「日本のいちばん長い日」の映画化はもう無理

日本の夏、緊張の夏

渓流斎です。

昨年は、旅行で異国の地に行っておりましたので、好きな映画も見られませんでした。

そこで、昨年見られなかった映画で、どうしても見たかった作品の一つである原真人監督作品「日本のいちばん長い日」のDVDのレンタルを借りて見てみました。

がっかりでしたね。
配役を見てみませう。

阿南惟幾(陸軍大臣) – 役所広司
昭和天皇 – 本木雅弘
鈴木貫太郎(内閣総理大臣) – 山崎努
迫水久常(内閣書記官長) – 堤真一
畑中健二(陸軍少佐、軍務課員) – 松坂桃李

家で寝そべって見ていたら、疲れていたので、途中で寝てしまったぐらいです。

ご案内の通り、この作品の映画化は今回が2度目です。原作は、今は歴史探偵として大活躍の半藤一利さんが1965年に発表したもので、発売時は、大宅壮一編の名前で発売されました。半藤さんが当時、文藝春秋の社員だったため、とか、販売戦略のためとか、色々理由があったようですが、真実は知りません。

それが、ベストセラーになり、1967年に映画化されるわけです。

実は、この渓流斎、この作品を父親に連れられて封切りで見ているんですよね。確か、後楽園にあった映画館です。当然今はありませんが、とにかく、記憶があやふやで水道橋にあった映画館だったことは覚えています。

白黒映画でしたが、長く記憶に残る鮮烈な映画でした。特に、畑中少佐役の黒沢年男が、常軌を逸して近衛師団第一師団長の森中将を殺害し、その後、手が硬直して、日本刀が手からなかなか離れない場面には、度肝を抜かれました。ハイライトシーンだっと思います。

昭和天皇の玉音放送の録音盤を出せ、と脅されて頭に拳銃を突きつけられたNHKの放送局員は、確か、若き加山雄三さんだったはずです。

今は便利で、チラッと「1967年版」の概要を見てみたら、腰を抜かすほど吃驚。監督は、名匠岡本喜八で、脚本は「七人の侍」の橋本忍さんではないですか。

配役は、

阿南惟幾(陸軍大臣) – 三船敏郎
昭和天皇 – 八代目松本幸四郎
鈴木貫太郎(内閣総理大臣) – 笠智衆
迫水久常(内閣書記官長) – 加藤武
畑中健二(陸軍少佐、軍務課員) – 黒沢年男

このほか、志村喬、山村聡、宮口精二、北村和夫、中村伸郎、加東大介ら当時の豪華オールキャスト総出演です。

これでは、「2015年版」は、勝てるわけありませんね。確かに製作費は67年版の数十倍かもしれません。CGを駆使して戦時中の「書割り」が本物そっくりに再現されたかもしれません。

しかし、悪いですけど、役者が大根でした。特に主役は、台詞の棒読みでした。67年版は、敗戦からまだ22年。当時の緊迫した状況は、身に染みて分かっていた世代が多く生き残り、俳優の中には最前線で戦った人もいました。

ですから、無理なんでしょうね。戦後70周年版は、異様に目ん玉だけがギラギラしたヤクザ風の若い俳優が軍人役で沢山登場しましたが、眼だけで演技してるだけで、身体性が伴っていない。まさに、顔のアップの多いテレビ用なんですよね。

期待する方が悪かったのでしょうか?