なぜ「君の名は。」 は大賞を逃したのか?

中国 Copyright Par Duc Matsuocha gouverneur

 昨年8月26日に公開され、2017年3月6日の最新時点で、歴代興行収入第4位の245億円となり、社会現象ともなっているアニメ映画「君の名は。」(新海誠監督)を遅ればせながら、見てきました。渓流斎、それにしても遅い(笑)。

 ※ちなみに、ご参考として歴代興収は以下の通り。「君の名は。」はもうすぐ「アナと雪の女王」を抜いて、歴代3位になるかもしれません。

第1位=「千と千尋の神隠し」308億円(2001年7月20日公開)
第2位=「タイタニック」262億円(1997年12月20日公開)
第3位=「アナと雪の女王」255億円(2014年3月14日公開)
第4位=「君の名は。」245億円(2016年8月26日公開)
第5位=「ハリー・ポッターと賢者の石203億円(2001年12月1日公開)

 ということで、まだ、やってたんですよね(笑)。公開から7カ月も経っても…。
 最近の映画は驚くほど世界各国で量産されていますから、普通、半年もすれば、忘れ去られて、ヒット作だけはしっかりと元を取ろうとDVD化されます。

 「君の名は。」に限っては、まだ、DVD化されず、半年を過ぎても全国でロードショー公開、つまりロングランされているようです。今年1月の時点ですが、累計動員は1815万人だそうです。

 お隣の韓国では、今年1月4日から公開され、8日までの5日間で観客数100万人を突破して、22日には観客動員数は300万人を超えて日本映画で過去最高となったそうです。

 そして、世界最大の映画市場である中国でも昨年12月に公開され、16日間の興収約90億円、タイでは公開14日間の興収約1億4000万円を記録し、両国で公開された日本映画の歴代興収の新記録を樹立したそうです。

 国際市場での興収を見てみると、米国のBOX OFFICE MOJOという興収調査会社による調べですが、今年1月8日時点での日本を含む全世界の「君の名は。」の興行収入は、2億8101万2839ドル(337億円)を超え、「千と千尋の神隠し」の2億7492万5095ドルを超えて、トップに躍り出たそうです。  

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 ※以下は映画の内容に触れますので、これから観る方は、この先はお読みにならないようにしてください!

 これだけの話題作なのに、米アカデミー賞ではノミネートすらされず、日本で最も権威があると言われるキネマ旬報社のベストテンでは圏外ですからねえ。(ちなみに、ベスト1位は、私も大賛成のアニメ「この世界の片隅に」でした)

 どうしてなのかなあ、と思いながら、観てみました。

 まず、映画を観る前は、漏れ伝わってきたところで、東京都心に住む高校生の男の子立花瀧君と、飛騨高山地方の田舎の村に住む女の子宮水三葉ちゃんの2人の身体が入れ替わるという単純な映画かと思っていましたら、かなり複雑で錯綜したプロットだったんですね。

 これは、アニメとはいえ、子どもさんには分かりづらいかもしれないと思いましたね。正直、観ていて長すぎるなあとも思いましたが…。

 そして、あまりにも複雑な要素を取り入れすぎてしまったので、最後は論理的に破綻しておりました。

 つまり、彗星の墜落で死んだはずの三葉ちゃん、そして、瀧君が図書館で調べた通り、新聞などには死亡者名簿の中に掲載されていたはずの三葉ちゃんが、最後は東京に出てきて生きていたということなんでしょうか?

 アニメなんですから、そんな堅いこと言っちゃいけませんね。嫌われますね(笑)。

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 まあ、堅いこと抜きにすれば、大人の鑑賞にも耐えるつくりになっておりました。
 
 スマホなど現代風俗をふんだんに取り入れながら、神事などの伝統も重要なファクターとして取り入れ、2016年を代表する映画になっていました。

 そして、現実と夢と過去と未来が交錯して奔放自在に物語が展開し、アニメでしか表現できない作品だったと思いました。

 アニメ製作に関しては素人なのでよく分かりませんが、相当作業が大変なようですね。エンディングロールで、数百人にも及ぶスタッフの名前を見て驚いてしまいました。しかも、日本人だけなく、韓国系の人や中国、台湾系の人と思われる人も名前を連ねていたので、この作品自体がグローバルだったのだなあと改めて気づかされました。

 蛇足ながら、そんな莫大な製作費を回収する目的と思われる企業のコマーシャルが何気なく「設置」されているのも気になりました。サントリーの缶コーヒー「ボス」の自動販売機と主人公らが呑む場面は、もろ宣伝ですねえ(笑)。

 このほか、東京の山手線か中央線の電車内や駅の広告もわざとらしく展示され、オカルト雑誌の代名詞だった学研「ムー」まで登場するじゃありませんか。

 かつて、この「ムー」は、オウム真理教の麻原死刑囚の「空中浮遊」の写真を掲載して、信者拡大につながったと言われるいわくつきの雑誌ではなかったのかなあ、と思いましたら、しっかり、最後のエンディングロールの「協力社」の中に、学研「ムー」も明記されておりました。

 はっはあ、「君の名は。」が大きな賞を逃したのは、こうしたサブリミナル(潜在意識に訴える)宣伝広告が、頭の良い一部の映画評論家らに嫌われたのかなあ、と勘繰りたくなってしまいましたよ。

 賞は、豊洲問題と全く同じように、水面下で交渉されますから、真相は分かりませんけどね。