希望は絶望を打ち砕く

 ヴェニス

北海道を中心に活躍するゴスペルシンガーにkiki(キキ)さんという人がいます。本名は分かりませんが、(恐らく)30歳代の日本人女性です。

日本人離れした声量と音感の持ち主と言っていいでしょう。聴く人を必ず感動の渦に巻き込むだけではなく、聴く人に、自ら参加したい気持ちにさせます。その通り、彼女の仕事の一つが、一人の歌手としてでなく、100人から200人くらいの素人の人たちをワークショップで鍛え上げて、クワイアー(合唱団)として育て上げ、コンサートで一緒に歌を披露する活動もしています。「アメイジング・グレイス」「オー・ハッピーデイ」「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」などゴスペルでもスタンダードになった曲を200人くらいのクワイアーが斉唱すると、まさしく圧巻そのものです。

彼女がゴスペルに出会ったのも、紆余曲折の末、偶然に近いものがありました。若い時、というより、まだあどけない子供のときから、家庭の事情で、普通の子供とは違う道に踏み込んで、16歳の頃からもうすでに自活せざるを得ない状況になっていたようです。そんな苦悩の連続の中で知り合ったのがゴスペルなのです。何度か渡米して、本格的にヴォイスレッスンを受けて、ついに3年前にCDデビューも果たしました。

そこまでの道に辿り着くのにも大変なものがありました。特に重篤な病魔に襲われた時は、半ば、人生を諦めようかという境地に陥ったことがありました。そんな苦しみと闘っていた入院中に、ある人が見舞いに訪れて、こんな言葉をプレゼントしてくれたそうです。

「忍耐は錬れた品性をつくり、錬れた品性は希望をつくり、希望は絶望を打ち砕く」

聖書に出てくる言葉だそうです。Kikiさんは、この言葉を胸に、辛い境遇を克服して何とか持ちこたえてきたそうです。

もう一度書きます。

「忍耐は錬れた品性をつくり、錬れた品性は希望をつくり、希望は絶望を打ち砕く」

まさしく、言葉の持つ力ではないでしょうか。