我々は何処から来たのか?我々は何者か? 我々は何処へ行くのか? 第5刷

鮎塩焼(二乃宮)

元株式仲買人で後期印象派を代表する画家ポール・ゴーギャン(1848~1903、享年54)の晩年の作品にタヒチで描かれた有名な「我々は何処から来たのか?我々は何者か? 我々は何処へ行くのか?」(1898)があります。

我々は何処へ行くのか?ーについては、誰にも分かりませんが、最初と次の問い掛けの「我々は何処から来たのか?我々は何者か? 」については、最新の科学のおかげで、かなりのことが分かってきました。

いわゆる現代人は、ホモ・サピエンス=現生人類と呼ばれ、20万年前にアフリカ大陸で生まれました。クロマニヨン人、ジャワ原人、北京原人とは違って、かなり進化したヒト科の哺乳類で、脳は、現代人とほぼ変わらない機能を持っていたと言われます。

何かが起きたと思いますが、現生人類は、6万年前にアフリカから大移動を開始します。今の北はヨーロッパ、シベリア、東は中東、インド、中国を通り、南方は、東南アジアに移動します。そして、小さな日本列島には、3万8000年前から2万6000年前にかけて、南は東南アジアから沖縄を通って、西からは中国、朝鮮半島、そして対馬を通って、北からは、シベリアから樺太を通ってやって来て、混血して日本人のルーツになったということが分かってきました。

現代人は皆んな、アフリカ人だったというのが定説として確立したようです。ダーウィンの進化論が正しければ、アフリカ大陸に留まった現生人類は、黒人のままだったのが、北欧に行ったホモ・サピエンスは、長身で金髪碧眼の白人になり、アジアに行った現生人類は、黄色人種になったということでしょうか。その辺りの最新科学については、詳らかではありません(苦笑)。

北南米には、モンゴル、シベリア辺りから、当時陸続きだったアリューシャン列島を渡って来たのでしょうね。

宇宙誕生が138億年前、地球誕生が46億年前、生命誕生が38億年前、原人類の誕生が700万年前と言われてますから、日本人のルーツが3万年前程度というと、つい最近のような気がします。

これで、我々は何処から来て、我々は何者なのか、ひとまず分かりました。では、我々は何処へ行くのか?ーということが、課題に残っています。しかし、人生体験を積むと、ある程度、推測はできます。

私は、最近、物事に偶然はない、と確信するようになりました。すべて、因果応報です。現代人、日本人として生まれてきたことは、偶然ではなく、必然であり、人との出会いも偶然ではなく、必然だと考えるようになりました。

アダム・スミスの謂う「見えざる手」はないのです。

無知を晒け出す厚顔

ラジオを聴いていたら、古代シリアを研究している女性考古学者をゲストに呼んだ雑誌編集長が、急に「(古代シリアと)オスマン・トルコとの関係は?」と、自分の持っているあらゆる知識を動員して質問するのです。

女性考古学者は、ラジオなので顔は見えませんが、一瞬、?然とした表情をしたことでしょう。

人類最古の都市を築いた紀元前3000年頃のメソポタミア文明シリアと、確かにシリアを支配下に置いたとはいえ、13~20世紀に版図を拡大したオスマン帝国と一体、時代的に直接何の関係があるのでしょうか?

エジプトやシュメール文化やヒッタイトとの関係を聴くべきでしょう。

何でも知ったかぶりをする編集長には、もっと、勉強してから、インタビューしなさい、と声を掛けたくなりました。

1995年のバーホーベン監督作品「ショーガール」は★★★★☆

瀋陽故宮博物院  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

昨日、国有放送のラジオを聴いていたら、あまり知らない、従ってお名前を失念した若手映画評論家さんが、1995年に公開されたポール・バーホーヘン監督Paul Verhoeven の「ショーガール」が、当時の評論家と観客に「最低のクズ映画」と酷評されたのにもかかわらず、あんな名作はない、とべた褒めしていましたもんで、かなり触手を動かされてしまいました。(渓流斎は未見でした)

過激な暴力シーンや性的シーンが大問題になったということも、興味津々です(笑)。「所詮、男はカネと女」「人殺しのツラを見たくないのか」と豪語した「週刊新潮」の創刊者斎藤十一翁みたいなもんです(笑)。

私は、今さら、所有欲もないもんですから、レンタルでこの「ショーガール」を借りてみることにしました。何と、1週間も借りて驚きの108円です。1800円のロードショーが馬鹿に見えてきました(笑)。もっとも、DVDは、中古から新品まで、ピンからキリですが、中には7000円もの値が付いたものもありました!

大政殿 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

バーホーヘン監督は、1938年7月18日、オランダのアムステルダム生まれ。国籍もオランダのようです。今年78歳。誕生日は、渓流斎とおんなじですねえ(笑)。

彼の代表作でもある1987年の「ロボコップ」、1990年の「トータル・リコール」、そして、92年の「氷の微笑」で興行的に大成功を収めて、 満を持してメガホンを取ったのが、この95年公開の「ショーガール」です。

なるほど、地元米国では、17歳以下お断りの成人映画に指定されたように、tits and ass のオンパレードです。

米ラスベガスのエンターテインメントショーが舞台です。

主人公のノエミ・マローンNomi Malone (エリザベス・バークレーElizabeth Berkley=当時22歳) は19歳のダンサー。東部のある都市からスターを目指してラスベガスにやってきます。

そして、ノエミは、場末のストリップ劇場the Cheetahの踊り子から、有名ホテルのショー the Stardust ダンサーのオーディションに合格し、トップスターのクリスタルCrystal Conners (ジーナ・ガーションGina Gershon)の存在を脅かすほど成長します。

ショーの興行部長ザックZack Carey 役のカイル・マクラクランKyle MacLachlanが、インタビューで語っているように、登場人物のすべてが、男は女を利用して、女は男を利用してのし上がってやろうという野心満々の人間ばかりだというのです。当たってましたね。

大政殿の玉座 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

確かに、男女の裸が多く登場して、青少年の教育上好ましくないのかもしれませんが、それほど、欲情的でも、扇情的には見えないんですよね。無暗に羞恥心を煽ることもありません(笑)。

バーホーヘン監督も「この世で一番美しいものは、女性のヌードだ。僕は、画家や彫刻家が女性のヌードを題材するように映画の中で、女性のヌードを表現したかった」とインタビューに応えていました。(全て、レンタルDVDのおまけ付属として収録されていたもの)

今から20年以上昔の観客や評論家の眼には、単なるポルノグラフィーと映ったのかもしれませんが、21世紀の人間が見ると、一旗揚げてやろうというノエミの暴力的な衝動と、のし上がるためには手段を選ばない冷酷な野心は、よく描かれていると思います。

ノエミ役のエリザベス・バークレイ(1972・7・28~ )は、4歳からダンスを習っているらしく、驚くほど抜群にダンスがうまい。こんないい映画に初主演したのに、興行的には失敗して一時行方不明になったとか。

でも、今は健在で女優として頑張っているようですが、残念ながら私は、この一作しか見ていません。

「64 ロクヨン」後編は★★★☆

路上禁煙地帯

映画「64 ロクヨン」後編を見てきました。

前編があまりにも良かったので、その続きとして、見たのですが、前編と後編のタッチがあまりにも違い過ぎて、ほんの少し違和感を覚えてしまいました。

前編は、上下関係が歴然としている警察官僚という大組織の中で、怒号が飛び交い、厚い壁の中で必死に抵抗する男の悲哀が色濃く描かれておりまして、深い同情の念を抱いてしまいました。

しかし、後編は、一転して、謎解き推理を重視した三文オペラのようで、犯人にしても、犯人を追う警察にしても、周りで茶々を入れているブンヤにしても、何か皆んな薄っぺらく、「おいおい、こんなこと、現実ではありえないんでなえかえ?」と、こちらが突っ込みたくなるほどでした(笑)。

前編が面白かったのは、椎名桔平扮する県警本部長を始め、エリート・キャリアが、常に、中央本庁ばかりに目が向いていて、現場の仕事に全く関心なく、ただただ、組織の安泰と治安維持と情報操作と、そして何と言っても、己れの出世のことしか考えていない姿を俳優が見事に演じ、監督も見事に描き切ったことです。

原作とは結末が少し違うようですが、犯人のやむにやまれぬ動機と環境にもっと説得力があれば、満点だったんですけどね。ちょっと残念。

フィクションとはいえ、この作品は、公衆電話がほとんど消えて、スマホの時代になった現代では、もうあり得ない話になってしまいましたね。

最後のタイトルロールを見ていると、オールスターキャストの出演とはいえ、主演の佐藤浩市をはじめ、結構、二世俳優が多いので、映画界も親の七光を利用した二世時代か、という感想を持たざるを得ませんでしたね。あ、御案内の通り、生前の三國連太郎との不仲が伝えられた佐藤浩市は違いますけどね(苦笑)。

「海よりもまだ深く」は★★★★ 第25刷

是枝裕和監督作品「海よりもまだ深く」を幼馴染の角崎君と千葉県で観てきました。

なぜ、千葉県なのか?それは、東京の映画館(ここでは、丸の内ピカデリーと呼ぶことにします)の上映の開始時間が朝の9時か、もしくは夜の8時という人を馬鹿にしている時間帯だったからです。

なぜ、幼馴染と観たのか?それは、映画の舞台が東京都下の団地だったからです。しかも、私も角崎君もよく知っている清瀬の旭が丘団地が舞台だったからです。聞くところによりますと、是枝監督が幼少期から28歳まで、過ごしたのが、この旭が丘団地だったというのです。今、他にも阪本順治監督の「団地」も公開され、今や団地がちょっとしたブームです。

小さい頃、私たちは清瀬の隣の久留米町の団地の公務員住宅に住んでいました。角崎君のお父さんは式部省に勤務していました。ウチの父親は、中務省に勤めていました。清瀬の旭が丘団地には、小学校の校歌も作曲した音楽の荻野先生が新婚で住んでいたことがあり、一度遊びに行ったことがあります。久留米団地から旭が丘団地まで、自転車で40分くらいかかりました。

途中には、前のブログで書いたことがある「外人プール」がありました。今はなくなってしまいましたが、米軍の通信施設は、治外法権の立ち入り禁止地区として今でも接取されています。お暇な方は、見学に行ってみて下さい(笑)。

旭が丘団地といいますと、1992年2月14日の未明に、この団地内の旭が丘派出所で大越晴美巡査長(当時42)が殺害され、未解決のまま2007年に時効を迎えた事件があります。

美女の曲芸 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

私は、随分大昔の久留米団地に住んでおりましたが、よく清瀬には自転車で遊びに行ったものです。一番のお目当ては、映画です。ということは、昔から映画好きだったんですね。

今はもうなくなってしまったと思いますが、清瀬には西武池袋線の駅の踏切近くに映画館がありました。正式名称は知りませんでしたが、みんな「清瀬映画」と呼んでいました。そこでは、よく高倉健さんの「網走番外地」シリーズをよく見たものです。ほとんど邦画の2本立てでした。「夜のイソギンチャク」や「でんきくらげ」などの渥美マリさんのシリーズもよく観たものです。恐らく、もう誰も知りませんね(笑)。

永井豪の「ハレンチ学園」もこの映画館で観たと思います(笑)。昔、久留米駅東口に、もう今はないと思いますし、もう東口もリニューアルされて位置も変わったので、あったとしても寂れてしまったと思われる神保文具店がありました。まだ木造の店舗で、その近くの板塀に清瀬映画の公開映画写真宣伝の看板があり、悪ガキとしては、通りがかりにその看板を見ないふりをして、見るのが楽しみでした。

今では考えられませんが、公共の場で、しかも駅前の人通りが一番多い場所で、かなり露出の高い映画作品の看板(「夕子の白い◯」という映画でした)が白昼堂々と展示されておりましたから、かなり牧歌的な時代でしたねえ(笑)。

美女の曲芸 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

あれ?何の話でしたっけ?映画「海よりもまだ深く」でしたね。是枝監督の原案、脚本でしたから、本人の想い出をかなりフラッシュバックさせた自伝的要素が濃厚な作品だと思われます。俳優陣は、みーんな、いい味を出しています。何しろ、あの樹木希林と小林聡美ですからねえ。恐ろしいほど、演技過剰、じゃなかった、国宝級の演技巧者にかかってしまえば、もうあまりにも自然過ぎてしまい、何か、台詞を読んで演じているドラマではなくて、ドキュメンタリーを見ている感じがしてしまいました。

主演の阿部寛と真木よう子は、はまり役過ぎました。かつて島尾敏雄賞を受賞した新進気鋭の作家も落ちぶれて、今では探偵稼業で食いつないでいる篠田役の阿部寛は、ギャンブル狂の駄目男。その元妻役の美人女優真木よう子は、サイボーグだの、○○だのと、とかくネット上の噂が絶えませんが、あらゆることを犠牲にして、芸能と演技に人生の全てを懸けている感じでした。

美女の曲芸 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

清瀬は、昔の、とはいっても、大正から昭和の小説を読むと「K村」というイニシャルで、結核療養所の舞台として描かれることが多いです。池澤夏樹のお父さん福永武彦もここで入院生活を送り、名作「草の花」を発表しています。また、東村山市ですが、この近くにハンセン病の国立療養所全生園もありました。こんな大規模な療養所がつくれたのも、戦前は、水と空気がきれいで緑も多く、都内の武蔵野鉄道(西武)線沿線ながら、まだ土地が安かったからでしょう。

また、清瀬といいますと、埼玉県の志木市を結ぶ志木街道のケヤキ通りが大変懐かしい。映画の中でも出てきたので、一人で感動してました。父の中務省時代の同僚がここで、確か、飲酒運転で交通事故を起こし、隣席に同乗していた若い女性と一緒に亡くなったことから、あの週刊新潮の記事になったことがあります。「こんな田舎の事件が週刊誌で取り上げられるとは!」。渓流斎多感時代の鮮烈な思い出です。

何で、この辺の地理に詳しいかと言いますと、渓流斎ご幼少の砌、この辺りをシマにしていたからです。シマとは、池袋から近い順に、ひばりが丘(ひばりヶ丘団地で有名。ファミレス「スカイラーク」の発祥地だったんですよ!私は、今はなきレコード店「ひばり堂」によく行ったもんです)、久留米(魅力的な商店あまりなし。アメリカンスクールと自由学園があります。一時、作家藤沢周平や漫画家手塚治虫も住んでいたとか)、清瀬(映画館通い)のことです。昔は北多摩郡と言われた東京都下です。県境の新座市(幼馴染みの角崎君が通っていた教会もあり、結構、宗教関係か軍属の米国人の家族が住んでいました)もフラフラしていたのでよく熟知しています。

以前、消滅した渓流斎ブログに書きましたが、「智慧伊豆」こと、島原の乱(1637~38年)を平定した総大将、老中松平伊豆守信綱(後の川越藩主)の墓がある平林寺は、新座市にあります。小学生のとき、毎年、歩行会と称して、久留米四小から野火止用水を通って、平林寺まで、十里ぐらいかなあ、よく歩きましたよ。また、平林寺では、友人の誕生会なども開かれました。お母さんも大変だったでしょうけど、今から思うと、進んだ生活を送っていたんですね。

そうそう、忘れるところでした。豊臣秀吉の五奉行の一人だった増田長盛の墓もあります。五奉行なのに、今、籾井さんとこでやってる大河ドラマ「真田丸」に全く登場しませんね(笑)。何で、五奉行の増田長盛の墓が、平林寺にあるのか?

若者よ、平林寺に行け!

何か、映画の話からズレてしまいましたね(笑)。

ちなみに、久留米は、市政化制定後、東京都北多摩郡久留米町から東久留米市となり、我々の心の故郷だった久留米団地は、老朽化で逸早く、この地球上から消滅しました。

ついでながら、母校である久留米第四小学校も廃校となりました。

残っているのは思い出だけとは、あまりにも、悲し過ぎる(涙)。

「殿、利息でござる!」は★★★★ 第4刷

調神社

忙しい生活の中、時間を割いて、わざわざ映画を見てきましたよ。

それにしても、最近、殆んど、いや、全く、遊んでいませんね。

特に、夜遊びとやらは、ピタリとやめて、9時か10時には寝てしまう極めて健康的な生活です(笑)。

落語家の名跡三遊亭とは、どういう意味か、御存知ですか?三大遊びのことです。子供じゃなければ、御想像はつくと思いますが(笑)、それだけ、名人と言われた落語家は、「藝の肥やし」とか何とか嘯いてよく遊んだものです。

私には遊びが足りない。
私には遊びが足りない。
私には遊びが足りない。

まあ、これ以上書きますと、「シャイニング」のジャック・ニコルソンになってしまうので、映画を観に行くことにしたわけです。

映画は、今話題沸騰の時代劇「殿、利息でござる!」(阿部サダヲ主演)です。京洛先生からは、「あんなのつまんないから、やめておけ」と忠告されていたのですが、観ても損はありませんでした。本当にあった話だというので泣かせます。この映画で、江戸時代の百姓の「肝煎り」「大肝煎り」という役職を知りました。

でも、費用対効果は、人によりけり、かもしれませんね。

「平成の司馬遼太郎」とか持ち上げられて
ここ最近、どこにでも出てくる歴史家の原作です。私も、彼が書いた某新聞の記事で、この原作の元資料は、彼の読者から持ち込まれて、彼が感激して書いたものらしいですね。

ですから、話そのものは、面白いです。

京洛先生が「観るのはやめておけ」と忠告されたのは、恐らく、このいつもシャシャリ出てくる原作者が鼻につくからなのではないでしょうか。

私も、映画を観ていて、原作者本人が出演する場面が予告もなく出てきたので、思わず、「あっ」と低い声でうなだれてしまいました。

長くなるので、この辺で(笑)。

「64-ロクヨン」は★★★★★  第2刷

絶景 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

13日の金曜日は、忌み嫌われておりますが、その13日の金曜日に都心の某所で、来日された京洛先生を囲んだ会に20人ほど参加して行われたようですが、残念ながら、渓流斎は参加できませんでした。

大いに盛り上がったようですが、大抵はインサイダー情報ですから、こんな最公約数のブログに書けないことばかりですので、参加できなくても、同じかもしれません(笑)。

でも、最近、夜遊びしてませんね。昨年でしたら、このブログに、いつも「昨晩も痛飲して二日酔いです」と書くのが、恒例でしたが、事情があって、お酒は一滴も呑んでいません。

まあ、呑まないなら、呑まないで、死ぬわけではないことが分かって、何とかなることを新発見した感じです(笑)。

さて、その京洛先生が「映画、クロヨンを観ましたか?探訪ブログ記者さんには必見ですよ。あたしあ、面白かったので、後編も観ようと思ってますよ」と、遠くから伝令のような飛脚を飛ばして来られました。

「クロヨン」ではなくて、「ロクヨン」だと思いますが(笑)、この映画、ご案内の通り、前編と後編の2本に分かれていますし、どびきり見たい女優さんもいないし、正直、触手が動いていなかったのですが、京洛先生が思わせぶりな言い方をされるもんですから、「しょうがないなあ。観て見るか」と重い腰を上げたのでした。

例によって、内容に触れますから、この先は、これからご覧になる方は読まないでください。

また、著作権で映画写真は使えませんから、いつものように、松岡総裁の壮大な写真をお楽しみください。

絶景かな Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

JALの御巣鷹山事件を扱った「クライマーズ・ハイ」など映画化作品がたくさんある横山秀夫さん原作で、「このミステリーは凄い」賞かなんかで、第一位を獲得した作品だそうです。小生は、映画は観ても、推理小説はほとんど読まないので、ほとんど分かりませんが、横山作品の評判は聞いております。

彼は、群馬県の最大県紙「上毛新聞」記者出身ですから、警察と記者クラブの関係については、お手の物ですが、ちょっと、カリカチュアといいますか、デフォルメし過ぎているような感じがしました。作品には、上毛新聞と思われる東洋新聞をはじめ、全国紙の朝陽新聞、毎報新聞、読日新聞のほか、関東経済新聞、テレビのNHA、おまけに中央通信と情勢通信まで配置されておられるので、個人的ながら笑ってしまいました。

絶景なり Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

物語は、わずか1週間しかなかった昭和64年に起きた少女誘拐事件で、時効を間近に控えた14年後の平成14年の群馬県警内部が舞台です。当時、県警の捜査班だった三上義信(佐藤浩一)は、恐らく未解決事件の責任を取らされて、今では広報官に左遷されて、事件の匿名発表や警察庁長官の「64事件」現場と被害者宅訪問の取材などを巡って、記者クラブと対立して、「中間管理職」のように、間に挟まれて苦悩する姿が描かれます。

警察内部の出世争いといいますか、警務部と刑事部との内部抗争が全面に出てきて、まるでヤクザ映画みたいな緊張感があって、ハラハラドキドキさせられ通しでした。特に、キャリアの県警本部長辻内役の椎名桔平や、同じくキャリアの警務部長赤間役の遠藤賢一、それに三上の上司で責任を取らされることなく捜査一課長に出世した松岡(三浦友和)らの鼻持ちならない傲慢さと冷血な事務的態度はピッタリのはまり役で、不条理なヒエラルキーの世界に身を置く人なら誰でも、共感できる場面が多々あったのではないでしょうか。

そういう私も、とても他人事に思えず、佐藤浩一と一緒に涙が出てきましたよ(笑)。

原作を読んでいないので、この後、どんな展開になるか、さっぱり分かりません。でも、そこがいい所で、来月の後編公開が楽しみになりました。

実は、最近の日本人の俳優はよく分からなくて、東洋新聞キャップ秋川役の瑛太と、広報室係長諏訪役の綾野剛との区別が最初はつかず、困ってしまいました(笑)。とはいえ、この映画は、今考えられる豪華キャスト、オールスター出演というのは間違いないでしょう。

もう、クラリオンガールと言っても、誰も知らないでしょうが、その元クラリオンガールの烏丸せつこが出演しているというので、観たのですが、観終わっても誰だったのか分からなかったのです。後で、映画の公式サイトを見て見たら、吃驚。あの捜査員日吉の母親役がそうだったんですね。えっ?あのお婆さんが?昔はグラマー女優(古い)として、ブイブイ言わせていたのに、面影が全くない(失礼!)。思わず、卒倒しそうになりました。

末岡氏のレガシィ

風神雷神図

著名な作曲家末岡武彦氏から、「累計300万アクセスを誇る貴殿のブログで拡散して下さい」との御用命がありましたので、早速、拡散することに致します。

末岡氏のコメント。

6曲のファンファーレと18のシーンであなたの精神を元気にしょよう。 https://www.youtube.com/playlist?list=PL1LRwsAgYXMh9L3LFkezM5KBjejOZosQe

再び、末岡氏のコメントです。

4番は16歳の時のピアノ協奏曲の一部です。5番は20年程前に出来上がったピアノ曲を譜面化し、それを吹奏楽用に編曲しました。一撃必殺の5曲よろぴく!!!!

一撃必殺とはな…

二都物語 京都の展覧会はガラガラ 19th edition

 
 臨済禅師1150年、白隠禅師250年遠諱記念「~心をかたちに~『禅』」展 Copyright par Kyoraku-sennsei

 連休のど真ん中。今日は久しぶりに、京都の話題です。堀川三条西入る「三条商店会」の洋食レストラン「力」の女将さんも、この渓流斎ブログを熱心に読んでくださっていらっしゃるらしいので、偶には、べんちゃらしないといけませんね(笑)。

 とは言っても、いつもの通り、京洛先生からのお手紙からです―。

 …連休は如何お過ごしですか。東京は、上野の「若冲展」が大賑わいだそうで、火事と喧嘩は江戸の華、と言いますが、帝都の皆さんは、今、「若冲!若冲!」で大騒ぎのようですね。

 昔の日本人も、今の日本人も、たいした違いはありません。あるように言うのは、理屈をこねる似非インテリです(笑)。

 若冲の生誕300年なんてのも、数年前までは、誰も知らないことだったと思います(笑)。若冲が生まれた、京都の「錦(にしき)」も、その遺徳を、あやかろうと「若冲生誕300年」の垂れ幕が下っています。…

 あれあれ、いわゆる一つの「便乗商法」ですか?

 …ひと昔、ふた昔前までは、東西約400メートルの長さの、狭い錦小路には、魚屋、八百屋など生鮮食料品店が、ひしめく商店街でしたが、今は漬物屋、飲食店などが中心になり、市場の雰囲気から、観光客相手の単なるお土産屋に衣替えしています。錦で店を持っていた幼馴染が「なんで、餅つきをするような店が錦なんや、あほらし!」と悲憤慷慨していましたが、行ってみるとわかりますが、外国人の観光客が店先に出してある試食品を食べまくり、その汁などが、通行人に付いたり、まあ、マナー、作法の悪さは目につきますね。…

 何か、目に浮かぶようですね。幼馴染さんの悲憤慷慨はよく分かります。

 …東京は築地の魚市場が今年11月に愈々、豊洲に移転しますが、今の「築地」は、京都の「錦」と同様、これからは、観光客相手の”疑似市場”街に変身すると思いますね(笑)。同時に外国人観光客の問題も浮上するでしょう。

 このGWには、最後の「築地市場まつり」が開かれているようですが、これまた、「おっ!何かやっているそうだ」、「ひょっとしたら安いものがあるかもしれない」と、次々、人が集まるわけです(笑)。そこに、マスコミがまた、「有名落語家がやってくる!」と喧伝するのですから、GWという事もあって相乗効果満点です。…

 IT族がよく使いたがる、シナジー効果ですね(笑)。京都からでも、帝都の様子が手に取るように分かるようですねえ。

臨済禅師1150年、白隠禅師250年遠諱記念「~心をかたちに~『禅』」展 Copyright par Kyoraku-sensei

…こちらでは今、京都国立博物館で、臨済禅師1150年、白隠禅師250年遠諱記念「~心をかたちに~『禅』」展を開催しています。

 GWのさなかですから、上野の若冲展のように大勢の来場者で入場制限でもあるかと思って、見に出かけましたが、3日の祝日なのに、スイスイ入場でき、国宝、重文多数をじっくり拝めました。

 京都にはGW最中はいつも以上に観光客が押し寄せているのですから、「禅展」にも、ついでに京博に立ち寄ると思ったのですが、予想は外れました。…

 あら、帝都とは全然違うんですね。

 …やはり「若冲」に比べ、禅展は抹香の匂いがするのですかね?(笑)。やはり、臨済、白隠禅師と言ってもチンプンカンプン、一般向けではないのですね。

 主催の日本経済新聞は、紙面で力を入れて色々紹介記事を載せていますが、金儲けしか、眼中にない読者ばかりですから、文化程度も知れたものかもしれません(笑)。同時に、NHKと日経の動員力、媒体力の差を感じてしまいました(大笑)。

 ちなみに、この「禅展」は、東京・上野の東京国立博物館でも、今秋10月18日~11月27日まで開催されますが、結果は京都と同じかもしれませんね(爆笑)。…

 鋭いご指摘ですね。

 小生も、「若冲展」を見に行った会場で、「鳳凰ってホントにいるんだ?」と、親娘が大きな声で会話しているのが耳に入って、思わず、「鳳凰は想像上の鳥ですよ。英語でフェニックス。宇治の平等院鳳凰堂も有名ですね」と、お節介にも応えてしまいました(笑)。

 余計なお世話でしたが、親娘さんは感心してました(笑)。

若冲展には大した魂消た 5th edition

これから城壁に上る Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 ゴールデンウイークの真只中に無謀にも、東京・上野公園内の東京都美術館で開催されている「生誕300年記念 若冲展」(約80点展示)を観に行ってきました。

 (例によって、著作権の関係で若冲さんの写真は掲載できません。いつもながら、松岡総裁の写真でお楽しみくだされ)

 伊藤若冲(1716~1800年)、江戸時代の18世紀後半に京都で活躍した謎の大天才絵師。裕福な青物問屋の長男として生まれて、23歳で家督を継ぎ、40歳で次弟に家督を譲って、画業に専念しますが、基礎は学んでもその後はほぼ独学だったらしく、その独自の手法についてはいまだ解明されていないそうです。

 何しろ、驚くべきことに19世紀のフランスのクロード・モネらによって始まる印象派の点描画法などは、その前から既に、若冲が100年前から確立していたというのですからね。

 こんな大天才が身近にいたのにも関わらず、その後ほとんど顧みられることなく、私も含めて、世間で再評価が始まったのが、わずか16年前の2000年。「没後200年記念」として京都国立博物館で「若冲展」が開催されて以降です。

 大変話題になりましたから、私も、是非観に行きたかったのですが、結局、観ておりません。その後、何かの展覧会で、1、2点を垣間見たことがありましたが、今回のような大展示会は初めてです。

 その前に、日本人より、ずっと昔に、この若冲に魅せられてコレクションを始めた米国人がいたんですね。ジョー・プライスさんというエンジニア。父親の会社の本社ビルを建築する際に、日本の帝国ホテルも設計したあのフランク・ロイド・ライトの仲介役になり、1953年、日本美術蒐集が趣味だったライトと一緒にニューヨーク市内の古美術商を回っていたとき、若冲の「葡萄図」(今展でも出品)を一目見て気に入り、その後、当時ではあまり評価されていなかった若冲を中心に、収集を始めたといいます。

 プライスの奥さんは、通訳だった日本人の悦子さんで、今は財団をつくって広く公開しています。2013年には東日本大震災の復興を願ってコレクションが仙台美術館などで巡回公開されたことは記憶に新しいですね。

 城壁を歩く Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 印象派の100年も昔に独自の画法を生み出していた日本人の天才を、最初に米国人が発見していたなんて、色んな見方や御意見があるでしょうが、私は、作品が散逸しなくてよかったと思います。感謝しなくてはいけませんね。

 さて、肝心の展覧会ですが、バックに天下のNHKさんが控えているせいか、そして、そのNHKさんが硬質な番宣、つまり番組宣伝放送番組を次々とオンエアしてくれるもんですから、開催前から大評判で、日本中、世界中から押しかけたと思われる人、人、人、人…でした。

 残念なことに、この天下の大NHKの膨大な影響力を全く知らないのが、灯台下暗し、本家本元のNHK会長さんなのですから、何が哀しくて、あんなつまらない人物を頭として抱いているのか不思議です。

 まずは、入場するまで70分から90分待ち。そして、やっと中に入ることができても、作品の前には、三重、四重どころか、五重、六重、いやいや、七重、八重もトグロを巻き、人いきれで卒倒しそうになります(苦笑)。

 幸いにも、私は六尺の長身ですから、遠くからでも拝見できますが、小さい方は大変でしょうね。

 城壁角の望楼 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 この展覧会で、何と言っても、宮内庁(三の丸尚蔵館)御所蔵の「釈迦三尊像と動植綵絵」33点が出色でした。特に、鳥から動物、魚、貝、植物などありとあらゆる自然の動植物(変な言い方ですね=笑)が細密に描かれている作品は圧巻で、まさしく圧倒されて、何度も絵の前を(遠くからですが)ウロウロしました(笑)。この33点だけを見に来るだけでも十分価値ありです。全ての作品に集中していては途中で疲れ果ててしまうでしょうから、このコーナーまで余力を残しておきましょう。

 江戸時代ですから、若冲さんは恐らく、本物の虎や象を見ていないでしょう。これまた、恐らくですが、長崎の出島から色んな文物が流れてきて、京都では普段見られない動植物でも、西洋の図版画などで参照できたのではないでしょうか。それに、若冲さんは、大変高価な絵の具を使っているらしいですね。

とにかく、卒倒するほど根気がいる細かい作業を成し遂げた人です。やはり、若冲さんの描く鶏はピカイチですね。絵画だけで、言葉をほとんど残すことがなかった彼は、ただ一言、「千載 具眼の徒を俟つ」と認(したた)めたと言われています。「1000年後には私の絵を評価してくれる人が現れるだろう」といった意味ですが、「いえいえ、若冲さん、1000年も掛かりません。200年で十分でしたよ」とお伝えしたいです。

「レヴェナント」は★★★ second edition

杜甫草堂入口   Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

今年度のアカデミー賞主演男優賞(レオナルド・ディカプリオ)と監督賞(アレハンドロ・G・インタリトゥ)と撮影賞を受賞した「レヴェナント 蘇りし者」を近くのロードショウ館で観てきました。

IMAX(アイマックス)というものを今回初めて知りましたが、映像、音響とも一歩先に行く鮮明で迫力ある映画が楽しめる方式なんだそうで、一般1800円のところ、2000円とちょっと割高になっています。

あたしゃ、そこまで拘らないので、普通の映写で十分でした(笑)。

以下は、ネタバレの内容に触れますので、これからこの映画をご覧になる方は、お控えなすって。さようなら。

 杜甫像  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

とにかく、疲れる映画でした。前触れの宣伝を含めて、拘束時間2時間55分と長過ぎます。最後の方でトイレに行きたくなってしまい、大変でした(笑)。

何と言いますか、汚いし、苦しそうだし、寒そうだし、飢え死にしそうだし、命を取られそうだし、何か、ゆっくり落ち着いて観ることができませんでした。映画館には結構ギリギリに着いたら、混んでいて、一番前の席しか空いていなくて、顔のアップがデカ過ぎました。

美人さんなら我慢できますが、泥んこまみれで、何か曰く因縁がありそうな、胡散臭いおっさんばかり登場しますから、疲れました。

でも、主演男優賞をやっと獲得したヒュー・グラス役のレオ様は、どこまでスタントマンを使っていたのか、よく分かりませんでしたが、とにかく体当たりの演技で、土の中に入れられたり、河から滝で落ちたり、馬ごと崖から落下したり(これはスタントマンでしょう)、そして何よりも、デカい大熊に襲われて瀕死の重傷を負ったり、観ている方も引いてしまうほどでした。(映画の中で大熊のことを、レオ様は、ハイイログマではなく、「グリズリー」と言ってましたが、本物だったんでしょうか?いや、本物だったら、本当に死んでしまいますよね?)

 杜甫草堂大雅堂  Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

大自然の凄さには圧倒されますが、人間の存在そのものが悪のような気になります。

でも、とんでもない極悪人や善良な人間が登場するわけでもありません。実際にあったことを元にした作品だそうですが、元々いたネイティブ・アメリカンが残忍そうで、良心的であったり、征服者の白人が、良心的そうで残忍だったりして、何か描き方も中途半端な感じがしました。

悪役ジョン・フィッツジェラルド(トム・ハーディ)も何処にでもいそうなワルで心底憎めない感じです。ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)も何処か頼りない感じで、最後のフィツジェラルド討伐に連隊を率いて行けばいいものを、グラスと二人だけで行くのですからね。その先が想像できました。

厳しい大自然の中で、低音で流れるオーケストレーションは、映像の邪魔にならず、そう言えば、坂本龍一が担当していたんだな、と思い出して、注意深く音楽を後から聴くほどでした。映画の中で、音楽の存在に気付かせないことは、なかなかの手腕でしょう。

いやあ、我ながら、つまらんこと書きましたが、タダで観て、文句を言ってもお金をもらって、周囲から「先生、先生」と言われてふんぞり返っている評論家や記者さんよりマシでしょう(爆笑)。