「万引き家族」は★★★★★

今日はついにネットで買ったパソコン(米デル製 6万6980円の15%引きで5万5233円+税4418円=5万9651円)が自宅に届き、色々と設定してみましたが、NTTコミュニケーションズのWIFIが良くなかったのか、うまく繫がらず、結局失敗。半日も無駄にしてしまいました。

凄いフラストレーション。時間がもったいなくてイライラしてしまいました。

それはともかく、午前中、是枝裕和監督の映画「万引き家族」を観に行ってきました。この作品がカンヌ映画祭のパルムドールを受賞していなければ、わざわざ観に行くことはなかったと思います。けど、観てよかった。うまく騙されました。(この先、少し内容に触れますから、これからご覧になる方は、ここでやめておいた方がいいと思います。さようなら)

映画は大抵、美男美女が出てきて、色んな災難やイジメや嫌がらせなどに遭いながら、それらを努力やら周囲からの助けやら超能力やらで克服して、あとはめでたし、めでたしのパターンが多く、観る者もそんなお約束事を安心して観るのがお決まりでした。

しかし、この映画に関しては、真逆です。美男美女が出て来ないどころか(失礼!)、主役は「犯罪者」なんですからね。

罪状は、万引き、誘拐容疑、年金詐欺などですが、舞台が、グローバリズムやフィンテックなどの世界の最前線から取り残された東京下町で、題材も極めて日本的な話。こういう作品が国際映画祭で最高賞を受賞するということは、話がドメスティックであれば、ドメスティックなほど、人種や国籍や性別を超えた実に人間的な共感と普遍的な感動を得るものだと思いました。

主役の治役のリリー・フランキーは、素顔はインテリの作家・芸術家なのですが、風采は失礼ながら、パチンコや競輪競馬三昧で、いかにもコップ酒が似合う日雇い労働者風。演技をしなくても、見事に役をこなしてました。

その妻信代役の安藤サクラは、初めて主役作品を観ましたが、決して美人ではないのに、実に魅力的で、親(俳優の奥田瑛二と安藤和津)の血を受け継いでいるのか、抜群に演技がうまい。つまり、ドキュメンタリーを撮っていると観る者を錯覚させるほど、自然で、演技をしているように思わせないのです。

特に、警察署の取り調べで、「貴女は、(誘拐してきた)じゅり(佐々木みゆ)ちゃんに何と呼ばせていたの?」と婦警(池脇千鶴)に聴かれて、「何と言ってましたかねえ…」と言いつつ、自然と涙が何度も何度も溢れる場面は秀逸でした。そこの近辺だけでももう一度観たいぐらいでした。

人物構造図がちょっと複雑で、最後に種明かしされます。おばあちゃん初枝役の樹木希林は、まあ別格ですが、信代の妹の亜紀役の松岡茉優、そして、息子の祥太役の城桧吏もカンヌで大喝采されたぐらいですから、やはり、演技が上手く、違和感なく映画の世界に溶け込んでおりました。

原案、脚本なども手掛けた是枝監督は、台詞を極端に切り詰めて、役者に背中で演技をさせるような過酷な演技指導をしたのではないかと思わせました。

また、小津安二郎に影響を受けたのか、彼のどの作品でもそうですが、食べるシーンが異様に多い。所詮、人間なんて、食べて、交わって、寝て、家族が支え合って、笑っていられればこれ以上の幸せはないと言いたげでした。

久し振りにイイ映画を観させてもらいました。

【追記】

昨晩、ふと、是枝監督がこの映画で一番言いたかったことはこんなんではないかと想像しました。

主人公の「万引き家族」は、確かに社会から抹殺されるべき悪人ですが、それなりに、それぞれが小さな幸せを感じながら健気に生きています。一方、女児が誘拐された夫婦は、実は自分の子どもを虐待し、「こんな子を産まなければよかった」と子どもの前では邪見にしていたのに、マスコミの前では、しっかりとスーツを着込んで可哀そうな実直な被害者を演じていました。こんな「偽善家族」と「万引き家族」を対比して、是枝監督は、人間の本当の幸福とは何かを訴えたかったのではないか、と思ったわけです。