ウイークリーマンション・オーナーの転落と再起

中国・大連駅周辺 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

先週のある晩、独りで場末の無産者階級の行く一膳飯屋で、鯖味噌定食とお銚子一本で晩酌しながら、店で付けっ放しになっているテレビを見るとはなしに見ていました。

その番組は、週刊誌の「あの人は今」見たいな企画番組で、かつてのバブル期にウィークリーマンションのオーナーとして飛ぶ鳥を落とす勢いだったツカサマンションの川又三智彦元社長(69)の「その後」をやっていました。

川又さんは社長としてテレビコマーシャルにも出演していたので、私も知っておりました。彼は一時期は、東京・渋谷の超高級住宅街として知られる松濤に大豪邸を建てて、総資産1000億円と言われた不動産王でした。

それが、今や、自宅も手放し、家族も離散し、ホームレスのように狭いネットカフェに寝泊まりし、東京駅の駅前の一等地にスペースが3畳間ほどの、パソコンの机と椅子を置いたら、ギリギリの事務所を借りて、再起を図っていました。

 中国・大連駅周辺 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

ただ、唯一、救われたのは、そんな転落してしまった人生なのに、少しも明るさを忘れず、前向きで、コンビニで買ってきたモズクをネットカフェの狭い空間で啜りながら、絶えず笑顔と笑い声で過ごしていたことでした。

バブル期は、銀行から「お金を借りて下さい」「借りて下さい」と何十億円も何百億円も貸してくれたそうです。ウィークリーマンションは、ピーク時には40拠点、3600室もありましたが、バブル崩壊で倒産。幸い、米リーマン・ブラザースの傘下に入って再建することができましたが、結局、2008年のリーマン・ショックで、川又氏自身も870億円もの債務を背負って自己破産したそうです。

現在、毎月の年金14万円だけで、生活しているそうです。

いやあ、普通の人だったら、自殺するか、耐えきれず、失踪してしまうかどちらかなのに、笑顔が絶えない彼の姿を見て、尊崇の念すら湧いてきてしまいました。

 中国・大連駅周辺 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

彼は今、再起を図って、福島県の磐越西線猪苗代駅近くにデイケアセンターを建設しようと、頑張っている姿で番組は終わりました。

彼のバイタリティーは何処から来るのか不思議だったので、家に帰って調べたところ、テレビでやっていた番組ほど生易しい状態ではなかったことが分かりました。ストレスからか、2度も脳梗塞に襲われて、介護の必要性を痛感したそうです。だから、介護施設をつくろうと頑張っていたんですね。

バブル絶頂期は総資産1000億円と言われてましたが、「社長としての給料は1000万円もいかなかった」と、日刊ゲンダイの昨年のインタビューに応えています。このインタビューでは、自宅は松濤ではなく、目黒区の祐天寺と書いてあったので、平仄が合わないと思いましたが、現在はホームレス状態というのは変わらないようでした。

テレビに出てきた川又元社長は、小綺麗な格好をしていたので、ネットカフェ生活で、洗濯はどうしているのか、冬物服は何処にあるのか、レーシック手術で眼鏡なしの生活になった、と語っていましたが、自己破産したのに、手術代はどうしたのだろうか?と様々な疑問も浮かびました。

これまた、調べてみると、債権者も倒産して、870億円もの債務もほぼなくなり、数冊本を出しているので、印税収入があったからかもしれないと推察しています。

いずれにせよ、こんな波乱万丈な人生を生き抜く川又さんのバイタリティーには本当に感服してしまいました。

「甘き人生」は★★★☆

祇園祭「後祭」で賑わう鉾町の一隅 Copyright par Kyoraque sensei

またまた、イタリアに行きたくなり、手元不如意だとそう何遍も簡単には行けないので、イタリア映画を観に行ってきました。

名匠マルコ・ベロッキオ監督の「甘き人生」です。会場の有楽町・スバル座は、昭和40年代の雰囲気をいまだに残す都心のオアシスです。何しろ、早いもん順で、座席指定なんかないんですから(笑)。アナウンスも「ごゆるとお寛ぎ下さい」などと明治時代の演歌調の口振りですからたまりません(笑)。朝一番で行ったらガラガラでした。

名匠ベロッキオとか宣伝されても、私は初めて観る彼の作品でした。日経の映画評で五つ星を獲得していたので、「これは絶対観なきゃあかん」と機会を狙っていたのです。

例によって、これから書くことは、内容に触れるか、観た人でなければ、さっぱり理解できないでしょうから、これからご覧になる方はこの辺で。。。。

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上映時間は2時間10分ということでしたが、随分長く感じられました。4時間ぐらいです。前半は、繰り返しのような場面が多く、緊張感が途切れて退屈してしまいました。

面白くなったのは、終了30分ぐらい前です。観客に1時間半我慢に我慢を重ねさせて、一気に弾けるといった感じです。これはハリウッドではできません。さすがイタリア映画です。

しかし、タイトルの「甘き人生」はどうにかならないもんですかね?恐らく、フェリーニの「甘い生活」(1960年)(こちらも主役は新聞記者)を文字ったのでしょうけど、原題は「Fai bei sogni(よい夢を)」。イタリア人ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニによるベストセラー自伝小説を映画化したものですから、配給宣伝部ももう少し考えても良かったのでは?

主人公の新聞記者のマッシモ(ヴァレリオ・マスタンドレア、44)は、1990年代初めのサラエボ内戦を取材し、イタリアに帰国するとパニック障害に襲われます。子供の頃、母親が急死し、その死因が分からないまま長年葛藤していた潜在意識が爆発した格好でした。

映画では、過去と現在を何度も往復するので、観るのが少し疲れてしまう場面もありましたが、主人公のマッシモがパニック障害で塞いでいた頃に、新聞の読者投稿に対して、その悩みに応える形で自分の少年時代の母親喪失体験を書いて、大反響を呼ぶ辺りから、やっと話が面白くなります。

主人公マッシオの相手役精神科医のエリーザ役は、アカデミー賞外国映画賞を獲得した「アーティスト」のヒロイン役を務めたベレニス・ベジョ(40)でした。

これは実話で、ベストセラーになった作品なので、イタリア人で知らない人は少ないのかもしれません。勿論、本と映画は違いますから、こういう「ワケのわからない」(笑)映画は、ボディーブローのように後になってから効いてくるものです。案外心の奥底に残る作品かもしれません。