「家族という病」

満月のハバロフスク Copyright par Duc Matsuocha-gouverneur

 昨年、大きな話題を呼んで大ベストセラーになった下重暁子著「家族という病」(幻冬舎新書)を読了しました。

 何で今頃?(笑)

 いや、実は、都内の図書館(この表現が実に微妙です)に借出の予約を昨年5月頃にしたところ、一昨日になってやっと9カ月ぶりに、貸出の許可が下りたので取りに行ったのです。予約していたことさえ忘れていました(笑)。

アムール河 Copyright par Duc Matsuocha-gouverneur

 2~3時間で読めました。

 もっと凄い話かと思いましたら、そして、恐らくご本人は否定されるでしょうが、下重さんの家族の来歴の話でした。

 下重さんのご尊父は、歴史探偵の半藤一利氏も太平洋戦争の最も罪深い戦犯の一人に挙げていた辻政信と陸軍士官学校で同期だったそうですね。戦後、公職追放に遭い、少女だった下重さんは、「あなたには毅然としていてほしかった」と生涯実父を恨み続けます。

 アムール河 Copyright par Duc Matsuocha-gouverneur

 下重さんは、略歴には書かれていませんでしたが、本文に「2・26事件」が起きた3カ月後に生まれた、と記述しておられますので、昭和11年(1936年)生まれでしょう。ということは、今年傘寿ということになります。

 私の世代ならギリギリ彼女のNHKのアナウンサー時代を知っています。まあ、今は飛ぶ鳥を落とす勢いの「女子アナ」の先駆けみたいな人かもしれません。(こんなことを書くと怒られるでしょうなあ)フリーアナウンサーになった後、文筆家としてエッセーやノンフィクションなどを量産されているようですが、申し訳ないですが、彼女の著作を読むのは、私は今回が初めてでした。

 ハバロフスク寺院 Copyright par Duc Matsuocha-gouverneur

 彼女は独身だとばかり思っていましたら、「つれあい」は、テレビ局の中東特派員を務めたことがあるジャーナリストで、お互いに干渉せず、「パートナー」として、資産は別々に管理して、生活費は折半して住んでいらっしゃるようです。

 と、この本には書かれていました。「つれあい」というのは、何で、つれあいのことを「主人」と呼ばなければいけないのかという彼女の信念と中山千夏さんの顰に倣ってそう呼ぶようです。ジェンダーの先駆者と書けば、また彼女は怒るでしょうね。

 「家族という病」の結論めいた話は、58ページにある「面白くないのは、家族のことしか話さない人。」と断言していることでしょう。
 下重さんにとっては、家族の話は実に不愉快なんでしょうね、きっと。それでいて、私自身はほとんど興味がないのに、母親に溺愛されたとか、この本で彼女の家族のことについて、散々読まされました。

 嗚呼、やっぱり、図書館で借りてよかった。