画家ゴーギャン(1848-1903)に不朽の名作『我々はどこから来たか?我々とは何か?我々はどこへ行くのか?』(1897)があります。
私も青年時代から、このゴーギャンと全く同じアポリア(難問)に苛まれ続けてきました。
ところがつい最近読んだ津留晃一さんという人が書いた『津留さんが、心から伝えたかったこと』(英光舎)の中にこんなことが書かれていました。
「将来の自分がどうなるか、将来を見続け、将来を予想すればするほど、それが『今の自分』であることが分かる。過去の自分がどんな人間だったのか、過去を振り返れば振り返るほど、過去の自分とは『今の自分』だったことに気が付く」
これは彼の正確な言葉ではなく、自分なりに体内に取り込んで咀嚼したものなので、もしかしたら私の誤読かもしれません。いずれにせよ、この言葉は、長年悩まされ続けてきたアポリアの糸口を見つけた感じがしました。
そう、過去も未来もないのです。あるのは今しかないのです。過去も未来も今の自分を反映した幻にすぎないのです。アインシュタインの相対性理論だったか、おぼろげな記憶なので、確かではないのですが、望遠鏡で宇宙の遼か彼方を眺めて、眺め尽くすと、望遠鏡を眺めている自分の頭の後ろが見えてくるそうです。津留さんの本を読んで、この逸話を思い出しました。
終わった過去を悔やんでもしょうがないのです。
また、将来を不安に思うこともないのです。
今にしか回答がないのです。