素顔のイチロー

 写真と本文は全く合っていません(笑)

 

先日、「テレビは見るに値しない」と散々悪口を書いたのですが、昨日のNHKの「イチローの素顔」は本当に久しぶりに見るに値する番組でした。

米大リーグ、シアトル・マリナーズのイチローといえば、マスコミ嫌いで有名で、記者のインタビューにも後ろ向きでボソボソと答え、顔見知りでない記者の質問には答えず、顔見知りでも底の浅い質問は無視するという噂を聞いたことがあります。ニュースでは、人間的に悟りを開いているヤンキースの松井は、ちょくちょく登場するのに、イチローは活躍してもほとんどニュースに出てきません。恐らくインタビューを拒否しているわけで、その噂を裏打ちする感じでした。

しかし、この番組で、イチローというより鈴木一朗という一人の人間の素顔が初めて白日の下に晒されたような感じで、なぜ、マスコミ嫌いになったのかということも手に取るように分かりました。

イチローのような超天才になると、我々のような凡人にとっては縁も所縁もない超人で、全く考えが及びもつかない人物とみなしてきたのですが、ある面では、一人の傷つきやすい青年であり、日々訓練を怠らない努力の塊であることを知り、ほんの少し共感してしまいました。

メモをしたわけではないので、正確ではないのですが、イチローはこんなことを言っていました。

「自分の弱さを人に絶対に知られたくないので、自分の弱さを必死で隠そうとした」

 

「広いアメリカで、何年経っても時差には慣れることができない。眠れないと精神的ダメージが大きいので、睡眠薬を飲んでいます」

 

「人一倍、プレッシャーを感じる方です。これまで、そのプレッシャーに押しつぶされそうで、闘ってきましたが、今年(2007年)から、そのプレッシャーを楽しむくらい受け入れることにしたのです。ヒット数が150本くらいになると、『さあ、来たぞ、来たぞ』といった感じです」

イチローの日々の生活といったら、哲学者カントのように規則正しい生活です。何時に家を出て、何時に球場に着いて、何時にトレーニングを始めて、何時に試合に臨む…。

7年間、昼食は奥さんの弓子さんが作る全く同じカレーライスを食べる、という所には少し変質狂的な性格があるんじゃないかと思えるくらい驚いてしまいました。毎日、毎日、同じ味のカレーですよ。そして、「カツカレーなんて邪道で、考えられない」なんて自信満々に発言しているのです。野球では、修行僧のようなイチローでも、野球以外のことはどこか淡白に見えてきました。

試合で遠征に行っても、試合が終われば飲み歩くことはなく、ホテルにこもって、持参した足裏マッサージ器を使って疲れを癒しながら、雑誌のページをめくっていました。これが普通だそうです。信じられませんでしたね。天下の大リーグ・スターといえば、ベーブ・ルースやジョー・ディマージオの例を出すまでもなく、私生活は本当に華やかでした。

ですから、仕事が終わると、座禅を組むようなライフスタイルで、自分を律する、あまりにも日本人的な振る舞いに、いつしか、彼に共感してしまいました。

何しろ彼の口から出た目標は「50歳になって、4割を打つこと」なんだそうですから、今は非現実的に思えても、イチローならもしかしたらやれるのではないかと思えてしまいました。

もう1つ。野球を人生に例える人も多いのですが、打率3割を打つ打者は一流選手ですが、イチローのように3割5分も打てば、超一流です。でも、超一流選手でも、6割5分は失敗しているのです。ということは、人生でも、7割失敗しても大成功と言ってもいいのではないでしょうか。

私の場合、これまでの人生、失敗の連続でしたが、それでも、まだ7割も失敗していない気がします。

イチローさんのように、まだまだ、色々と挑戦しなければならないと思いました。