「畿内説」と「九州説」などで長年、論争が続いていた邪馬台国の所在地が、この一冊で決着がつきそうだ、という記事を読みました。(道新10月2日付朝刊)
この本は、元産能大教授の安本美典(やすもと・びてん)氏の『大和朝廷の起源 邪馬台国の東遷と神武天皇東征伝承』(勉誠出版)。何しろ統計数学とパソコンを使った新しい文献学を導入して、『古事記』『日本書紀』『魏志倭人伝』などの史料を分析して、「邪馬台国は北九州で起こり畿内に移動して大和朝廷となったとみるのが自然」と結論付けています。7月に発売され、3360円という高価な本なのに「売切れ続出」ということですから、興味を惹かれないわけにはいきません。
安本氏のインタビューの中で最も面白かったのは、神武天皇の在位の話。
―『記紀』には、神武天皇らの寿命や在位が長いといっても、旧約聖書のアダムの930歳のような極端な話ではない。古い時代には春と秋に2度年を取る「1年2歳」の習慣があり、筆者が操作した数字だということが分かる。文献の検討の結果、初代から二十代までの天皇の在位は、平均約十年とみることができ、これに当てはめると、神武天皇は270-80年頃の人。その五代前の天照大臣は230年頃の人となり、『魏志倭人伝』の卑弥呼とぴったり重なるー
安本氏は、天照大臣=卑弥呼とは言ってませんが、私のような古代史門外漢な人間にとっては、もしそうなら、これまで、『記紀』に対して持っていた偏見が一気に吹き飛んでしまいそうです。話が長くなるので、これで止めますが、我々、戦後生まれは、結局「戦後民主主義教育」にどっぷりつかっていていることにハタと気がつきました。