちいち「肖像権」やら「著作権」とやらを確認したんでしょうね、きっと。でも、それは、目が回るほど厄介で細かい仕事です。本当にそんな気の遠くなるような作業をしたんでしょうかねえ?

よく分かりませんが、ヒトラー役のマスッチがあまりにも落ち着いて、堂々として、役に入り込んでいて、薄気味悪いほど善人のように描かれ、現代にマッチした形で演説したりします。

特に、くだらない低脳番組のオンパレードで、人類を思考停止の能力退化に落とし入れているテレビに対して、ヒトラーは痛烈に批判します。

舞台は2014年のドイツですが、移民流入問題、失業問題、原理主義者の台頭、貧富格差問題、原発・環境問題など極めて身近な政治問題が取り上げられ、皮肉にも、蘇ったヒトラーが解決策を開陳して、再び、大衆の心をつかんでいく道筋は、80年以上前の1930年代とまるっきり変わりません。

この映画では、かなり、際どいタブーも取り上げられます。何しろ、ドイツ国内では、「わが闘争」が発売禁止だけでなく、公でヒトラー式の挨拶も禁止され、民族差別発言も禁止されているはずです。確か、逮捕されれば、禁錮刑にもなったはずです。

それが、この映画では、「タブーを破るジョーク」として堂々と出てくるので、観てる方が心配になってしまいます。

ですから、この映画は、単なるエンターテインメントではなく、ハラハラドキドキするスリラーに近いのかもしれません(苦笑)。

1995年のバーホーベン監督作品「ショーガール」は★★★★☆

瀋陽故宮博物院  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

昨日、国有放送のラジオを聴いていたら、あまり知らない、従ってお名前を失念した若手映画評論家さんが、1995年に公開されたポール・バーホーヘン監督Paul Verhoeven の「ショーガール」が、当時の評論家と観客に「最低のクズ映画」と酷評されたのにもかかわらず、あんな名作はない、とべた褒めしていましたもんで、かなり触手を動かされてしまいました。(渓流斎は未見でした)

過激な暴力シーンや性的シーンが大問題になったということも、興味津々です(笑)。「所詮、男はカネと女」「人殺しのツラを見たくないのか」と豪語した「週刊新潮」の創刊者斎藤十一翁みたいなもんです(笑)。

私は、今さら、所有欲もないもんですから、レンタルでこの「ショーガール」を借りてみることにしました。何と、1週間も借りて驚きの108円です。1800円のロードショーが馬鹿に見えてきました(笑)。もっとも、DVDは、中古から新品まで、ピンからキリですが、中には7000円もの値が付いたものもありました!

大政殿 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

バーホーヘン監督は、1938年7月18日、オランダのアムステルダム生まれ。国籍もオランダのようです。今年78歳。誕生日は、渓流斎とおんなじですねえ(笑)。

彼の代表作でもある1987年の「ロボコップ」、1990年の「トータル・リコール」、そして、92年の「氷の微笑」で興行的に大成功を収めて、 満を持してメガホンを取ったのが、この95年公開の「ショーガール」です。

なるほど、地元米国では、17歳以下お断りの成人映画に指定されたように、tits and ass のオンパレードです。

米ラスベガスのエンターテインメントショーが舞台です。

主人公のノエミ・マローンNomi Malone (エリザベス・バークレーElizabeth Berkley=当時22歳) は19歳のダンサー。東部のある都市からスターを目指してラスベガスにやってきます。

そして、ノエミは、場末のストリップ劇場the Cheetahの踊り子から、有名ホテルのショー the Stardust ダンサーのオーディションに合格し、トップスターのクリスタルCrystal Conners (ジーナ・ガーションGina Gershon)の存在を脅かすほど成長します。

ショーの興行部長ザックZack Carey 役のカイル・マクラクランKyle MacLachlanが、インタビューで語っているように、登場人物のすべてが、男は女を利用して、女は男を利用してのし上がってやろうという野心満々の人間ばかりだというのです。当たってましたね。

大政殿の玉座 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

確かに、男女の裸が多く登場して、青少年の教育上好ましくないのかもしれませんが、それほど、欲情的でも、扇情的には見えないんですよね。無暗に羞恥心を煽ることもありません(笑)。

バーホーヘン監督も「この世で一番美しいものは、女性のヌードだ。僕は、画家や彫刻家が女性のヌードを題材するように映画の中で、女性のヌードを表現したかった」とインタビューに応えていました。(全て、レンタルDVDのおまけ付属として収録されていたもの)

今から20年以上昔の観客や評論家の眼には、単なるポルノグラフィーと映ったのかもしれませんが、21世紀の人間が見ると、一旗揚げてやろうというノエミの暴力的な衝動と、のし上がるためには手段を選ばない冷酷な野心は、よく描かれていると思います。

ノエミ役のエリザベス・バークレイ(1972・7・28~ )は、4歳からダンスを習っているらしく、驚くほど抜群にダンスがうまい。こんないい映画に初主演したのに、興行的には失敗して一時行方不明になったとか。

でも、今は健在で女優として頑張っているようですが、残念ながら私は、この一作しか見ていません。

「64 ロクヨン」後編は★★★☆

路上禁煙地帯

映画「64 ロクヨン」後編を見てきました。

前編があまりにも良かったので、その続きとして、見たのですが、前編と後編のタッチがあまりにも違い過ぎて、ほんの少し違和感を覚えてしまいました。

前編は、上下関係が歴然としている警察官僚という大組織の中で、怒号が飛び交い、厚い壁の中で必死に抵抗する男の悲哀が色濃く描かれておりまして、深い同情の念を抱いてしまいました。

しかし、後編は、一転して、謎解き推理を重視した三文オペラのようで、犯人にしても、犯人を追う警察にしても、周りで茶々を入れているブンヤにしても、何か皆んな薄っぺらく、「おいおい、こんなこと、現実ではありえないんでなえかえ?」と、こちらが突っ込みたくなるほどでした(笑)。

前編が面白かったのは、椎名桔平扮する県警本部長を始め、エリート・キャリアが、常に、中央本庁ばかりに目が向いていて、現場の仕事に全く関心なく、ただただ、組織の安泰と治安維持と情報操作と、そして何と言っても、己れの出世のことしか考えていない姿を俳優が見事に演じ、監督も見事に描き切ったことです。

原作とは結末が少し違うようですが、犯人のやむにやまれぬ動機と環境にもっと説得力があれば、満点だったんですけどね。ちょっと残念。

フィクションとはいえ、この作品は、公衆電話がほとんど消えて、スマホの時代になった現代では、もうあり得ない話になってしまいましたね。

最後のタイトルロールを見ていると、オールスターキャストの出演とはいえ、主演の佐藤浩市をはじめ、結構、二世俳優が多いので、映画界も親の七光を利用した二世時代か、という感想を持たざるを得ませんでしたね。あ、御案内の通り、生前の三國連太郎との不仲が伝えられた佐藤浩市は違いますけどね(苦笑)。

「海よりもまだ深く」は★★★★ 第25刷

是枝裕和監督作品「海よりもまだ深く」を幼馴染の角崎君と千葉県で観てきました。

なぜ、千葉県なのか?それは、東京の映画館(ここでは、丸の内ピカデリーと呼ぶことにします)の上映の開始時間が朝の9時か、もしくは夜の8時という人を馬鹿にしている時間帯だったからです。

なぜ、幼馴染と観たのか?それは、映画の舞台が東京都下の団地だったからです。しかも、私も角崎君もよく知っている清瀬の旭が丘団地が舞台だったからです。聞くところによりますと、是枝監督が幼少期から28歳まで、過ごしたのが、この旭が丘団地だったというのです。今、他にも阪本順治監督の「団地」も公開され、今や団地がちょっとしたブームです。

小さい頃、私たちは清瀬の隣の久留米町の団地の公務員住宅に住んでいました。角崎君のお父さんは式部省に勤務していました。ウチの父親は、中務省に勤めていました。清瀬の旭が丘団地には、小学校の校歌も作曲した音楽の荻野先生が新婚で住んでいたことがあり、一度遊びに行ったことがあります。久留米団地から旭が丘団地まで、自転車で40分くらいかかりました。

途中には、前のブログで書いたことがある「外人プール」がありました。今はなくなってしまいましたが、米軍の通信施設は、治外法権の立ち入り禁止地区として今でも接取されています。お暇な方は、見学に行ってみて下さい(笑)。

旭が丘団地といいますと、1992年2月14日の未明に、この団地内の旭が丘派出所で大越晴美巡査長(当時42)が殺害され、未解決のまま2007年に時効を迎えた事件があります。

美女の曲芸 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

私は、随分大昔の久留米団地に住んでおりましたが、よく清瀬には自転車で遊びに行ったものです。一番のお目当ては、映画です。ということは、昔から映画好きだったんですね。

今はもうなくなってしまったと思いますが、清瀬には西武池袋線の駅の踏切近くに映画館がありました。正式名称は知りませんでしたが、みんな「清瀬映画」と呼んでいました。そこでは、よく高倉健さんの「網走番外地」シリーズをよく見たものです。ほとんど邦画の2本立てでした。「夜のイソギンチャク」や「でんきくらげ」などの渥美マリさんのシリーズもよく観たものです。恐らく、もう誰も知りませんね(笑)。

永井豪の「ハレンチ学園」もこの映画館で観たと思います(笑)。昔、久留米駅東口に、もう今はないと思いますし、もう東口もリニューアルされて位置も変わったので、あったとしても寂れてしまったと思われる神保文具店がありました。まだ木造の店舗で、その近くの板塀に清瀬映画の公開映画写真宣伝の看板があり、悪ガキとしては、通りがかりにその看板を見ないふりをして、見るのが楽しみでした。

今では考えられませんが、公共の場で、しかも駅前の人通りが一番多い場所で、かなり露出の高い映画作品の看板(「夕子の白い◯」という映画でした)が白昼堂々と展示されておりましたから、かなり牧歌的な時代でしたねえ(笑)。

美女の曲芸 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

あれ?何の話でしたっけ?映画「海よりもまだ深く」でしたね。是枝監督の原案、脚本でしたから、本人の想い出をかなりフラッシュバックさせた自伝的要素が濃厚な作品だと思われます。俳優陣は、みーんな、いい味を出しています。何しろ、あの樹木希林と小林聡美ですからねえ。恐ろしいほど、演技過剰、じゃなかった、国宝級の演技巧者にかかってしまえば、もうあまりにも自然過ぎてしまい、何か、台詞を読んで演じているドラマではなくて、ドキュメンタリーを見ている感じがしてしまいました。

主演の阿部寛と真木よう子は、はまり役過ぎました。かつて島尾敏雄賞を受賞した新進気鋭の作家も落ちぶれて、今では探偵稼業で食いつないでいる篠田役の阿部寛は、ギャンブル狂の駄目男。その元妻役の美人女優真木よう子は、サイボーグだの、○○だのと、とかくネット上の噂が絶えませんが、あらゆることを犠牲にして、芸能と演技に人生の全てを懸けている感じでした。

美女の曲芸 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

清瀬は、昔の、とはいっても、大正から昭和の小説を読むと「K村」というイニシャルで、結核療養所の舞台として描かれることが多いです。池澤夏樹のお父さん福永武彦もここで入院生活を送り、名作「草の花」を発表しています。また、東村山市ですが、この近くにハンセン病の国立療養所全生園もありました。こんな大規模な療養所がつくれたのも、戦前は、水と空気がきれいで緑も多く、都内の武蔵野鉄道(西武)線沿線ながら、まだ土地が安かったからでしょう。

また、清瀬といいますと、埼玉県の志木市を結ぶ志木街道のケヤキ通りが大変懐かしい。映画の中でも出てきたので、一人で感動してました。父の中務省時代の同僚がここで、確か、飲酒運転で交通事故を起こし、隣席に同乗していた若い女性と一緒に亡くなったことから、あの週刊新潮の記事になったことがあります。「こんな田舎の事件が週刊誌で取り上げられるとは!」。渓流斎多感時代の鮮烈な思い出です。

何で、この辺の地理に詳しいかと言いますと、渓流斎ご幼少の砌、この辺りをシマにしていたからです。シマとは、池袋から近い順に、ひばりが丘(ひばりヶ丘団地で有名。ファミレス「スカイラーク」の発祥地だったんですよ!私は、今はなきレコード店「ひばり堂」によく行ったもんです)、久留米(魅力的な商店あまりなし。アメリカンスクールと自由学園があります。一時、作家藤沢周平や漫画家手塚治虫も住んでいたとか)、清瀬(映画館通い)のことです。昔は北多摩郡と言われた東京都下です。県境の新座市(幼馴染みの角崎君が通っていた教会もあり、結構、宗教関係か軍属の米国人の家族が住んでいました)もフラフラしていたのでよく熟知しています。

以前、消滅した渓流斎ブログに書きましたが、「智慧伊豆」こと、島原の乱(1637~38年)を平定した総大将、老中松平伊豆守信綱(後の川越藩主)の墓がある平林寺は、新座市にあります。小学生のとき、毎年、歩行会と称して、久留米四小から野火止用水を通って、平林寺まで、十里ぐらいかなあ、よく歩きましたよ。また、平林寺では、友人の誕生会なども開かれました。お母さんも大変だったでしょうけど、今から思うと、進んだ生活を送っていたんですね。

そうそう、忘れるところでした。豊臣秀吉の五奉行の一人だった増田長盛の墓もあります。五奉行なのに、今、籾井さんとこでやってる大河ドラマ「真田丸」に全く登場しませんね(笑)。何で、五奉行の増田長盛の墓が、平林寺にあるのか?

若者よ、平林寺に行け!

何か、映画の話からズレてしまいましたね(笑)。

ちなみに、久留米は、市政化制定後、東京都北多摩郡久留米町から東久留米市となり、我々の心の故郷だった久留米団地は、老朽化で逸早く、この地球上から消滅しました。

ついでながら、母校である久留米第四小学校も廃校となりました。

残っているのは思い出だけとは、あまりにも、悲し過ぎる(涙)。

「殿、利息でござる!」は★★★★ 第4刷

調神社

忙しい生活の中、時間を割いて、わざわざ映画を見てきましたよ。

それにしても、最近、殆んど、いや、全く、遊んでいませんね。

特に、夜遊びとやらは、ピタリとやめて、9時か10時には寝てしまう極めて健康的な生活です(笑)。

落語家の名跡三遊亭とは、どういう意味か、御存知ですか?三大遊びのことです。子供じゃなければ、御想像はつくと思いますが(笑)、それだけ、名人と言われた落語家は、「藝の肥やし」とか何とか嘯いてよく遊んだものです。

私には遊びが足りない。
私には遊びが足りない。
私には遊びが足りない。

まあ、これ以上書きますと、「シャイニング」のジャック・ニコルソンになってしまうので、映画を観に行くことにしたわけです。

映画は、今話題沸騰の時代劇「殿、利息でござる!」(阿部サダヲ主演)です。京洛先生からは、「あんなのつまんないから、やめておけ」と忠告されていたのですが、観ても損はありませんでした。本当にあった話だというので泣かせます。この映画で、江戸時代の百姓の「肝煎り」「大肝煎り」という役職を知りました。

でも、費用対効果は、人によりけり、かもしれませんね。

「平成の司馬遼太郎」とか持ち上げられて
ここ最近、どこにでも出てくる歴史家の原作です。私も、彼が書いた某新聞の記事で、この原作の元資料は、彼の読者から持ち込まれて、彼が感激して書いたものらしいですね。

ですから、話そのものは、面白いです。

京洛先生が「観るのはやめておけ」と忠告されたのは、恐らく、このいつもシャシャリ出てくる原作者が鼻につくからなのではないでしょうか。

私も、映画を観ていて、原作者本人が出演する場面が予告もなく出てきたので、思わず、「あっ」と低い声でうなだれてしまいました。

長くなるので、この辺で(笑)。

「64-ロクヨン」は★★★★★  第2刷

絶景 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

13日の金曜日は、忌み嫌われておりますが、その13日の金曜日に都心の某所で、来日された京洛先生を囲んだ会に20人ほど参加して行われたようですが、残念ながら、渓流斎は参加できませんでした。

大いに盛り上がったようですが、大抵はインサイダー情報ですから、こんな最公約数のブログに書けないことばかりですので、参加できなくても、同じかもしれません(笑)。

でも、最近、夜遊びしてませんね。昨年でしたら、このブログに、いつも「昨晩も痛飲して二日酔いです」と書くのが、恒例でしたが、事情があって、お酒は一滴も呑んでいません。

まあ、呑まないなら、呑まないで、死ぬわけではないことが分かって、何とかなることを新発見した感じです(笑)。

さて、その京洛先生が「映画、クロヨンを観ましたか?探訪ブログ記者さんには必見ですよ。あたしあ、面白かったので、後編も観ようと思ってますよ」と、遠くから伝令のような飛脚を飛ばして来られました。

「クロヨン」ではなくて、「ロクヨン」だと思いますが(笑)、この映画、ご案内の通り、前編と後編の2本に分かれていますし、どびきり見たい女優さんもいないし、正直、触手が動いていなかったのですが、京洛先生が思わせぶりな言い方をされるもんですから、「しょうがないなあ。観て見るか」と重い腰を上げたのでした。

例によって、内容に触れますから、この先は、これからご覧になる方は読まないでください。

また、著作権で映画写真は使えませんから、いつものように、松岡総裁の壮大な写真をお楽しみください。

絶景かな Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

JALの御巣鷹山事件を扱った「クライマーズ・ハイ」など映画化作品がたくさんある横山秀夫さん原作で、「このミステリーは凄い」賞かなんかで、第一位を獲得した作品だそうです。小生は、映画は観ても、推理小説はほとんど読まないので、ほとんど分かりませんが、横山作品の評判は聞いております。

彼は、群馬県の最大県紙「上毛新聞」記者出身ですから、警察と記者クラブの関係については、お手の物ですが、ちょっと、カリカチュアといいますか、デフォルメし過ぎているような感じがしました。作品には、上毛新聞と思われる東洋新聞をはじめ、全国紙の朝陽新聞、毎報新聞、読日新聞のほか、関東経済新聞、テレビのNHA、おまけに中央通信と情勢通信まで配置されておられるので、個人的ながら笑ってしまいました。

絶景なり Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

物語は、わずか1週間しかなかった昭和64年に起きた少女誘拐事件で、時効を間近に控えた14年後の平成14年の群馬県警内部が舞台です。当時、県警の捜査班だった三上義信(佐藤浩一)は、恐らく未解決事件の責任を取らされて、今では広報官に左遷されて、事件の匿名発表や警察庁長官の「64事件」現場と被害者宅訪問の取材などを巡って、記者クラブと対立して、「中間管理職」のように、間に挟まれて苦悩する姿が描かれます。

警察内部の出世争いといいますか、警務部と刑事部との内部抗争が全面に出てきて、まるでヤクザ映画みたいな緊張感があって、ハラハラドキドキさせられ通しでした。特に、キャリアの県警本部長辻内役の椎名桔平や、同じくキャリアの警務部長赤間役の遠藤賢一、それに三上の上司で責任を取らされることなく捜査一課長に出世した松岡(三浦友和)らの鼻持ちならない傲慢さと冷血な事務的態度はピッタリのはまり役で、不条理なヒエラルキーの世界に身を置く人なら誰でも、共感できる場面が多々あったのではないでしょうか。

そういう私も、とても他人事に思えず、佐藤浩一と一緒に涙が出てきましたよ(笑)。

原作を読んでいないので、この後、どんな展開になるか、さっぱり分かりません。でも、そこがいい所で、来月の後編公開が楽しみになりました。

実は、最近の日本人の俳優はよく分からなくて、東洋新聞キャップ秋川役の瑛太と、広報室係長諏訪役の綾野剛との区別が最初はつかず、困ってしまいました(笑)。とはいえ、この映画は、今考えられる豪華キャスト、オールスター出演というのは間違いないでしょう。

もう、クラリオンガールと言っても、誰も知らないでしょうが、その元クラリオンガールの烏丸せつこが出演しているというので、観たのですが、観終わっても誰だったのか分からなかったのです。後で、映画の公式サイトを見て見たら、吃驚。あの捜査員日吉の母親役がそうだったんですね。えっ?あのお婆さんが?昔はグラマー女優(古い)として、ブイブイ言わせていたのに、面影が全くない(失礼!)。思わず、卒倒しそうになりました。

「レヴェナント」は★★★ second edition

杜甫草堂入口   Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

今年度のアカデミー賞主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)と監督賞(アレハンドロ・G・インタリトゥ)と撮影賞を受賞した「レヴェナント 蘇りし者」を近くのロードショウ館で観てきました。

IMAX(アイマックス)というものを今回初めて知りましたが、映像、音響とも一歩先に行く鮮明で迫力ある映画が楽しめる方式なんだそうで、一般1800円のところ、2000円とちょっと割高になっています。

あたしゃ、そこまで拘らないので、普通の映写で十分でした(笑)。

以下は、ネタバレの内容に触れますので、これからこの映画をご覧になる方は、お控えなすって。さようなら。

 杜甫像  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

とにかく、疲れる映画でした。前触れの宣伝を含めて、拘束時間2時間55分と長過ぎます。最後の方でトイレに行きたくなってしまい、大変でした(笑)。

何と言いますか、汚いし、苦しそうだし、寒そうだし、飢え死にしそうだし、命を取られそうだし、何か、ゆっくり落ち着いて観ることができませんでした。映画館には結構ギリギリに着いたら、混んでいて、一番前の席しか空いていなくて、顔のアップがデカ過ぎました。

美人さんなら我慢できますが、泥んこまみれで、何か曰く因縁がありそうな、胡散臭いおっさんばかり登場しますから、疲れました。

でも、主演男優賞をやっと獲得したヒュー・グラス役のレオ様は、どこまでスタントマンを使っていたのか、よく分かりませんでしたが、とにかく体当たりの演技で、土の中に入れられたり、河から滝で落ちたり、馬ごと崖から落下したり(これはスタントマンでしょう)、そして何よりも、デカい大熊に襲われて瀕死の重傷を負ったり、観ている方も引いてしまうほどでした。(映画の中で大熊のことを、レオ様は、ハイイログマではなく、「グリズリー」と言ってましたが、本物だったんでしょうか?いや、本物だったら、本当に死んでしまいますよね?)

 杜甫草堂大雅堂  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

大自然の凄さには圧倒されますが、人間の存在そのものが悪のような気になります。

でも、とんでもない極悪人や善良な人間が登場するわけでもありません。実際にあったことを元にした作品だそうですが、元々いたネイティブ・アメリカンが残忍そうで、良心的であったり、征服者の白人が、良心的そうで残忍だったりして、何か描き方も中途半端な感じがしました。

悪役ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)も何処にでもいそうなワルで心底憎めない感じです。ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)も何処か頼りない感じで、最後のフィツジェラルド討伐に連隊を率いて行けばいいものを、グラスと二人だけで行くのですからね。その先が想像できました。

厳しい大自然の中で、低音で流れるオーケストレーションは、映像の邪魔にならず、そう言えば、坂本龍一が担当していたんだな、と思い出して、注意深く音楽を後から聴くほどでした。映画の中で、音楽の存在に気付かせないことは、なかなかの手腕でしょう。

いやあ、我ながら、つまらんこと書きましたが、タダで観て、文句を言ってもお金をもらって、周囲から「先生、先生」と言われてふんぞり返っている評論家や記者さんよりマシでしょう(爆笑)。

「スポットライト」は★★★★★ sixth edition

大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

今年のアカデミー賞の作品賞と脚本賞をW受賞した「スポットライト 世紀のスクープ」を東京・TOHOシネマズ日劇で観てきました。(G)(またまた、本文と写真は関係ありましぇん。映画の写真は著作権があって使えましぇん)

昨日15日に公開したばっかりですので、恐らく混むだろうと予想して、朝一番の9時45分上映にしましたので、せっかくの休日なのに早起きしなければなりませんでした(苦笑)。

都心まで出かけるのは遠過ぎるので、本当は昼の時間帯で観たかったのですが、どういうわけか、次の上映時間は16時45分。映画が終わって、出入口付近で、沢山の人が集まっていたので、「おっかしいなあ…」と思ったら、家に帰ってパソコンを開いて、この映画の公式HPを観たら分かりました。「なーんだ」です(笑)。

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

何と、主役の一人で紅一点の記者サーシャ・ファイファーを演じたレイチェル・マクアダムスがお忍びで(?)来日し、舞台あいさつをしていたのです。それが、今日この昼間の時間帯の日劇の会場で、特別料金で普段の一般1800円より200円高い2000円で、「チケットぴあ」がネットで募集していたのです。会員優先で、一般の人は抽選だったようです。

これでも、私は普通の人より身銭を切って(笑)、映画を観ている方だと思いますが、今日初めて、「ぴあ」の人に捕まって、「映画は、何点でしたか」と質問されました。

私もたまに、映画を観に行く前に、ネットの「ぴあ映画生活」を見て、映画の点数を参考にして、面白そうな映画でも「ぴあ」の採点が低かったら、観るのをやめることもありました。こうして、「ぴあ」の人から取材されると、「本当に真面目に観客から聞いて、点数を付けていたんだ」ということが分かり、信頼度を高めました。

ちなみに、これは、いつぞやも何度か書いたと思いますが、私が最も参考にしているのが、日経金曜日夕刊最終面の映画採点なのです。

この「スポットライト」は五つ星でした。日経の採点は、五つ星が「今年有数の傑作」、四つ星が「見逃せない」、三つ星が「見応えあり」、二つ星が「それなりに楽しめる」、一つ星は「話題作だけど…」です。

実は、私の採点も黒星五つが最高で、たまに、おまけの白星もつけることがあります。(だから、真似したわけではありましぇーん)

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

前置きが随分長くなってしまいましたね(笑)。

でも、実は策略でして、あまり内容には触れたくなかったのです。皆さんには是非劇場に足を運んでご覧になってもらいたかったからです。

まるで、映画配給会社の宣伝部員みたいですが、それほど面白かったのです。(あ、これから先は、これから観る方は読まない方がいいかもしれませんよ。内容に触れます)

何と言いますか、スト-リーは、2001年から02年にかけて、米ボストン・グローブ紙が、長年に渡るカトリック神父による児童性的虐待の「世紀のスクープ」を追う姿をドキュメンタリータッチで描いたものです。

タイトルのスポットライトは、同紙の「調査報道」の特集欄の名前です。その編集部が、僅か4人だったとは驚きましたが。

グローブ紙は、地元読者に密着した紙面づくりで、読者は、カトリック信者が53%を占めていました。いわば、タブーの一つで、読者の中には、そして、メディアも含めて、これらのスキャンダルを知っていながら、「見て見ぬふり」を何年もの間してきた事案だったのです。この世紀のスクープもまかり間違えば、グローブ紙読者の不買運動につながり、会社がつぶれる恐れもありました。

それが、色んな偶然の要素もからんで、結局は大スクープは成功し、この連載記事が、世界中に波及して、神父による性的児童虐待とその隠蔽工作の事例が、米国内の他州だけではなく、フィリピンやタンザニアやニュージーランドなどでも暴かれ、各メディアで大きく取り上げられるようになったのです。

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

勿論、極東に住む私も当時、新聞などでこれらのスキャンダルを知り、熱心に読んだものでした。(えっ?もう14年も昔の話なの?)

そういった「結果」が分かっていても、観ていて、「この先、どうなってしまうのか」とハラハラドキドキ。

出演者は、役者ではなく、本物の新聞記者に見えたところが実によかったです。ポーランド系米人で突撃記者マイケル・レゼンデス役のマーク・ラファロもいい。デスクの長老ロビー役のマイケル・キートンも恰好よくて渋い。(彼のバットマン役を覚えていますが、1989年公開。27年も昔だったとは!)そして、前述のサーシャ記者役のレイチェル・マクアダムスも、新聞業界にはあまりあんな美人はいませんが(こら、怒られるぞー。逃げろー)、何か知的ではまり役。新しく、編集局長としてマイアミから赴任してきたバロン役のリーヴ・シュレイバーもどっしり落ち着いて、うまい。

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

恐らく、この映画は、観る人によって感想は分かれると思います。

私の場合、ある意味で、共感してしまって、途中で感情を抑えきれなくなってしまった程です。

アカデミー賞の中でも最高の栄誉である作品賞を獲った作品でなくても、今年の傑作の一つでしょう。

さて、私が「ぴあ」の記者に何点と言ったか、そんなに気になるんですか?(笑)

はいはい。五つ星ですから、勿論、100点です。

【後日談】あら、吃驚
今朝の朝日新聞朝刊の土曜別冊「be」に、本物のボストン・グローブ紙の突撃記者レゼンデスさんと、美人のサーシャ記者の二人が登場していました。「本物は、こんな顔をしていたのか」と納得。俳優と似ているような、似ていないような。兎に角、シンクロニシティ。