言ってはいけない

 街頭で Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 アメリカの次期大統領となる「トランプ自伝」を実際に書いたゴーストライターが、「トランプは、教室でじっとしていらない幼稚園児のようで、これまで、1冊も本を読み通したことがない」と暴露している記事を読み、椅子から転げ落ちるほど、驚いてしまいました。

 彼によると、トランプさんの専らの情報源は、テレビなんだそうです。

 アメリカはまだ200年ちょっとしか歴史がありませんが、歴代大統領の中で、史上初めて、読書人ではない実業家が選出されたということなのでしょうか。実に衝撃的でした。

 本なんか読まなくても、大統領ぐらいになれることを彼は証明したわけですが、人生で読書ほど有益で楽しいものはない、と思っている私としては、異次元の人を見る感じです。
街頭で Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 毎月50冊を読破する栗林提督には足元には及びませんが、今も何冊か並行して読んでおりまして、昨日は橘玲著「言ってはいけない 残酷すぎる真実」(新潮新書)を読了しました。

 著者が「まえがき」で明解に「最初に断っておくが、これは不愉快な本だ。だから、気分よく一日を終わりたいひとはやめたほうがいい」と、高らかに宣言している通り、本当に、気分が悪くなる本です(笑)。

 何が不愉快なのか?

 どうあがいても駄目だよ。お前の運命は生まれた時から遺伝で決まっている。努力しても無駄だよ…なぞと、皆さんの人格を全否定するような文言に満ち溢れているからです。

 扉書きを引用しますと、「この社会には綺麗事が溢れている。人間は平等で、努力は報われ、見た目は大した問題ではないー。だが、それらは絵空事だ。往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外ではなく、美人とブスの美貌格差は3600万円だ」てな調子なんすよ。

 発行元の新潮社で週刊誌を創刊するなど出版界に君臨した斎藤十一氏は「所詮、人はカネと女」「人殺しのツラを見たくないか」などと豪語しておりましたが、この本はもっと先を行っていて、「所詮、ヒトはメスとオスの馬鹿し合い」「ヒトは所詮、遺伝子の運び屋」的な身も蓋もない、希望も展望もない世界を見せつけてくれるわけですよ。

 以下は備忘録。

 ・アシュケーナージは「ドイツの」という意味で、アシュケナージ系ユダヤ人はライン川沿いのコミュニティを発祥地とし、その後、ポーランドやロシアなどの東欧諸国に移り住んだ。彼らは激しい差別によって、人口の増加が抑えられ、キリスト教では禁忌とされていた金貸しで生計を立てざるを得なかった。(中略)金融以外に生きていく術がなかったら、数学的知能に秀でいた方が有利だから、平均より少し知能が高かっただろう。(p51)

 ・男性ホルモンであるテストステロンが暴力性と強く相関し、なおかつその影響が外見に現れる。(p142)母親の胎内で高濃度のテストステロンに曝された男性は顔の幅が広くなる。(p144)

 これを読んで、私は、トリカブト保険金殺人事件で捕まった容疑者の顔が浮かびましたよ。彼は、テレビカメラが回っているのに、いきなり、気に食わない新聞記者の顔を殴りつけていました。異様に顔の幅が広い男でした。

 この本では、性差や人種や頭の良し悪しや、王制、犯罪者など、これまでタブー視されていたことを臆面もなく、心理学者の臨床実験結果などを引用して取り上げております。

 ご興味のある方は、図書館で借りてみたら如何?私のように、半年以上、待たされるかもしれませんが…(笑)。