「スポットライト」は★★★★★ sixth edition

大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

今年のアカデミー賞の作品賞と脚本賞をW受賞した「スポットライト 世紀のスクープ」を東京・TOHOシネマズ日劇で観てきました。(G)(またまた、本文と写真は関係ありましぇん。映画の写真は著作権があって使えましぇん)

昨日15日に公開したばっかりですので、恐らく混むだろうと予想して、朝一番の9時45分上映にしましたので、せっかくの休日なのに早起きしなければなりませんでした(苦笑)。

都心まで出かけるのは遠過ぎるので、本当は昼の時間帯で観たかったのですが、どういうわけか、次の上映時間は16時45分。映画が終わって、出入口付近で、沢山の人が集まっていたので、「おっかしいなあ…」と思ったら、家に帰ってパソコンを開いて、この映画の公式HPを観たら分かりました。「なーんだ」です(笑)。

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

何と、主役の一人で紅一点の記者サーシャ・ファイファーを演じたレイチェル・マクアダムスがお忍びで(?)来日し、舞台あいさつをしていたのです。それが、今日この昼間の時間帯の日劇の会場で、特別料金で普段の一般1800円より200円高い2000円で、「チケットぴあ」がネットで募集していたのです。会員優先で、一般の人は抽選だったようです。

これでも、私は普通の人より身銭を切って(笑)、映画を観ている方だと思いますが、今日初めて、「ぴあ」の人に捕まって、「映画は、何点でしたか」と質問されました。

私もたまに、映画を観に行く前に、ネットの「ぴあ映画生活」を見て、映画の点数を参考にして、面白そうな映画でも「ぴあ」の採点が低かったら、観るのをやめることもありました。こうして、「ぴあ」の人から取材されると、「本当に真面目に観客から聞いて、点数を付けていたんだ」ということが分かり、信頼度を高めました。

ちなみに、これは、いつぞやも何度か書いたと思いますが、私が最も参考にしているのが、日経金曜日夕刊最終面の映画採点なのです。

この「スポットライト」は五つ星でした。日経の採点は、五つ星が「今年有数の傑作」、四つ星が「見逃せない」、三つ星が「見応えあり」、二つ星が「それなりに楽しめる」、一つ星は「話題作だけど…」です。

実は、私の採点も黒星五つが最高で、たまに、おまけの白星もつけることがあります。(だから、真似したわけではありましぇーん)

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

前置きが随分長くなってしまいましたね(笑)。

でも、実は策略でして、あまり内容には触れたくなかったのです。皆さんには是非劇場に足を運んでご覧になってもらいたかったからです。

まるで、映画配給会社の宣伝部員みたいですが、それほど面白かったのです。(あ、これから先は、これから観る方は読まない方がいいかもしれませんよ。内容に触れます)

何と言いますか、スト-リーは、2001年から02年にかけて、米ボストン・グローブ紙が、長年に渡るカトリック神父による児童性的虐待の「世紀のスクープ」を追う姿をドキュメンタリータッチで描いたものです。

タイトルのスポットライトは、同紙の「調査報道」の特集欄の名前です。その編集部が、僅か4人だったとは驚きましたが。

グローブ紙は、地元読者に密着した紙面づくりで、読者は、カトリック信者が53%を占めていました。いわば、タブーの一つで、読者の中には、そして、メディアも含めて、これらのスキャンダルを知っていながら、「見て見ぬふり」を何年もの間してきた事案だったのです。この世紀のスクープもまかり間違えば、グローブ紙読者の不買運動につながり、会社がつぶれる恐れもありました。

それが、色んな偶然の要素もからんで、結局は大スクープは成功し、この連載記事が、世界中に波及して、神父による性的児童虐待とその隠蔽工作の事例が、米国内の他州だけではなく、フィリピンやタンザニアやニュージーランドなどでも暴かれ、各メディアで大きく取り上げられるようになったのです。

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

勿論、極東に住む私も当時、新聞などでこれらのスキャンダルを知り、熱心に読んだものでした。(えっ?もう14年も昔の話なの?)

そういった「結果」が分かっていても、観ていて、「この先、どうなってしまうのか」とハラハラドキドキ。

出演者は、役者ではなく、本物の新聞記者に見えたところが実によかったです。ポーランド系米人で突撃記者マイケル・レゼンデス役のマーク・ラファロもいい。デスクの長老ロビー役のマイケル・キートンも恰好よくて渋い。(彼のバットマン役を覚えていますが、1989年公開。27年も昔だったとは!)そして、前述のサーシャ記者役のレイチェル・マクアダムスも、新聞業界にはあまりあんな美人はいませんが(こら、怒られるぞー。逃げろー)、何か知的ではまり役。新しく、編集局長としてマイアミから赴任してきたバロン役のリーヴ・シュレイバーもどっしり落ち着いて、うまい。

 大連・駅前裏通り  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

恐らく、この映画は、観る人によって感想は分かれると思います。

私の場合、ある意味で、共感してしまって、途中で感情を抑えきれなくなってしまった程です。

アカデミー賞の中でも最高の栄誉である作品賞を獲った作品でなくても、今年の傑作の一つでしょう。

さて、私が「ぴあ」の記者に何点と言ったか、そんなに気になるんですか?(笑)

はいはい。五つ星ですから、勿論、100点です。

【後日談】あら、吃驚
今朝の朝日新聞朝刊の土曜別冊「be」に、本物のボストン・グローブ紙の突撃記者レゼンデスさんと、美人のサーシャ記者の二人が登場していました。「本物は、こんな顔をしていたのか」と納得。俳優と似ているような、似ていないような。兎に角、シンクロニシティ。

「カラヴァッジョ展」は★★★★

パリ市場にて

21日(月)は振替休日。世間の人は、お休みなので、大層混むだろうと予想して、朝早く出掛けて、東京・上野の西洋美術館に「カラヴァッジョ展」(一般1600円のところ無料招待券を1380円で買収)を観に行って来ました。(忙しくて、やっと今日書けました=笑)

正解でした。少し余裕を持って本物に接することができました。

カラヴァッジョ(1571~1610)は、バロック美術の大家で、後の巨匠ルーベンスやレンブラントらに影響を与えたと言われますが、かなりの自惚れ屋で、素行も悪く、瞬間湯沸し器並みの短気。殺人まで犯して逃亡し、38歳の若さで亡くなってしまうという波乱万丈の生涯を送った人です。

光と闇を描き分けた先駆者とも知られ、私も彼の大ファンで、10年近く前に、わざわざイタリア半周旅行の際に、ローマのサン・ルイジ・ディ・フラチェージ教会を訪れ、彼の名前を一気に高めた「聖マタイの召命」(1600=日本では「関ヶ原の戦い」があった年)を観に行ったものです。

この「聖マタイの召命」は、右端にペテロを従えたイエスが、マタイに自分の使徒になるよう召命している有名な作品です。かつては、中央で、人差し指で「自分ですか?」と問いかけているような髭を蓄えた初老の男が、マタイだと言われていましたが、1980年代になって、その髭の右横で俯いてお金を数えている仕草をしている横向きで表情が見えない若い男がマタイではないかという説が有力になってきました。

髭の男は、自分自身を指差しているのではなく、右前隣の男を指差して、「この男ですか?」とイエスに問いかけているわけです。マタイは、徴税人だったので、お金を数えていることが、その証拠ではないかと言われています。

カラヴァッジョの生涯は、38年しかないため、その作品は少なく、約60点と言われていますが、教会に据え付けられて持ち出しが不可能な作品も多いので、今展で11点出品されているということは、かなり見応えがあると言えるでしょう。海外初公開作品(「法悦のマグダラのマリア」)もありますが、勿論、「聖マタイの召命」は、持ち運べないのでありません(苦笑)。

ところで、カラヴァッジョの本名は、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョです。そして、ルネサンスの有名な彫刻家ミケランジェロ(1475~1564)の本名は、略してミケランジェロ・ブオナローティです。

何でカラヴァッジョは、ミケランジェロではなくて、何でミケランジェロは、ブオナローティではないんでしょうかね?ちなみに、ラファエロは、ラファエロ・サンティで、名前が通称。レンブラントも、レンブラント・ハルメスト・ファン・レインが本名。

近現代は、マネにしろ、モネにしろ、ゴッホにしろ、みんな苗字が通称になっているのに…、

「家族はつらいよ」は★★★★ second edition

ハバロフスク駅  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

京洛先生のお勧めでロードショー映画「家族はつらいよ」を、ユナイテッドシネマでau割引価格で観てきました(AL)。

山田洋次監督作品。まあ、「男はつらいよ」の大監督ですから、こういった喜劇はお手のものなんでしょうが、ちょっと、ドタバタ過ぎたような感じもしました。

特に、父親の平田周造役の橋爪功と、長女金井成子役の中嶋朋子がちょっと演技過剰気味で、目が覚めてしまいましたが、長男の嫁史枝役の夏川結衣の抑えた演技は、自然にみえて、プラスマイナスゼロという感じでした。

 雨の降る真夜中の乗車  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

ストーリーは見てのお楽しみということで、書かない方がいいでしょう。

観終わって、すっきりしたので、満足しました。松竹伝統の「大船調」とまではとてもいきませんでしたが、「小船調」はいっていたかもしれません。シリーズ化されるんじゃないでしょうか。

みんな役柄でキャラがたっていましたから(笑)。

 保守点検中  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

邦画だと、俳優の顔と名前が一致して、役者さんの背景的知識もあるから、深読みではなくて、「深観」ができます。洋画だと知らない俳優が出てくると、名前も分からず、役がごっちゃになったりしますから(笑)。

例えば、最後に周造がビデオか何かで観ているのは、小津安二郎の「東京物語」。前回も「東京物語」のオマージュ的作品「東京家族」を発表したりして、山田監督の小津監督への並々ならぬ思い入れが伝わります。

もう一つ、周造の妻富子役の吉行和子の台詞に「(老後は)大丈夫。弟の遺産(作家で成功して著作権を継承したため)があるから、細々と暮らせますから」といったようなものがありましたが、この台詞で、当然、吉行の兄である吉行淳之介を思い起こしますよね。

長女の夫金井泰蔵役の林家正蔵が「どうもすみません」とこぶしを額に持っていく仕草は、ワザと山田監督が指示したのでしょう。もちろん、この台詞と仕草は、林家正蔵の父林家三平の十八番です。

また、「あの俳優観たことあるけど、誰だっけ?えっ?木場勝己?木場勝己も随分老けたなあ」などと、口にはとても出せないことが思い浮かぶのも、邦画ならではの「深み」かもしれません。

まあ、若い人が見てもこんなことは分からないでしょう。自分も、いい意味で歳を取ったということかもしれません(笑)。

「マネー・ショート」は★★☆ Second edition

 一人で大丈夫? Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

相も変わらず、松岡総裁から送って頂いた写真を本文とは全く関係なく(笑)、ブログに掲載させて頂いております。

松岡総裁からも「見事に本文の内容と写真の整合性が不可逆的、自然発生的に一致しておりませんねえ」との御忠告を拝聴しております。

最近、松岡総裁様におかれましては、御不孝が遭ったようですが、不特定多数の方がご覧になっているこの人気ブログですから(苦笑)、「大変ご愁傷様で御座いました」と一言だけ申し述べさせて頂くことに致します。

 土地はいくらでも Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

さて、京都にお住まいの、京洛先生から「ブログランキングの順位はどうなっていますか?」とのご下問がありましたので、下に掲載しておきます。

◆過去1週間の閲覧数・訪問者数とランキング(日別)

日付      閲覧数  訪問者数    ランキング

2016.03.05(土)  198 PV  107 IP    13656 位 / 2421721ブログ
2016.03.04(金)  275 PV  139 IP    11209 位 / 2420747ブログ
2016.03.03(木)  369 PV  157 IP    6638 位 / 2419592ブログ
2016.03.02(水)  235 PV  120 IP   8846 位 / 2418331ブログ
2016.03.01(火)  334 PV  161 IP   6590 位 / 2417158ブログ
2016.02.29(月)  360 PV  186 IP    6512 位 / 2416032ブログ
2016.02.28(日)  276 PV  128 IP    12081 位 / 2414918ブログ

ちょっと、見にくいかもしれませんが、全体でおよそ242万のgooブログ中、6500位台から1万30000位台まで、2倍ぐらい大きな揺れがあるということです。

また、古い話を持ち出して恐縮ですが、昔、gooブログ全体が150万ぐらいだったころ、800位か900位を記録したことがありますが、そのブログは消えてしまいましたし、証拠もないので、証明しようもありません。

まあ、何も好き好んで、過去を引きずることもありませんか!

 路傍の餌 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

やっと、本題に入りますが、映画「マネー・ショート」を東京・有楽町の日劇で観て来ました(g)。

観終わった瞬間は、情けないですが、「分からん」でした。確かに、金融リテラシーは積んできたつもりですが、そしてまた、映画宣伝部は、しきりに「経済に詳しくない人でも丁寧に説明されているので、分かりやすい」とラッパを吹いているのですが、やはり、分からんものは分からんかったです。家に帰って、カタログを見たり、ネットを見たりして、やっと、何となく分かったような気がしました。(宣伝のチラシで、多分、宣伝費をもらってタダで見ている若い御用映画評論家が、「とっても分かりやすい」とベタ褒めしていましたが、かえって痛々しく可哀そうにみえました)

2008年のリーマン・ショック事件に実際にあったことを題材にしています。ショートとは、金融取引用語で「空売り」のことですね。(詳細略)

登場人物は、サブプライムローンのデフォルト(債務不履行)を確信するヘビメタ好きの「鬼才トレーダー」マイケル(クリスチャン・ベール)。彼は、サブプライムローンが暴落したときに多額の保険金を得られるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)契約を大手投資銀行と契約します。このマイケルの空売りを察知して、ファンドトレーダーにCDSの購入を勧めるのがドイツ銀行の「反逆のトレーダー」ジャレット(ライアン・ゴズリング)。フロリダの住宅市場を調査をして、返済もできないのに多額のローンを組んでいる低所得者の実態を見て「怒れるトレーダー」マーク役にスティーブ・カレル。若きトレーダーを後押しする「伝説のトレーダー」ベン役にこの映画ではプロデューサーを兼務するブラッド・ピット。この4人の中心人物が全員つながっているかと思えば、一部だけで、同時進行に別行動しているので、話がややこしくなってしまいます。

特に、ベンが、若きトレーダーとともに、CDSを買ったのか、売ったのかも分からず、コンガラガッテしまいました(苦笑)。まあ、何となく、最後は売り抜けて、若きトレーダーは今でもウオール街で事務所を構えているというオチになっていましたから、売り抜けたのでしょう。

とにかく分かりづらい映画でした。その理由を考えましたら、CDSとCDO(Collateralized Debt Obligation=債務担保証券)の区別が字幕を見ただけでは気付かずに、ごっちゃにしてしまったからのようでした。

あまり観たことがない白人男優がたくさん出てきて、名前も分からず、区別がつかなかったことも「敗因」でした。

帝室技芸員とジャポニズム

ハバロフスク寺院 Copyright par Duc Matsuocha-gourveneur

 生きているだけで儲けものです。探してみれば、何か楽しいことがあるものです。

 最近はまったのは、札幌の雪祀り先生からご紹介された超絶技巧派の陶工真葛(宮川)香山ですね。

 このブログでも、2月24日付で書きましたが、彼の超絶倫技巧には本当におっ魂消ました(笑)。

 初代真葛香山は、帝室技芸員にも選出され、フィラデルフィア万国博覧会やパリ万博などに作品を出品して、大賞や金賞を獲得します。

 ちょうど、欧米ではジャポニズムが大ブームで、日本の職人芸に眼を瞠った欧米の金持ち階級がこぞって、日本の作品を求めたと言われています。
 
 帝室技芸員は、いわばジャポニズムの前衛みたいなものだったんですね。

ハバロフスク寺院 Copyright par Duc Matsuocha-gourveneur

 日本の職人芸といえば、今の時代も変わりません。先日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープの買収(交渉中)が話題になりましたが、やはり、世界中の人は、日本の技術が喉から手が出るほど欲しいんでしょうね。

 米アップルも「ソニーに追いつけ、追い越せ」と頑張ってあそこまで大きくしました。

 半島や大陸の技術もかなりの日本人エンジニアが高額で雇われてブレインドレインされたことは、多くの人が証言しています。

 ま、これ以上書くと差し障りがあるかもしれませんので、やめておきます(笑)。

ハバロフスク軍事博物館 Copyright par Duc Matsuocha-gourveneur

 今、興味深く思っているのは、この「帝室技芸員」制度です。戦前、宮内大臣に任命された選考委員によって選ばれた芸術家のことで、任期は終身で年金がもらえました。明治23年から昭和19年まで、橋本雅邦、横山大観、富岡鉄斎、川合玉章らそうそうたる技巧派79人が選出されています。彼らは、ジャポニズムの盛り上がりの中、日本の美術工芸品を海外に売り込むための「お役目」を果たしたと言われます。

ハバロフスク軍事博物館 Copyright par Duc Matsuocha-gourveneur

 先日、テレビの「何でも鑑定団」で、加賀出身で、鉄打ち出し作品の鍛金工芸家山田宗美(1871~1916)という人の「狸置物」が出てきて、800万円もの鑑定結果が出て吃驚してしまいました。
 鉄打ち出し作品とは、一枚の鉄から気の遠くなるような忍耐力で、細かい部分まで裏打ちして作品を仕上げていくもの。銅の方が扱いやすいのですが、鉄は軽く打ってはビクともしない。しかし強く打ち過ぎると、ヒビが入ってしまう。この手加減が微妙で、山田宗美以外は、誰にもつくれないという代物なんだそうです。

 山田宗美は、あの帝室技芸員に内定されながら、過労が原因か、44歳の若さで亡くなってしまったので、選出されなかったとい逸話があります。
 

真葛香山には本当にびっつらこいた

 「真葛香山展」パンフレット

 先日、札幌の雪祀り先生から久しぶりに電話がありまして、「今、東京は日本橋三越で、『吉兆庵美術館蒐集 真葛香山展』をやってますから、是非ご覧になってみたら如何ですか。小生は三越カードの会員で、無料で見られますから、東京にいれば観に行けたのに残念です。えっ?真葛香山を知らない?渓流斎先生は、文人墨客なんて自称されてるようですが、その看板が泣きますねえ。一般800円ですけど、安売りチケットでも見つけて観に行かれたらどうですか」と、挑発されるではありませんか(笑)。

 ハバロフスクの街頭 par Duc Matsouocha

 そう言われますと気になるものです。最近都心に出る機会も多くなり、新橋第一ビル内のチケットセンターをいくつか覗いたところ、最後の店にだけ、この展覧会のチケットがあったのです。しかも、250円!これはめっけもんだと軽い足取りで観に行きました。

ハバロフスクの街頭 par Duc Matsouocha
 

 そしたら、大した魂消たですよ。最初の写真に掲げたように、「超絶技巧」!壺に2匹の蟹が戯れているような作品ですが、まるで本物そっくり!そのリアリズムは、まるで、陶工界の伊藤若仲です。

 真葛香山(まくず・こうざん)の本名は、宮川虎之助(1842~1916)。代々、京都の楽焼陶工の家で、香山は、父楽長造(1797~1860)に陶器や磁器の製法を学び、父の急死で、数えの19歳で家督を継ぎます。

 明治3年になり、京都から横浜に移り住み、真葛窯を開設します。折からのジャポニズムのブームで、日本の陶磁器が欧米から関心の的になり、香山の作品もフィラデルフィアやパリなどでの万国博覧会に出品され、金賞や大賞を受賞しています。

 ハバロフスクの街頭 par Duc Matsouocha
 
 そして、何とですよ、あの泣く子も黙るロイコペの略称で知られるロイヤルコペンハーゲンは、この真葛香山の陶磁器に影響されて、窯づくりを始めたというのです。本当にびっつらこいてしまいました。これは、ネット情報にはなく、会場に足を運んで得られた情報です(笑)。

 真葛香山には実子がいなかったのか知りませんが、弟子の半之助が養子となり、2代目を継ぎます。これまた、養父に似て天賦の才を発揮します。そして、半之助の長男葛之輔が三代目を継ぎますが、昭和20年5月の横浜空襲で、真葛窯は崩壊し、三代目自身とその家族と従業員11人が亡くなったというのです。これもネット情報には出てきません(笑)。「横浜空襲」と会場の年表に書かれていましたが、これは、はっきり言って、米軍による民間人を巻き込む無差別殺戮ですよね?

 米国人は、明治から、あんなに愛した真葛焼の窯まで破壊するなんて、本当に酷いことをしたものです。

 ハバロフスクの街頭 par Duc Matsouocha

 四代目は、三代目の弟智之助が継ぎますが、六〇歳を過ぎて継承したせいか、振るわず、昭和34年で、真葛香山の名前は途絶えました。

ちなみに、初代真葛香山は、帝室技芸員に選出され、明治の三大名工の一人。京都の敬愛する大先輩、野々村仁斎や尾形乾山の作品をモチーフに取り入れたり、下絵画師に下村観山や川合玉堂らを採用したりしてます。

 今ちょうど、他に、東京・サントリー美術館で「没後100年 (初代)宮川香山展」をやっているのですね。ご興味のある方、もしくは、このブログで興味を持たれた方は、両展覧会に是非足を運ばれたら如何ですか?早く行かないと終わっちゃいますよ(笑)。

「キャロル」は★★★

菅公

映画ちゅうものは、観る前に期待すればするほど、大きくその期待が膨れ上がって、少しでも意に沿わなかったりすると、がっかりしてしまうものですね。まあ、映画評論家さんらと違って、身銭を切って観ているので、これぐらいは、言わせてくださいな(笑)。

何しろ、この作品「キャロル」は、28日に発表される第88回アカデミー賞の主演女優賞と助演女優賞にノミネートされているんですからね。しかも、原作は、あの「太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミス。当然、サスペンスを期待するじゃありませんか。

監督は、ジュリアン・ムーア主演の「エデンより彼方へ」(2002年)のトッド・へインズ。この人、アメリカの古き良き黄金時代である1950年代を描くのがよっぽど好きなようですね。ファッションや車や街角などを再現するのが実にうまい。センスがあります。

キャロル役は主演女優賞にノミネートされているケイト・ブランシェット。彼女はオーストラリア出身です。テレーズ役は、「ドラゴン・タトゥーの女」で鮮烈な印象のルーニー・マーラ。彼女は、アイルランド系米国人で、大富豪一族としても知られていますね。

二人の女性の禁断の愛が描かれておりますが、当時の社会通念や風紀常識では、とても容認されず、原作者のハイスミスも、スキャンダルになるのを恐れて、他の筆名で発表していたようです。

ブランシェットは、既に「ブルージャスミン」で主演女優賞を受賞している演技派。マーラは、既にこの作品でカンヌ国際映画賞で女優賞を受賞しています。これだけ、材料がそろえば、文句なしのはずが…。

自分が男のせいか、ちょっと、間延びしている感じで、最後近くの「どんでん返し」めいた場面で、やっと、一気にスクリーンの世界にのめりこめたという感じでした。

ブランシェットは、恐ろしく美しくて醜い両面を持っていました。マーラは、最初から最後まで、顔つきからスタイルまで、まるで、オードリー・ヘプバーンのように見えました。

ハイスミスの他の作品に見られるように、上流階級の実に胡散臭い俗臭をこれでもか、といった感じで描かれている点は面白かったですが…。登場する男たちの言い分に同情して、てこ入れするように分かってしまえば、この映画の世界に入っていけないかもしれませんね。

単なる大金持ちの有閑マダム(死語!)の火遊び映画に過ぎなくなってしまいますから。

「オデッセイ」は★★★

 The Earth, Wind& Fire

リドリー・スコット監督作品、マット・デイモン主演の「オデッセイ」を見てきました。

上映までのCMも入れて、155分とちょっと長い映画でしたが、リドリー・スコットらしい手慣れた手法で、最後まで飽きらせないように「工夫」を凝らしています。

地球から2億2530万キロ離れた火星探査で、独り残された宇宙飛行士ワトニー(マット・デイモン)のサバイバル映画です。宣伝文句をそのまま使わせて頂ければ「水:無し 酸素:ほぼ無し 通信手段:無し 食料:31日分 次の救助:1400日後」という過酷な状況です。

どうなるか?見てのお楽しみですが、時代設定は恐らく21世紀後半かそれ以降なのでしょうが、この映画で中華人民共和国の宇宙局が出てきたことには驚きました。しかも、米NASAと協力して極秘プロジェクトを遂行することになることにさらに驚きました。

NASAのある技術者グループの幹部が中国系の米国人で、彼の伯父さんに当たる人が、中国で宇宙局の幹部をしているようで、その繋がりで、米中が仲良く国旗を並べて、救助船を打ち上げる場面も出てきます。宇宙飛行士ワトニーの救助活動の様子が、全世界の街頭大型ディスプレイで公開され、ニューヨークとロンドンのトラファルガー広場に加えて、北京辺りの群集も写し出されます。

はっはあ、ハリウッドも随分、世界第2位の経済大国・中国のマーケットを意識しているなあ、と思いましたよ。世界一の人口13億人を擁し、映画観賞者も日本の10倍近くあるのでしょう。ハリウッドの大スターも、プレミア宣伝では、東京を通り過ごして北京に向かっているといった噂を聞いたことがありますからね。最近、日本では洋画より邦画の興行成績の方がいいですしね。

まあ、そんな裏事情に拘ることなく、ただただ、ハラハラドキドキしながら見ていれば、それでいいんじゃないかという気もしてます。

ところで、これはSF映画ですが、このSFはScience Fiction(空想科学小説)の略であることはよく知られています。しかし、米英ではあまり、SFとは略さず、sci-fi(サイファイ)と略称するらしいですね。これは知らなかった。

「ブラック・スキャンダル」は★★★ 「俳優 亀岡拓次」は★★

Pulis

今日は、映画を2本も見てしまいました。勿論、自腹ですけど、au割引が効いたからです。今月いっぱいですが、大人1800円のところを1200円で見られます。

最初に見たのが、「ブラック・スキャンダル」Black Mass(スコット・クーパー監督)。実在したボストンのアイルランド系のギャング、ジミー・”ホワイティ”・バルチャーが、幼馴染のFBI捜査官コナリーと実弟の上院議員ビリーと手を組んで、イタリア系マフィアとの抗争に打ち勝ちますが、そのあまりもの残忍な手口でついに…。といった話は、もう既に、色んなところで紹介されているので、これぐらい書いてしまってもいいでしょう(笑)。

凶悪犯バルチャーを演じるのが、ジョニー・デップで、特殊メイクで、オールバックの薄毛と色付きコンタクトレンズでバルチャー本人になりきったところが見どころ。ちょっと、やり過ぎかなあ、て感じでしたが…。

凄く期待して初日の最初の公開時間を観たのですが、まあ、何と言いますか、カタルシスがないので、つまらなかったでした。1970年代後半が舞台になっていますが、バルチャーは逃亡し、最重要指名手配犯となります(2011年に逮捕)。映画は尻切れトンボで終わって、後は、スクリーン上で文字で説明するハリウッド映画がよくやる手(例えば「アメリカン・グラフィティ」などで見られる)を使って終わり。何か、肩すかしに合った感じでした。

後味があまりよくなかったので、ランチを外で取って、もう一本映画を見てしまいました。今度は邦画です。安田顕主演の「俳優 亀岡拓次」(横浜聡子監督)です。

そう言えば、本編が始まる前にスクリーン上でコマーシャルが流れますが、「葬儀会社」が2社も出てきましたよ。しかも、両方とも有名俳優を使った凝ったつくりでした。今、成長産業なんでしょうね。勿論、ブラックジョークですが。

さて、この「亀岡拓次」もつまらなかった。つまらない、と言っては言い過ぎでしたら、ちょとsur(シュール)し過ぎて、彼らの世界について行けなくなり、途中で出ていきたくなりました。

売れない俳優が、売れない俳優の役をやるのですから、何とも奇妙奇天烈。しかし、初主演した安田顕は、この映画で飛躍して、相場か為替市場か分かりませんが、今後株が上がるかもしれません。

2本見る間に時間があり、食事の後、紀伊国屋書店にも立ち寄って、本を買ったので、やはり、ちょっと疲れてしまいました。映画が面白ければ、スカッとしでしょうけど、残念。

SMAP解散騒動余波

Nouukavilla

この渓流斎ブログは、速報性を重視していません(笑)。ですから、またまた古い話を持ち出します。

 SMAPの解散騒動のことです。(何しろ、一国の総理大臣がコメントするぐらいですからね!)

 昨日、ラジオを聴いていたら、東浩紀さんという評論家が、津田大介さんというパーソナリティと対談していて、「SMAPの謝罪会見は、40歳過ぎの大人がやるものではない。日本は、あそこまでしないと許されないものか、と恐ろしさを感じる」といったような趣旨の発言を、かなりテンションの高いボリュームでしていたものですから、またまた興味を持ってしまったわけです。

 そこで、見ていなかった1月18日のCX系で放送された「スマスマ」の「生放送」を、私も興味津々でアイチューブ、いやユーチューブで見てみたのです。

 吃驚しました。東さんの言う通り「あそこまで」という感じでしたね。まるで、晒し者です。

 【未公開映像】では、リーダーの中居君が、涙をぬぐっている場面がありました。まるで、クーデターに失敗した「敗軍の将」のようでした。いや、「将軍」扱いさえされていません。中央にキムタクが陣取り、リーダーの中居君は画面に向かって左端に追いやられ、発言も最後から2番目。完全に権威が失墜した有様を暴露してしまったようです。芸能界も政治の世界も変わらないんだなあ、と思いました。

 SMAPは、不祥事を起こした企業の幹部のように、深々と頭を下げて「謝罪」していました。でも、誰に対して?そりゃあ、事務所の社長や副社長や次期社長に対してでしょう。(私も週刊誌を読んだりして、このクーデターの経緯について勉強しましたよ=笑)

 やはり、キムタクの計算高い無情な「したたかさ」を感じましたね。先輩の動向を冷血に伺い、事務所を独立した田原のトシちゃんと、事務所に留まって「大御所」になった近藤マッチを比較したのでしょう。SMAPは、デビューして3年も鳴かず飛ばずの苦労をしたので、芸能界の移ろいは、身に染みて感じていたのでしょう。結果的に、独立したトシちゃんは芸能界から干され、マッチの方は、事務所のトップに君臨して、モーターレースなど自分の好きなことができる環境に恵まれたわけですからね。

 キムタクは、したたか、と書きましたが、情にほだされず、一番頭がよかったということでしょう。また、自分の力を過信していない冷静さを保持し、事務所の力を認知していたということですね。キムタクなら、最後まで芸能界に残るでしょう。他の4人は今後どうなるか分かりませんが。

 いみじくも、リーダーの中居君は、以前ほかの番組で「アイドルは8年サイクルなんですよ。世代交代するし、8年持てば十分。俺たちはもう25年以上やっているからね」と、かなり冷静に分析していたのですが…。

 ちなみに、私のフリークであるビートルズ4人の活動は、1962年から、正確には69年までのわずか7年間だけでした。