サウジ記者殺害が及ぼす世界的影響ー例えばソフトバンクとか

スペイン南部ミハス

2018年10月18日付《渓流斎日乗》に書きました「サウジ記者殺害疑惑」。ついに、サウジアラビア政府が公式に殺害を認めました。「口論の末、誤って殺してしまった」という発表だけでは、俄かに信じ難いですが、今年後半の最大のニュースになることは確かです。

何しろ、殺害されたジャーナリストのジャマル・カショギ氏(Khashoggi)は、米ワシントンポストのコラムニストを務めるほど優秀な敏腕記者ではありますが、そんじょそこらにいる只のジャーナリストではなかったのです。

スペイン南部ミハス

名前からお分りの通り、カショギ氏は、あの悪名高い武器商人アドナン・カショギ(1935〜2017)の甥に当たり、日本でも人気の高かった英国のダイアナ妃の「恋人」と言われてパパラッチに追われ、パリで交通事故死したドディ・アルファイド(1955〜97)とは従兄弟に当たるというのです。

まあ、華麗なる一族で、中東世界、いや欧米ではカショギ一族を知らない人はいないと言われてます。

一方、カショギ氏殺害の「黒幕」と言われているサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(33)は、頭文字を取ったMBSの愛称で若者に絶大な人気を誇り、女性への自動車運転免許を開放するなど「改革派」として知られています。石油だけに依存していては、将来の国家はないという危機感の現れと言われております。

ただ、その改革が急進的過ぎて、しかも御都合主義の面があることから、カショギ氏らが政府批判を繰り広げていたわけです。

スペイン南部ミハス

この事件の影響として、欧米メディアは、中東世界の不安定化と原油高による世界経済の混乱ばかり挙げておりますが、日本にとっても「対岸の火事」では終わらない可能性があります。

つまり、1970年代の石油ショックのように、トイレットペーパーが店頭からなくなるといった程度では済まないということです。

一例は、孫正義氏のソフトバンクです。同グループは、10月6日にサウジアラビア政府系の投資ファンド(PIF)に第2弾の450億ドルを出資することが、Bloombergの報道で明らかになりました。第1弾と合わせて900億ドル(約10兆円)にも上ります!しかし、サウジ記者殺害疑惑が報じられてから、ソフトバンクの株が急落してます。(勿論、理由はそれだけじゃないでしょうが)

ソフトバンクを単なる携帯電話会社と誤解している人が多いのですが、実は10兆円規模のファンドなら簡単に動かすことができる投資会社が実体なのです。しかも、有利子負債が桁違いにも15兆円もあるのです。私には孫氏のような実業家の金銭感覚は全く理解できません。

庶民は、莫大な広告費を掛けて宣伝しているソフトバンク商法を「有名だから安心できる」と勘違いしていますが、広告費は自分たちが負担しているという魔法に誰も気が付いていません。

スペイン南部ミハス

ソフトバンクに「もしも」のことがあれば、最大債権者みずほ銀行に飛び火し、負の連鎖が起きるというのが、事情通による最悪のシナリオです。

「大き過ぎて潰せない」というのは銀行マンの感覚なんでしょうが、軒先きを貸したら母屋を乗っ取られたような状況では、一連托生でしょう。

関連ニュースには目が離せませんね。

フェイスブック、やめるべきか、続けるべきか

使わせてもらっておいて文句を言うのは、またまた気が引けますが、大量の個人情報が流出した米フェイスブックの会社としての対応には、全く誠意を感じられませんね。

私はこの《渓流斎日乗》を全世界に(笑)に発信するためだけに、仕方なくフェイスブックを使っております。そのお蔭で、高校時代の友人に何十年ぶりかでコンタクトできるようになったり、これまで知らなかった「友達の友達」と知り合うことができたりして、多大なる恩恵を蒙ることができました。

しかし、情報漏洩になると話は別です。(私はせっせと投稿して、フェイスブックに個人情報を提供してますからね)

スペイン南部ミハス

フェイスブックは全世界で22億人ものユーザーがいるといいます。特に東南アジアでの普及率は最近目覚ましいものがあり、例えばベトナムは、2017年7月の月間利用者が6400万人で同年1月と比べて39%増加。ベトナムの人口は約9400万人ですから、普及率が人口の68%です。タイになると、同年同月の利用者は5700万人。タイの人口は約6700万人ですから、何と普及率は84%にもなるのです。誰もが使っているインフラみたいなものと言っていいでしょう。

それが、今春、最大8700万人分の連絡先や投稿内容が流出したことが発覚し、続けて、9月下旬には2900万人の氏名や電話番号などが流出したことが分かりました。

アカウントが流出するとどうなるかといいますと、脅迫メールが頻繁にきたり、本人になりすまして投稿されたり(勘弁してほしい)、最悪の場合、匿名性の高い闇サイトで取引され、サイバー犯罪集団に渡る恐れがあるといいます。犯罪集団は、銀行口座番号やパスワード、クレジットカード番号などを盗み取るために、巧妙なフィッシングメールを仕掛けるといいます。

ペイン南部ミハス

これに対して、フェイスブック側が、攻撃者や被害の詳細については「調査中」と言うだけで、それ以上の情報開示をしていません。

私は、以前に、フェイスブックのことを多くの人が、善意のボランティアで公開しているプラットフォームだと誤解しているだけで、「実態は広告会社だ」と書いたことがありますが、やはり、10月18日付の日経新聞は、フェイスブックの収益の約98%が広告収入だ、とはっきり書いておりました。

知らないうちに、身に覚えがあるような「ターゲット広告」が襲来するのは、フェイスブックが、どこかの代理店に個人情報を販売しているのではないかと疑いたくなります。

欧州では、個人情報保護のために、「一般データ保護規則(GDPR)」を施行して、閲覧履歴データを自由に使えなくしました。

日本もやっと重い腰を上げて、公正取引委員会が「プラットフォーマー」と呼ばれるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)など巨大IT企業を、独占禁止法40条に基づく強制調査を検討し始めました。(どういうわけか、読売新聞だけが積極的に報道してます)

それだけ、ネットのプラットフォームが、道路や水道、電気、ガス並みに現代人に欠かせないインフラになったということでしょう。

せっかく、フェイスブックで色んな方と知り合ったり、コメントを戴いたりしているので、今すぐ、解約することは躊躇しておりますが、サイバー攻撃を受ければ、解約は真剣に考えます。

箱根の岡田美術館の収蔵品には驚き

スペイン、アルハンブラ宮殿

箱根にある岡田美術館で、来年3月まで「開館5周年記念展 美のスターたち 光琳、若冲、北斎、汝窯など名品勢ぞろい」が開催されております。

重要文化財を含み約450点が公開されているようですが、その出展作品は半端じゃありません。

美術好きの私ではありますが、岡田美術館は、一度も行ったことがありませんし、全く知りませんでした。熱海にあるMOA美術館が世界救世教の教祖の岡田茂吉(1882~1955年)が創立者なので、てっきり、その「姉妹館」かと思いました。

そしたら、まるっきり違うんですね。岡田美術館の創立者は岡田和生氏(76)で、ユニバーサルエンターテインメントの創業者。何の会社かと思いましたら、パチンコ機などの製造販売メーカーで、ラスベガスや香港など海外でカジノまで経営しているようです。旧社名「アルゼ」なら聞いたことがあります。

今は便利な世の中で、このユニバーサル社についても、岡田氏についても、ネット上で簡単に検索できます。まさに毀誉褒貶で、何処まで正しい正確な情報なのかは神のみぞ知るといった感じでしょうか。下世話な言い方で恐縮ですが、バクチって随分儲かるものなんですね、ただし「胴元」なら(笑)。

とにかく、コレクションの質の高さには驚きです。1948年以降、64年間所在が不明だった喜多川歌麿の肉筆大作「深川の雪」、83年間所在不明だった伊藤若冲の「孔雀鳳凰図」、重要文化財の尾形乾山「色絵竜田川文透彫反鉢」、それに、尾形光琳、葛飾北斎、横山大観、速水御舟ら名品ぞろい。これら全て、個人の収集品なんですからね。思わず、「凄い財力」「半端じゃない資産」と叫びたくなってしまうほどです。

別に「成金趣味」などと批判するつもりは毛頭ありません。むしろ、貴重な日本の美術品が海外に流出されなくてよかったわけで、これは岡田氏の功績です。

ただ、入場料の一般2800円は、ちょっと高過ぎるんじゃないかなあ(笑)。

サウジ記者殺害疑惑はかなり複雑で分かりにくい

スペインアルハンブラ宮殿

いまだ真相が分からず、捜査が現在進行中の事件を茲で扱うのは、多少、気が引けますが、ここ最近、毎日のように報道されているサウジアラビア人記者カショギ氏の殺害疑惑事件は、複雑過ぎて、分からないことが多過ぎます。

事件があったのは10月2日のこと。場所は、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館。カショギ氏は結婚に必要な書類手続きのため、同総領事館に入りましたが、その前に、婚約者を外で待たせ、自分にもしものことがあった場合に備えて、その婚約者に自分の携帯電話を預けます。しかし、同氏は行方不明となり、トルコ政府が公表したことから、欧米メディアで大騒ぎとなりました。「事故だった」とも、「尋問中に工作員が誤って殺した」とも、「いきなり注射されて身体を切断された」とも憶測記事が飛び交っています。恐らく、カショギ氏は殺害されたことでしょうが、今のところ、サウジ側は否定しております。

何故?

10月18日付の読売新聞で、やっとカショギ氏の人となりが分かったのですが、彼は、あの9.11の首謀者と目されていたビンラディンに複数回インタビューしたことがある在米の敏腕ジャーナリストで、最近はサウジのムハンマド皇太子を批判する記事を書いたことから、当局から目を付けられていたといいます。

不敬罪のようなサウジの法律に抵触したのかもしれませんが、気に入らない者は治外法権の場所で密かに抹殺するとしたら、まるでスパイ映画の世界です。現実の世界では、原油価格が変動したり、中東が不安定になったりしていますから、一人のジャーナリストの殺害だけでは済まず、影響力が大きいので、これだけ欧米メディアは騒いでいるのです。

◇◇◇

10月18日付の朝日新聞がAP通信の報道を引用してましたが、米国とサウジとの関係は、一般人の想像を遥かに超えて、驚くほど濃密だったんですね。まず、昨年5月に米国はサウジに対して、約1100億ドル(約12兆3000億円)もの武器売却契約を結んでいたのです。12兆円ですよ!ちなみに、12兆円というのは、スウェーデンの国家予算並みです。

トランプ氏も個人的に、資金繰りに困っていた1991年に、所有していたクルーザーをサウジの王室の王子に2000万ドル(約22億円)で売却し(何と桁違い!)、2001年には、サウジ政府が「トランプ・ワールド・タワー」の45階部分を、施設使用料を含め、1000万ドル(約11億円)で購入したといわれています。半端じゃない関係です。

トランプ大統領が16日のFOXビジネスニュースのインタビューで、サウジに対する制裁について「我が国を傷つけるだけだ。(制裁すれば)サウジは、ロシアや中国から質の悪い兵器を買うだろう」と反対表明したのは、大統領自身の個人的な、こうしたサウジとの濃密関係が背景にあったからなのでしょう。もっとも、本人は「フェイクニュースだ」と否定しておりますが。

遠い昔、日本の池田勇人首相は、フランスのドゴール大統領から「トランジスタ(ラジオの)商人」と揶揄されましたが、現在、世界一の軍事力を持つ覇権国の大統領に対して、「○○商人」とは、誰も怖くて揶揄したりはしないでしょう。総領事館にも行きたくないでしょう。

◇◇

国際問題については、イスラム・シーア派のイランと敵対する米国が、イスラム・スンニー派のサウジと手を組むことは自然の成り行きなのかもしれません。トルコがサウジとの関係が悪化したりすると、そのパワーバランスが崩れ、中東情勢は一層不安定になります。イエメンの内戦も、サウジとイランとの代理戦争だと言われています。昨年、サウジなどから国交断絶されたカタールはイランへの依存を強め、サウジと対立しつつあるトルコもイランに接近するのではないかとも言われてます。

イランは、米国がこの世に存在する前の遥か大昔に、ペルシア帝国と呼ばれる覇権大国でしたからね。

何と言っても、パレスチナ問題が70年も続き、最近では、米国に続き、オーストラリアが、在イスラエル大使館のエルサレム移転を検討すると発表し、問題を深刻化させています。豪州には、ロシアから追放されたユダヤ系の人が多く移民したといわれてますから、政権へのロビー活動も盛んなのでしょう。

シリア内戦には、ロシアと中国も武器輸出で絡んでいるといいます。

トルコ⇒サウジアラビア⇒米国⇒イラン⇒イエメン⇒カタール⇒豪州⇒イスラエル⇒シリア⇒ロシア⇒中国⇒米国と関係各国の思惑が入り乱れて、この先どうなるのか予想がつきませんが、最悪の事態だけは避けてもらいたいものです。

このサウジ記者殺害疑惑について、ほとんどの日本人は興味ないでしょうから、このブログのアクセスも少ないことでしょう。

諸行無常、光陰矢のごとし

最初にお断りしておきますが、今日はつまらない噺です(笑)。

昨晩は、東京・虎ノ門の高級居酒屋「小虎」で裏新聞大会が開催され、私も末席に連なりました。

何が哀しいのか、「加齢臭」を「華麗臭」と誤解した若い花ちゃんが紅一点参加して、つまらないおじさんたちの話に仕方なく相槌を打っている様は、大変気の毒に思われました。

幹事役を務めた探訪新聞の追河記者が「おい、渓流斎、書いたら訴えるからな」といきなり凄んできた上、「何か、渓流斎ブログは黒字で儲かってるらしいじゃねえか。俺が一番ブログに登場することが多いんだから、分け前寄越せよな」と脅迫までするのです。さすが、日本一の探訪記者です。

ということで、昨晩の裏新聞大会で何が議題に上ったのかなどは茲では書けなくなってしまいました。ま、それだけ他愛のない与太話だったわけです(笑)。1杯130円のハイボールを何杯もおかわりしてしまいました。

新聞社の取締役を務め、退職後はグルメサイトを主宰している赤羽先生は「渓流斎さんは、本当に毎日更新してますけど、凄いですね。秘訣はなんですか?」と仰るので、自分でも秘訣は何か考えたのですが、それがないんです(笑)。

確かに、毎日続けるのは苦しい作業なのですが、考えてみれば現役時代の仕事の延長のことをやっているだけなんですね。本を読んで書評めいたことを書く。映画や演劇や展覧会を観て感想を書く。セミナーや講演会に参加して紹介記事を書く…ま、毎日、欠かさず、ずっとやってきたので、習慣になり、普通の人よりは苦に感じないのかもしれません。

◇◇◇

昨晩は、集合時間まで少し余裕があったので、久しぶりに夜の新橋~虎ノ門界隈を散策したのですが、すっかり変わって、昔よく行った店がなくなっていたことには唖然としてしまいました。旨い魚と酒が自慢の「均一軒」という店もその一つですが、よく2階で句会なんかもやりました。それが違う店に変わっていました。

世代交代したのでしょうか。どこかの経済記事で、「飲食店の8割は5年以内につぶれる」とありましたが、本当にその通りですね。5年も経つとすっかり街の風景が変わってしまいます。

光陰矢のごとし、諸行無常です。

新興宗教の今、現在は厳しそう 伸びる教団と縮む教団

Shallow men believe in luck. Strong men believe in cause and effect.

ー Ralph W Emerson(US poet, philosopher and essayist, 1803~82)

最近、とても気に入っている箴言があります。米国の詩人エマーソンの言葉です。原文は、上述しましたが、意訳するとこんな感じでしょうか。

浅はかな人間は運命や占いを信じる。でも、人に左右されない意志が固い人間なら自分の蒔いた種は最後まで刈り取る。

かなり意訳しましたが、私自身は今まで、随分、自分の運のことばかり考えていたなあ、と反省しました。「こうなったのは、運が悪かったからだ」とか、「ついてない人生だなあ」とか。。。

どうして、こうも不運ばかり続くのだろうかー? 今から15年ほど前に、北海道帯広市に住んでいた時は、地元新聞社主催の風水教室に通ったり、霊媒師に厄祓いしてもらったり、自己啓発本を読んだり、スピリチュアルな浄水を飾ったりしました。

危ないところでしたが(笑)、どこの団体にも組織にも入らなかったお蔭で、今からこうして冷静に振り返ることができると思っております。

国立西洋美術館

帯広市は、人口わずか16万人の都市でしたが、あらゆる宗教集団の寺社仏閣、教会、修行道場、祈祷所等がありました。既成伝統宗教だけでなく、新興宗教も、幕末の天理教、金光教から創価学会、エホバの証人、末日聖徒(モルモン)教(「英会話教室があります」と勧誘してきました)、それに統一教会までありました。

当時の私は、心が隙間だらけでしたから、どこかの教団に入りかねない状況ではありましたが、最終的には、性格的に組織や団体が嫌いだったせいで、どこにも入会しませんでした。

で、今日、何が言いたいのかといいますと、経済週刊誌「ダイヤモンド」10月13日号の特集「新宗教の寿命 伸びる教団 縮む教団」を読んで、随分状況が変わったものだ、と隔世の感を覚えたことです。「宗教年鑑」(文化庁)によると、平成元年の1989年に主要新宗教教団の信者数が2637万人だったのが、2016年には1591万人と4割も激減していたというのです。

若者はスマホに忙しくて、信仰にすがるほどではなくなったということなのでしょうか。

信者数が少なくなった原因については、日本社会の少子高齢化の影響や教団内の「内部分裂」と世代交代などがあるようですが、この特集では、なかなか、興味深いことが書かれております。

そもそも、何で畑違いの経済誌が宗教なんか特集するのか、最初意外な気がしましたが、宗教には、宗教法人として認められた無税のお金があったり、入会金や年会費などかなりカネが絡むわけですから、「経済」そのものです。「東洋経済」も今年9月1日号で「宗教 カネと権力 宗教界のタブー解明」を特集しておりましたね。その号は買い忘れてしまいましたが…(笑)。

週刊ダイヤモンド誌の「新宗教の寿命」では、新宗教の現在の最新情報が満載されております。換骨奪胎で列挙しますとー。

・創価学会は、今年90歳になった高齢の池田大作名誉会長が2010年から表舞台から消え、実権は原田稔会長、谷川佳樹主任副会長ら「四人組」と呼ばれる執行部が握っている。

・学会支持政党の公明党は、自民党の補完勢力となり、集団的自衛権や共謀罪、安保関連法などを是認。池田名誉会長の意に反するとして一部の会員が反発し、除名処分になり、内部にひずみが生じている。

・右翼団体「日本会議」の支持母体だった生長の家は、安倍政権の憲法解釈変更や安保関連法案の強行採決を批判し、「日本会議」も「時代錯誤的」と切り捨て、明確に決別した。保守傾向を強める公明党=創価学会に対抗し、生長の家は、右派から左派に急旋回した。

・多くの新宗教の会員が減少している中、成長を続けているのが真如苑。その要因は、「霊能者」になるまで家元制度(最低8人は新信者を獲得する)のような修行の仕組み、信者を離脱させないように「導き親」と「導き子」との濃密な関係により、ピラミッド型組織を形成し、さらには、霊能者が独立・分裂しないように「接心」は、東京都立川市にある真如苑の精舎内でしかできないことにする工夫などが挙げられる。

・新・新宗教「ワールドメイト」は1984年、深見東州教祖が設立。年間110億円の収入があり、講演会やコンサートなどイベント事業に熱心だ。オバマ前米大統領やトニー・ブレア元英国首相ら大物政治家まで招聘する。オバマ前大統領について、深見氏は「数千万円では呼べません。5億円まではいきませんでしたが」と、ダイヤモンド誌のインタビューに応えている。

・深見氏(67)は、半田晴久の本名で、みすず学院などの予備校や高級時計販売などの実業も行っているが、顔写真入りで広告宣伝活動を開始したのは60歳になってから。(そう言えば、最近、この方の顔と名前を見ない日はないぐらいですね。特に、毎日新聞紙上では)

・静岡県熱海市にある「MOA美術館」の運営で知られる世界救世教は、今年6月の理事会で岡田陽一教主を追放する決議をし、内紛状態。

・かつて霊感商法などで社会問題になった統一教会は、2012年9月に文鮮明教祖が死去した後、分裂状態にある。現在、文教祖の妻韓鶴子総裁派の「世界平和統一家庭連合」と三男文顕進氏の「FPA」と四男文國進氏と七男文享進氏の「サンクチュアリ教会」の三つに分裂している。

以下略で、詳細は、引用させて頂いた▼「ダイヤモンド」誌10月13日号の特集「新宗教の寿命 伸びる教団 縮む教団」に譲ります。

「合理的不注意」で「安心・安全」なのか?

米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が提唱している「合理的不注意」理論は、なかなか興味深いものがあります。

この理論を紹介してくださった小林慶一郎慶大教授によると、「合理的不注意」とは、人間が情報を処理する能力は無限ではなく、有限であることから、一部分の情報を無視することは合理的な判断となることをいいます。膨大な情報を処理するのには精神的なコストもかかるからです。

面白いことに、関心事は人によって違うので、同じ情報に接しても、無視する情報は一人一人異なります。小林教授は「こうして同じ情報が全ての人に与えられても、人は合理的に情報の一部を無視するので、人々の間に意見の不一致が残り続ける」と言うのです。

なるほど。同じ情報に接しても、人々の意見が一致することは稀なんですね。この理論は、個人的に、私がブログを書き続け、発信する上で、大いに参考になりました。

さて、11日(木)から魚市場が築地から豊洲に移転しましたが、12日(金)にランチに行った築地にある和食店で、会計する際にチラッと聞いてみました。「仕入れは、もう近くの築地じゃなくて、豊洲からですか?」

すると、返ってきたのは「ええ」の一言だけ。この情報で、私は「何か怪しいなあ」と懐疑的になってしまいました。合理的不注意、てなところでしょうか(笑)。

果たして、豊洲は「安心・安全」なのか?10月12日付朝日新聞に掲載された情報(笑)によると、今年6月の調査で、豊洲市場の地下水から基準値の最大170倍の発がん性があるベンゼンが検出されたといいます。朝日新聞が7月に都民を対象に行った世論調査では、4割が豊洲市場は「安心ではない」と答えたといいます。

嗚呼それなのに、小池百合子・都知事はいつの間にか「安全宣言」していて、10月11日に豊洲に移転・開場してしまいました。

私は、もう豊洲市場から来たサバ焼き定食を食べてしまいましたからね。それに、これからも、豊洲以外の魚や寿司を食べることは困難でしょう。

「合理的不注意」で「安心・安全」ということにするしかないようです。

※写真と本文は関係ありません

▼参考文献=日本経済新聞(2018年10月10日付)小林慶一郎「経済教室」他

「アンダー・ザ・シルバーレイク」は★★

久しぶりに劇場に足を運んで映画を見てきました。最近、ほんの少し嫌なことがありまして、現実逃避したかったからです(笑)。

それにしても、最近は、一食抜いてでも、是が非でも観てみたいという映画がない!ない、と断定すれば、製作者にあまりにも失礼なので、少ない!と言っておきます。

第一、ただで観ている映画評論家はグルですからね。つまらない映画でも「最高!」だの「面白い!」だのといった陳腐な言葉を並べて、見事、宣伝マンの役割を果たします。あまり、貶せば次に仕事が来なくなるからでしょう。

でも私は騙されました。「今年ベストの声続々」「カンヌも騒然となった”新感覚サスペンス”」の宣伝文句に惹かれて「アンダー・ザ・シルバーレイク」(デヴィット・ロバート・ミッチェル監督最新作)を観てきましたが、支離滅裂。最初に、とっても懐かしアソシエイションズの「ネバー・マイ・ラブ」(1967年)が掛かって、大いに期待されたのですが、はっきり言いますが、駄作でした。

まさに、ロサンゼルス郊外のハリウッドが舞台のハリウッド映画。天下のハリウッド映画も随分劣化したものです。

ミッチェル監督は、何を表現したかったのか。ヒッチコックや無声映画女優ジャネット・ゲイナーらの墓が出てきたり、マリリン・モンローの主演映画「女房は生きていた」を模したシーンが出てきたり、往年の黄金時代のハリウッド映画に対するオマージュが随所に盛り込まれ、それは分かりますがね。ホラーサスペンスと称しても、日本人の感覚からすれば、ちょっと頂けない残虐な暴力や殺人場面が多過ぎです。それに、暗号解読と言っても、子ども騙しのパズルのようなダサいからくりなので呆れてしまいました。

登場する若い男も女も、気ままに本能のまんま生きている感じで、退廃的。ハリウッド・セレブたちのパーティー場面が多く出てきて、「現代風俗を活写した」とでも言いたいのでしょうが、まさに、エログロナンセンスのオンパレードでした。

主人公のサムは、映画か音楽業界での成功を夢見て田舎から出てきた青年で、家賃が払えないという設定ながら、高級車を持っているというのも変。マザコンの母親がしょっちゅう電話を掛けてくるので、家賃代を借りればいいのに、払えず追い出される寸前と話が進んでいきます。住んでいるアパートもプール付きですからね。

暗号解読の末、新興宗教のカルト集団のアジトに行き着きますが、その教祖らしい男が「生きているだけで、心配事が多過ぎる」と言いながら、3人の若い女と一緒に集団自殺するのも、作り物の映画と知りつつ、何か、最後まで歯がゆくなるほど、イライラしてしまいました。

これは、あくまでも個人の感想ですが、この映画を観た後、小津安二郎監督の「東京物語」をまた観たくなってしまいました。もう何十回も観てますが、あんな「時代風俗」を活写した名作はないからです。原節子は、戦死した次男の妻紀子役でした。尾道から出てきた年老いた両親を親身になって世話をするのは、実の息子や娘ではなくて、この血の繋がっていない戦争未亡人でした。

戦死した次男は出てきません。この映画は1953年公開ですが、まだまだ、戦争の傷跡が残っている時代で、どこの家庭でも、親戚や親、兄弟の中で、一人か二人は戦死しているという共通の体験がありました。だから、説明しなくても、笠智衆と東山千栄子が演じた年老いた両親の気持ちが分かったのでしょう。

「アンダー・ザ・シルバーレイク」は確かに現代という風俗を活写してましたが、駄作に終わったのは、時代そのものが劣化したせいのような気もしてきました。

邪馬台国の久留米・八女説、鎌倉幕府成立、咸宜園、吉田ドクトリン…は「日本史の論点」で学びました

アルハンブラ宮殿の天井画(イスラムは偶像崇拝を禁止しているのに、このような具象画があるのは極めて珍しいとか)

中公新書編集部編「日本史の論点 邪馬台国から象徴天皇まで」(中央公論新社、2018年8月25日初版)も、スペイン旅行の際に持って行った本でしたが、なかなか面白くて、往復の飛行機内では、かかっている映画で面白い作品が少なかったので、専ら読書に耽っておりました。

第1章の古代が倉本一宏・国際日本文化研究センター教授から始まり、中世は今谷明・帝京大学特任教授、近世が大石学・東京学芸大学教授、近代は清水唯一朗・慶大教授、現代が宮城大蔵・上智大教授と、「今一番旬」と言ったら語弊があるかもしれませんが、最先端の歴史家を執筆陣に迎え、最新の「学説」を伝授してくれます。

歴史は時代を映す鏡ですから、その時代によって変化するものです。最近では、学校の教科書から聖徳太子や坂本龍馬の名前が消えると話題になったり、鎌倉幕府の成立が、これまでは、「いい国つくろう」の1192年(源頼朝の征夷大将軍就任)だったのが、壇ノ浦の戦いで平家が滅び、頼朝が守護・地頭を置く文治勅許を獲得した1185年が、現在学界では圧倒的な支持を得ていることなど初めて知り、勉強になりました。

「日本史の論点」ですから、各時代で、長年論争になってきた「課題」が取り上げられています。

例えば、畿内説と九州説との間で論争が続いてきた「邪馬台国はどこにあったのか」。古代の倉本一宏氏は、纏向(まきむく)遺跡発掘により畿内説が学界では優勢になっているのものの、同氏はあえて九州説を取っていました。邪馬台国の邪馬台は「やまたい」ではなく、「やまと」と読むことが適切だとして、福岡県の久留米市と八女市とみやま市近辺が筑紫の中心だったと考え、この地域で灌漑集落遺跡が発見されれば、そここそが邪馬台国の可能性が高い、という説を立てておられました。

ちなみに、小生の先祖は、久留米藩出身なので、遺跡が見つかればいいなあと応援しております。

古代史専門の倉本氏はこうも力説します。「武家が中央の政治に影響力を持ち、政治の中心に座ったりすると、日本の歴史は途端に暴力的になってしまった。…もちろん、『古代的なもの』『京都的なもの』「貴族的なもの」がいいことばかりではないことは、重々承知してはいるけれども、苦痛を長引かせるために鈍刀で首を斬ったり、…降伏してきた女性や子供を皆殺しにしてしまう発想は、儒教倫理を表看板にしている古代国家ではあり得ないものであった」と。

これは、「古代=京都=公家=軟弱・ひ弱=陋習=ネガティブ」「中世以降=武士=実力=身分差別なく能力主義で這い上がれる=ポジティブ」といった固定されたイメージを覆してくれるものでした。

他にも色々取り上げたいのですが、あと2点ほど。まずは、近世を執筆した大石氏によると、江戸時代は義務教育はなかったが、人々は知識に対して貪欲で主体的に勉強したといいます。その一例として、大分県日田市(天領)にあった「咸宜園(かんぎえん)」を挙げております。

これは、1817年(文化14年)、儒学者の広瀬淡窓(たんそう)が設立したもので、全国から生徒が集まり、1897年(明治30年)に閉鎖されるまでの80年間で、5000人近くの人が学んだといいます。生徒たちは何年間もここに下宿して勉強し、長州の大村益次郎も学んだ一人だったそうです。

◇吉田ドクトリン

話は飛びますが、永井陽之助(東工大教授)や高坂正尭(京大教授)らの説を引用して「現代」を執筆した宮城氏によると、戦後の吉田茂路線(ドクトリン)とは、「軽武装」と「経済」を重視する政治的なリアリズムだったといいます。

そして、1951年のサンフランシスコ講和会議に池田勇人蔵相の秘書官として随行した宮澤喜一(後の首相)は、54年に吉田が首相の座を追われて鳩山一郎政権が成立すると、危機感を持ったといいます。56年には「暴露本」のような「東京ーワシントンの密談」(中公文庫)まで出版します。その理由について、宮澤は、五百旗頭真氏らのインタビューで、GHQによって追放されていた鳩山や岸信介といった「戦前派」が復活して、彼らの信条通りの政治が実現すれば、明らかに戦前に遡ってしまい、せっかく、吉田茂や池田勇人と一緒になってつくった戦後の一時代が終わったと思ったからだといいます。

同じ自民党でも、昔は、中選挙区だったせいか、派閥があり、同じ保守でも思想信条がハト派からタカ派まで両極端な政治家が同居したいたことが分かります。

言うまでもないことですが、今の安倍晋三首相は、「戦前派」の岸信介元首相の孫に当たります。安倍首相が「戦後レジームからの脱却」を目指して憲法改正を主張するのは、遺伝子のせいなのかもしれません。

まだまだ、書きたいのですが、この辺で。

 スペイン・アルハンブラ宮殿

「青年の樹」のモデルの藤木氏

これでも私は昔、映画に出演したことがあります。長身痩躯で美男子でしたからねえ(笑)。

でも、出演と言っても端役、いや、これも言い過ぎで、台詞もない単なるエキストラを学生時代にアルバイトで何本かやっただけでした。

その中に「青年の樹」という作品がありました。1977年公開の東宝映画(西村潔監督)で、主演は、三浦友和と檀ふみ。後から知ったのですが、原作は石原慎太郎の同名の小説(1959~60年、「週刊明星」連載)で、既に60年に石原裕次郎と北原三枝のコンビで日活で映画化されており、これが二度目でした。

横浜の港を舞台にした作品で、ヤクザ和久組の跡取りとして生まれた主人公が東京の大学に入学し、「苦闘の末、二代目となる青春怒号篇」ということですが、もう40年以上も昔なので、内容はすっかり忘れてしまっております(笑)。学生役でしたから、衣装も私服で、そのまんまでした。

撮影現場は、立教大学だったかなあという程度の記憶ですが、主役の三浦友和さんが学食で食事する場面で、彼が箸を口元に持って行くと「カット」。食べようとすると「カット」。それをアップで撮ったり、少し離れて撮ったり、右から撮ったり、左から撮ったり、そのたんびに、「カット」の連続。「えっ?これで演技できるの?」という感じでした。

溝口健二監督らが映画のことをよく「シャシン」と言ってましたが、本当に映像ではなく、写真を撮っている感じでした。そう言えば、昔は映画のことを活動写真と言ってましたからね。「あー、こうして映画が撮影されているのかあ」と思うのと同時に、「俳優って、あまり面白くないなあ」と生意気に思ってしまい、それ以来、俳優志望をやめてしまいました(笑)。

檀ふみさんは、憧れの女優で、私も大ファンの檀一雄先生のお嬢様ですからね。サインをもらいたかったのですが、彼女は勉強家でいつもロケバスの中で本ばかり読んでいて近づけない雰囲気でした。

気張った私は、単なる主役の背景になる学生なので、目立ってはいけないのに、カメラを見てしまったりして、「おい!そこの! エキストラなんだから、目立っちゃ駄目なんだよ。何やってんだよ!」と助監督に大声で怒られたことを覚えています。それで、エキストラも嫌になって、アルバイトもやめた気がします。

さて、この石原慎太郎著「青年の樹」にはモデルがいました。横浜港運協会会長で、藤木企業会長・横浜エフエム社長の藤木幸夫氏です。少し、毀誉褒貶のある方で、陰では全国的に有名な「横浜のドン」と呼ばれ、地元政財界を仕切っているという噂の持ち主です。これもまた、噂の領域を出ませんが、菅官房長官のパトロンとも言われ、横浜市がカジノを誘致した場合、一番の顔役になる人とも言われています。

その彼の半自叙伝「ミナトのせがれ」(神奈川新聞社、2004年8月18日初版)を読むように、と名古屋にお住まいの篠田先生が貸してくれました。その本の帯に石原慎太郎氏が「私はかつて、若き日の著者をモデルに『青年の樹』を書いたことがある…」と推薦文を書いていたので、自分も上述したことを思い出したわけです。

藤木氏は、早稲田大学政経学部卒のインテリながら、父親の藤木幸太郎が一代で築き上げた港湾荷役業会社を継いだ二代目です。腕力だけが頼りのかつての荷役業者には「酒と女とバクチ」にはまるヤクザな荒くれ者が多かったのです。それを父親は、自分の腕力と交渉力と良き先輩に恵まれ、カタギだけを育てたことで、全国船内荷役協会の会長まで昇り詰めます。同協会副会長が神戸の田岡一雄甲陽運輸社長だったことから、「田岡のおじさん」とは公私にわたる家族ぐるみの付き合いで、そこから世間の誤解も招いたります。

藤木氏は、中国に何度も何度も渡り、大連港の荷役業務を整備して中国政府から表彰されたり、横浜オランダの名誉領事に選ばれたりする逸話は読み応えがありました。