中国が毒入りギョーザ事件を謝罪しない理由

公開日時: 2008年4月9日 @ 12:09

中国ウオッチャーから実に興味深い面白い話を聞きました。

最近の中国は、毒入りギョーザを輸出しても謝らないし、チベットを弾圧しているし、コンピューターで不正アクセスして日本の個人情報を盗み出すし、本当に碌な国ではない、と日本人の多くは思っていることでしょう。極悪非道そのものです。

すると、中国ウオッチャーの彼はこう言うのです。

それは、ぬるま湯に漬かった日本人の感覚で、ひどい国だと思っているかもしれないが、中国ではそういうことをしないと生きていけないのです。生存競争に勝ち抜いていけないのです。確かに中国は近代化されたとはいえ、実質は、まだ群雄割拠の戦国時代、つまり三国志のような時代が続いているのです。

だから、自己保存のために、平気で嘘をつくし、裏切りもするし、密告もする。相手に弱みを決して見せられない。対日強硬発言も、日本に対してどうのこうのと思っているわけではない。むしろ、日本人などどうでもいいと思っている。むしろ、国内向けのメッセージであり、政治的プロパガンダでもあるのです。そうしないと、後ろからバッサリと切られる怖れがあるからです。いつ寝首をかかれるか分からないのです。

だから、良い悪いの話でもなく、正しい、間違っているというという話でもない。今の日本人など想像が全くつかない競争にさらされ、トップにいる人間でもいつ足を引っ張られるか分からない。チベットの独立を認めれば、あちこちで独立運動が起き、中華人民共和国が崩壊する。中国はソ連の崩壊を深く研究し、轍を踏まないようにしているのです。

そうなのです。私のように平気で嘘をつかれて、裏切られてワーワー騒いでいるようなヤワでは生きていけないのですね。日本人に生まれて本当によかったです。

五輪聖火リレーは何処へ行く?

五輪の聖火リレーが世界中で大混乱を起こしています。ロンドンに続き、昨日のパリでも3000人以上の警官が警備したのにも関わらず、逮捕者が多数出るなど大騒動が起きました。明後日はアメリカのサンフランシスコでのリレーが予定されていますが、またまた一波乱あることでしょう。まさに「グローバリズム」です。

聖火リレーが大混乱して新聞のフロントページを飾るほどの大問題になったのは、近代五輪史上初めてではないかと思います。(06年のトリノ冬季五輪では、反グローバリズムの活動家によって妨害されましたが)

私自身は、「平和の祭典」に政治や暴力を持ち込むことは反対です。しかし、一般庶民でさえ、オリンピックは、政治的プロパガンダであり、平和の祭典でも何でもないことを知っています。

いい例が、1936年のヒトラーのベルリン五輪であり、日本を含む西側がボイコットした1980年のモスクワ五輪です。いずれも、当時のことを知る人は少なくなってきていますが、私は28年前のモスクワ五輪ははっきり覚えています。その方面で仕事をしていましたからね。ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議する政治的処置でした。

マラソンの瀬古選手は参加していれば金メダルを獲得していたことでしょう。レスリングの高田選手は、「このオリンピックのために苦難を克服して一生懸命に練習を積み重ねてきたのだから、是非参加させてください」と涙で訴えていた姿も印象的でした。今でも忘れられません。しかし、当時の為政者とスポーツ界の幹部は米国に追随して、不参加を決定しました。

その時、「何だ、スポーツといっても、政治と切り離せないんだ」と確信めいたものを持ちました。今でもそうですが、スポーツの各種団体の多くは、お飾りでも、政治家が会長を務めていますからね。例えば、日本ラグビーフットボール協会会長は森喜朗元首相です。

しかし、今回のチベット問題に端を発する北京五輪ボイコット運動は、為政者側からというより、庶民や一般市民から高まってきていることが、これまでの政治的プロパガンダとは大きな違いだと思います。

今月26日には日本の長野でも聖火リレーが行われます。私はあくまでも暴力には反対ですが、日本でも何か起こりそうな気がしています。私は活動家ではないので、何もしませんが、平和に歌を歌うのが一番いいと思っています。

さて、奥林匹克さんという人を知っていますか?え?知らない?

失礼、人間ではありませんでした。これで、中国では「オリンピック」の当て字なのだそうです。中国の専門家に聞いたら、普段は、「奥運会」と書くそうです。

嵐山町桜祭り

母と兄と私という不思議なトリオで、埼玉県嵐山町の桜祭りに出かけてきました。

東京ではそろそろ桜も散り始めているのに、嵐山町は今が満開でした。

 

東京から高速に乗ると、わずか1時間半ほどの距離です。関越線に乗り、小松川ICで降りて、ほどなくして着きます。

都幾川沿いに2キロぐらい桜並木が続き圧巻でした。

町をあげてのフェスティバルなので、町の商工会や青年会が「屋台」を出していました。ビール、焼き鳥、お好み焼き、うどん、クッキー、ちょっとした小物まで売ってました。その筋の人たちじゃないので、とても安い。

和太鼓も披露してくれました。

ヴァラエティ日本版の発行人にお会いしました

 昨日は複数の会合に出席し、また帰宅が深更に及びました。そろそろ、肝臓の方も疲れてきました。

午後は、日比谷でおつな寿司セミナーの月例会。ゲストは、エンターテインメント雑誌「ヴァラエティ」日本版の編集発行人のHさん。同誌は1905年発行の世界で最も古いエンタメ誌で、現在、ロンドンの本社があるリード・ビジネス・インフォメーションから発行されているそうです。同社は世界最大の出版社らしく、250種類の雑誌を世界で出版し、1兆円の売り上げがあるそうです。

同誌は、主にハリウッド映画やブロードウエーで働く業界人のためのビジネス誌に近いもので、スタッフも同誌を参考にキャスティングしたり、プロデュースしたりするそうです。データに定評があり、興行収益も水増ししたりせず、厳格な数字を掲載しているので、例えば、ある映画を製作する際にファンドを公募した時に、同誌が運営するM社の裏書があると、その信用が絶大で、銀行からも簡単にお金が借りられるそうです。

ヴァラエティ日本版は、ネットでビジネスを展開していますが、広告収入はそれほど期待できず、データベースやアーカイブなどコンテンツ販売に力を入れるそうです。

ちょっとオフレコ発言が多かったので、普通の人は、ネットを見て楽しめればいいのではないかと思います。http://www.varietyjapan.com/

夜は銀座の「方舟」で、通訳案内士の皆さんとの会合。これから本格的に仕事をしようとする人ばかり9人も集まりました。わざわざ奈良県からお見えになった方もおり、初対面の方が多かったのですが、和気藹々とした雰囲気で何ということのない話でも大笑いしました。

 

ただ、通訳の仕事は「個人事業」なので、シビアな話もありました。リスクが発生した時に、どう対処したらいいかということです。エージェントからの依頼の仕事だったら、そのエージェントなりが賠償してくれたりするかもしれませんが、個人で直接仕事を請け負った時、例えば、お客さんが怪我をしたとか、お金やパスポートを落としたりするなど万が一の事態が起きた時に、ガイド個人がかなりの負担を背負わなければならないケースも発生するというのです。

ある通訳ガイドの人はそれが嫌で、個人で直接仕事は受けないそうです。いくらエージェントに上前をはねられても(失礼)、保険になるので、組織を通した方が安心感が違うというのです。

東田さんという福岡出身の人が、米国の大学では、教授連中は必ず保険に入るという話をしていました。それは、米国は訴訟社会ですから、例えば、成績にAをもらえなかった学生が逆恨みして、やってもいないのにセクハラで訴えたりするケースがあるそうなのです。

そういう世界から来る人たちをガイドするとなるとそれは大変ですね。

色々と勉強になりました。

美貌の才媛と10年ぶりに再会

 

 

 

妙齢の女性と二人っきりで、有楽町のITOCIAでランチをしてきました。

 

彼女はもう随分昔に仕事を通して知り合った才媛で、私が北海道に行く前に、マフラーを送ってくださったりしましたが、年に一回、年賀状を交換する程度で、今回お会いするのは、10年ぶりぐらいでした。今年の彼女の年賀状に、「偶には銀座あたりでランチはいかがですか」と書かれていたので思い切って私の方からお誘いしたのです。

 

よく引っ越しの案内に「お近くに来ましたら遊びに来てください」という文句が付記されていますが、誰も本気で行動に移す人はいないでしょう。でも、私は今年は「色んな事に挑戦する年」と決めていたものですからね。

 

彼女、大竹さんは秘密のヴェールに包まれた不思議な方です。ただ、この10年の間で、めでたく結婚されたり、最高学府で修士号を取られ、目下博士課程で学んでいることを話してくれました。

 

大竹さんは、米国留学経験もあり、本職は通訳、しかも同時通訳もこなす才媛です。かなり、外国の賓客VIPの方の通訳も担当されたこともあるようですが、秘密のヴェールに包まれています。彼女の口癖は「世を忍ぶ仮の姿」です。世間の隅にひっそりと暮らすことを理想にしているようです。

 

彼女と会うのは10年ぶりでしたので、「僕も年を取ってしまったので、顔が分からないかもしれませんよ」とメールを送ったら、「世の中は不平等ですが、年月だけは平等に訪れます」という名言が返ってきました。先週、彼女の愛犬が15歳で亡くなったばかりだったので、色々と来し方を振り返り、これからの人生を如何に充実させたらいいのか、かなり考えたようです。彼女は詩人です。

 

私の方はかなり老け込んでしまいましたが、彼女の方は美貌に一層磨きがかかっておりました。

彼女の前向きな姿勢で、少し元気をもらいました。

「薬師寺展」に行きました

調布先生から「これから『薬師寺展』http://yakushiji2008.jp/index.htmlを見に行きましょう」と、昼間に突然電話がありました。世の堅気の人たちは額に汗して一生懸命に働いているというのに、よっぽど暇人にみられているんですね。

しかし、私はその通りの暇人でしたから、上野の国立博物館までノコノコ足を運びました。いやあ、平日の昼間だというのに、すごい混雑でした。ちょうど花見のシーズンでもあるので、皆さん仕事を休んできたのでしょうか。

調布先生に誘われなかったら、行くつもりはなかったのですが、最近、心がささくれ立っていたものですから、「心を洗いたいなあ」と思っていたので、丁度いい機会でした。有り難かったです。

目玉の国宝「日光菩薩」「月光菩薩」立像を見るのが眼目でした。高さ3メートルくらいでしょうか。あんなに間近に見ることができて、感動しました。お陰様で心が洗われました。普段は奈良の薬師寺の金堂に鎮座されいますから、遠くからしか拝観できません。今回は、本当に触れるくらい間近で拝むことができるのです。

しかし、一家言の持ち主の調布先生は「やっぱり、奈良で見なくてはいけませんね。魂を抜いて持ってきたので、見世物になってしまっています」とおっしゃるのです。

私は凡人ですから、それでも有り難かったですね。奈良にまで行かなくても、菩薩さまが向こうからやって来て下さったのですから。

その足で、有楽町の国際フォーラムに行きました。「アートフェア東京」http://www.artfairtokyo.com/を見るためです。関係者だけの前日公開だったのですが、ここもすごい混雑でした。山口晃さんの取材でお世話になったミズマ・アートギャラリーの長田さんにお会いしてご挨拶するのが目的でしたので、ミズマのブースに行ったのですが、ここもまたものすごい人だかりで、オーナーの三潴さんが中国系のテレビ局にインタビューされたりしていました。

アートフェア東京は、画廊による即売会みたいなものです。数千円から数千万円の作品が古美術から現代アートまで展示されていますから、ご興味のある方は覗いてみてください。川端康成や吉田松陰らの「書」も150万円から300万円くらいの価格で展示されておりました。もちろん、私はとても買えませんでしたが。

この後、調布先生と軽く飲みました。その時「あなたの日記は、個人的なことを書きすぎますね」と注意されてしまいました。私は「いやあ、実は永井荷風の『断腸亭日乗』を目指しているんですよ。個人のささやかな体験も五十年後百年後の人が読んだら、面白いんじゃないかと思いまして」と申し上げたところ、「そんなに残るんですかねえ」と苦笑いしておられました。

そのうち、調布先生は「仲田さんをお呼びしましょう」と言って、急に本当にいきなり電話をしてしまうのです。調布先生は迷ったり、悩んだりしません。思い立ったらすぐに行動に移してしまいます。そこが私のような凡人とは違うところです。

会社の先輩である仲田さんとは新橋の駅前にある居酒屋「くまもと」で合流しました。そこで調布先生とは別れたのですが、そこから、仲田さんと二人で北海道料理の「炉ばた」(落語をやる日があります)とスナック「手羅須」(東京新聞の小石さんのお店)とはしごしてしまい、終電を逃してしまいました。

そこで何を話したのか…書けませんね。調布先生は「日記には個人的な本当のことは書けないもんですよ。だから、福田首相のこととか、もっと大きな天下国家のことを書きなさい」とおしゃっていましたが、悔しいけど、その通り、個人的な本当のことは書けませんね。荷風の日記でも、公開するのが目的だったので、本当のことが書いてません。私も、別に隠しているわけではないのですが、人生は生きるのに辛すぎる。

映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」はよかたとです

  ウォン・カーウァイ監督・脚本・制作の映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」を見てきました。

もう恋愛映画を見る年頃ではないのですが、ノラ・ジョーンズ(29)の大ファンなものですから、彼女の主演第一作を見たかったのでした。詳しくは分かりませんが、既に香港で中国語で映画化された作品をニューヨークに舞台に置き換えて、欧米人の俳優を採用したようです。

贔屓目なのですが、彼女の演技は合格点でしたね。映画批評家の作品評はどれもこれも散々でしたが、私はよかったと思いますよ。甘いシンデレラ・ガール・ストーリーではなく、恋愛映画というより失恋映画だったので、より現実的で身に染みてしまったからです。

 

特に、警官のアーニー役のデビッド・ストラーザン(59)とスー・リン役のレイチェル・ワイズ(37)がよかったですね。アル中に溺れる元夫のアーニーと、元夫の束縛から逃れようとするスー・リン役の息もつかせぬ攻防(?)は他人事には思えず、のめりこんでしまいました。

ジュード・ロー(35)は英国人なので、ブリティッシュ・アクセントでしたから、ニューヨークの場末のパブの主(あるじ)役にはちょっと無理があるなと思いました。相変わらず、ハンサムでしたが…。

ノラ・ジョーンズの2003年のデビューは私にとって、衝撃的でした。まだプロフィールが知られていない頃、ネットで彼女の地元のテキサス州のダラス・モーニング紙か何かに載っていたと思いますが、それを読むと、彼女の父親はラヴィ・シャンカールだと書かれていたからです。えっ?ラヴィ・シャンカールを知らない?

 

彼は、ジョージ・ハリスンのシタール(インドの弦楽器)の師匠で、バングラ・デシュ・コンサートにも出演しています。親子なので、やはり、どこか似ています。

そんなこともあって彼女のファンになってしまったのです。ハスキーヴォイスも魅力的です。

シタールといえば、ビートルズは「ノルウェーの森」で初めて使用しました。ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズも真似して「黒く塗れ」で使いました。ブライアン・ジョーンズは作曲ができなくて、リーダーだったのに、作曲するミック・ジャガーとキース・リチャーズに主導権を奪われて、メンバーの中で孤立して麻薬に走り、事故死してしまうのですが、演奏の名手でした。どんな楽器でも独学でこなしてしまったそうです。ビートルズの「レット・イット・ビー」のB面の「ユー・ノー・マイ・ネーム」では何とサックス・フォーン奏者としてレコーディングに参加しています。

あ、随分、話が違う方に展開してしまいました(笑)。

男と女のたたずまい

 

 

 

昨日の「映画『靖国』が見たい」は意外にも反応がありましたね。

ただ、筆者としましては、この事件を「政争の具」にはしたくはないんですよね。

私は、どちらかと言えば、天邪鬼のミザントロープで、政治的人間ではないからです。

まあ、単なるディレッタントなだけなのです。高田純次さん扮する「テキトーないい加減な人間」(本人はかなり計算高くキャラクター作りをしているのでしょうが)に憧れています。

「無責任男」植木等は、実は住職の息子で本当はインテリのミュージッシャンなのに、「無責任男」を演じていていましたからね。

ただ、純粋に映画「靖国」が見たいと叫んでいるだけで、こんな小さな声が広がればいいと思っているのです。ということは、これは政治運動になるのかもしれません。いやあ、随分、矛盾していますが…。

さて、先日、友人の戸沢君から薦められた嵐山光三郎氏著「妻との修復」(講談社現代新書)を読んでいます。これまた、意外にも面白いですね。知らなかった逸話がたくさん出てきます。

例えば、「『いき』の構造」で知られる九鬼周造は、明治の美術界のドン岡倉天心と、アメリカ公使・九鬼隆一の妻初子との間にできた子供ではないかという疑惑が書かれています。驚きましたね。天心の奥さんの大岡もと子は、大岡越前の末裔だったそうですね。これも驚き。九鬼初子は、京都祇園の芸者だったようです。

作家武者小路実篤は、インタビューに来た大阪毎日新聞記者の真杉静枝と情交を結びますが、これは「喧嘩両成敗」。静枝の方が友人に「ムシャさんをものにしてみせる」と豪語していたというのですから。ムシャさんの方も一生懸命に励みながら「人の幸福のために役立とうとする女にならなければいけません」と人道主義を説くのを忘れなかったそうです。

 

嵐山氏は、【教訓】として、「不倫しつつも愛人に『人の道』を説く余裕がなくてはいけない。反省するのが一番健康によくない」と書いています。これには爆笑してしまいました。

 

このほか、野口英世が米国人の奥さんと結婚していたとは知りませんでした。もっとも、奥さんになったメリーさんは、はすっぱな酔っ払い女でニューヨークの下町で働いている時に、酒場で野口と知り合ったらしく、かなりの浪費家で野口の全財産を湯水のように浪費してしまったそうです。

 

一方の野口についても、偉人伝に書かれているような立派な人ではなく、友人や先輩らを利用するだけ利用して借金を踏み倒して米国に逃れ、うまく立ち回って、秀才にありがちな計算高い性格だった。メリーと結婚したことは野口英世、一世の大失敗だった、と書かれています。

 

ここには、有名無名を問わず、古今東西の男と女のたたずまいが描かれ、今トラブルを抱えている人にとっては、ある意味で精神安定剤になりますよ。

映画「靖国」が見たい

見るのを本当に楽しみにしていたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が、ついに上映中止になってしまいました。

本当に由々しき事態です。「憲法で保障されている表現の自由を侵している」なんて大上段に構えたくはないのですが、「いやあな感じ」がします。

上映中止の理由が「近隣に迷惑を及ぼす可能性がある」というのが劇場側の主な言い分で、いわば「不測の事態」に備えた事前の自主規制なのですが、こんなことをすれば誰が一番喜ぶのでしょうか。

この映画は、日中合作映画で、監督は19年間、日本に住む中国人の李いん監督。そもそも、文化庁の所轄の芸術文化振興基金から750万円の助成を受けていることから、一部国会議員が問題視して「事前検閲」したことから、問題は大きく広がりました。

しかし、問題視した自民党の稲田朋美代議士は「問題にしたのは助成の妥当性であり、映画の上映の是非を問題にしたことは一度もない。いかなる内容であれ、それを政治家が批判し上映をやめさせるようなことが許されてはならない」とコメントしているので、きっかけを作った本人とは違う方向に事態が推移したことになります。

いわば「見えない圧力」に屈服したことになります。

しかし、実際、何かが起きると、例えば、トラブル等で死傷者が出る不測の事態などが起きたりすると、マスコミは節操がないですから「上映した映画館が悪い」などと狼煙を上げたりします。ですから、上映中止を決めた配給会社や劇場を責めるつもりはありません。

ただ一介の市民として香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品を見たいだけなのです。

私自身は政治的にはニュートラルなのですが、心情的には、国家転覆を目論見、私有財産を否定し教条主義的言辞で煙に巻く極左よりも、義理人情と儀礼を重んじ日本の伝統を大事にする極右の人の方が、どちらかといえば、我々の文化的資源を守ってくれるという印象があります。

まだ「見えない圧力」と名指しされた人はいないのですが、心外に思われる方がいるなら、是非、「上映運動」を起こしてもらいたいものです。

よほどひどい映画なら批判すればいいのであって、それを見せる前から門前払いをするのはおかしいでしょう。いずれにせよ、問題視された助成金は戻ってくるわけではないのでしょう?

おかしいものはおかしい。