アメリカンドリームの嘘

 

 

 

「アメリカンドリーム」とか「サクセス・ストーリー」とかよく言われていますが、残念ながら、他人様の成功譚は、ほとんど役に立たないんですよね。

 

よく、「一夜にして1億円儲ける投資方法」はあるか、などと議論されますが、もっとも手っ取り早く、稼ぐ方法は、「一夜にして1億円儲ける投資方法」のコンサルタントになるか、同名の本を書くか、なんですよ。

 

要するに、そんなうまい話が世の中にあるわけがないということです。(ネット上にはそんな話ばかり氾濫しているようですが…)

 

と、同時に、世の中に「解答」がないということです。正解がないのです。逆に言えば、何をやっても自由なのです。身も蓋もない言い方をすれば、「ヒトは失敗する自由がある」ということです。

もっと、言えば、ヒトは失敗からしか教訓を学べないということなのです。

これは、私の人生経験から導き出したassumptionなのです。

昨日、NHKラジオで、「鎌田実のいのちの対話」をやっていました。ゲストは、北海道旭川動物園の小菅正夫園長と、海洋写真家の中村征夫さんでした。

「動物は命をつなぐために生きている」と悟ったという小菅園長は、動物たちが自由に動き回ることができる「行動展示」を提唱して、爆発的な旭川動物園ブームを呼び起こした人として知られています。

面白かったのは、動物の雄は、麒麟にしろ、鹿にしろ、基本的に育児をしないのですが、狼の場合は別なのだそうです。狼は、動物界では稀に見る「一夫一婦制」で、非常に雄と雌の絆が深い。例えば、雄は死ぬと雌は食が細くなり、やがて、後を追うようにして亡くなってしまう。

ヒトはどうでしょうかね?夫が死ぬと、奥さんは逆に生き生きして、何年も長く生きていくのが普通ではないでしょうか?(笑)逆に、妻に先立たれた夫は急激に落ち込んでしまいます。あんな偉大だった評論家の江藤淳、作家の城山三郎さんなんかも、奥さんに先立たれてからは意外にも脆いものでしたよね。

写真家の中村征夫さんは、1993年7月に北海道奥利尻島で地震と津波に遭い、九死に一生を得た経験を話していました。当時、中村さんは海岸からわずか30メートルしか離れていない民宿にいて、死者202人、不明28人という大惨事に遭いながら奇跡的に生き残ったのです。

中村さんは、民宿のおかみさんから「逃げてー」という叫び声を聞いて、慌てて、何も持たずに山の方に向かって逃げたというのです。おかげで、すべてカメラ機材を消失しました。

中村さんは、これをきっかけにカメラマンを辞めようかと思ったそうです。しかし、これまで、海の素晴らしさばかりを撮ってきましたが、これからは、海の怖さ、自然破壊の実態などといった現実にも目を向けて取り組もうと決心して、プロの写真家として再開したというのです。

こういう話こそ、生意気な言い方ですが、実りのある話というか、そこらの成功譚にはない、学ぶべきものが沢山あると思い、ご紹介いたしました。